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【復習】トンネル怪談考察②心霊小坪トンネルの謎

オカルト研究家・吉田悠軌先生による有名怪談の考察授業。前回の『心霊トンネル怪談(前編)』の続きです。

トンネル怪談の元祖となった、タレント・キャシー中島さんの体験談。さらにお笑い芸人・松本キックさんの体験。この2つはどちらも神奈川県にある有名心霊スポット・小坪トンネルが現場であるとの事でした。

では小坪トンネルの歴史と背景とは?

それでは早速、復習を始めます。

心霊小坪トンネルの歴史

・心霊小坪トンネルの噂の歴史は非常に長く、1981年当時の地方新聞によると、過去に3度の流行があったとされる。

【1度目】昭和23年か24年頃
→タクシー運転手の間で噂された話。
→火葬場近くの暗闇で足元のボヤけた女がすーっと歩くのを見た、という目撃が相次いだ。
→その真相を探ろうと警官が張り込んでいると、浴衣を着た髪の長い女を発見。確かに足元がボヤけている。
→警官Aはその女を追いかけ捕まえた!正体は近くの民家の娘で義理の父と仲が悪く深夜に寝間着のまま外出していたらしい。
→また、近くのゴミ焼却炉が壊れていて漏れた煙が地面を流れ夜に誰かが歩けば足元が見えなくなる、というオチ。  

【2度目】昭和40年初め頃
→再び幽霊の噂が出たため同警官Aがパトロールを。
→するとトンネル出口で「生首」に出くわす!
→しかし良く見たらそれはマネキン人形の首、悪戯だった。
→車の騒音被害に悩む地元住民が交通量を減らすため、わざと霊の噂を流したのではないか?とされる。

【3度目】記事の書かれた昭和50年代
→「今から数年前、またも噂が蘇った。今度は、さすがのAさんも首をかしげるばかりだ」とある。
→これはキャシー中島の体験談が流布したものだと思われる。


キャシー中島の怪談

・キャシー中島の体験談から派生怪談が多数生まれた。

・例えば車に落ちてきた「大きな岩」のようなもの、という口述。この「岩」は派生怪談だと「血まみれの女や生首」になる。確かに恐怖度は増したが、それは実話怪談ではなく都市伝説的。キャシー中島のようなリアリティは薄まったように感じる。

・派生怪談と中島の体験談では話の根本にある恐怖テーマが違う。恐らく中島の脳裏にあったのは「水害」、それも土砂災害のイメージ。車の屋根をきしませた轟音を、彼女はとっさに「大きな岩」とし、その後の発表でも「トンネルの中で岩が落ちてくるなんて」と語る。彼女は一切岩を見ていないのに。 

小坪トンネルの歴史

・この地域はトンネルが多い。それはつまり山の尾根を切り拓いた地形であり、土砂崩れが多い土地を意味する。

・実際、過去に土砂崩れや崩落事故が多数起きており死者も出ている。1984年には小坪海岸トンネル出口にて400トンもの巨岩が車に落ちる事故も発生。最近で言うと、2016年には小坪海岸トンネルが崖崩れで2か月の通行止めを余儀なくされている。

・キャシー中島の育った横浜市保土ヵ谷は川の氾濫や土砂崩れが多い。また1974年には多摩川水害も起きている。体験談の中にある「青白い光の手のひら」は元々霊感があるとされる中島の、水と土に飲み込まれた被災者が差し出す手のイメージによるものではないか?

・また元禄地震や関東大震災の際には津波の記録も残されている。松本キックの体験談「車の下から映えた腕が足を掴む」というのも津波の犠牲者を思わせる。

・トンネルが心霊スポット化しやすい理由の一つに山岳信仰がある。昔から山は神聖視され神様がいるとされた。そんな山に対する信仰が日本人のDNAに刻まれており、聖なる山に穴を開けてトンネルを通過させた事への罪悪感が怪異現象を生んだのでは?

・もう一つには「境界」という概念。あちらとこちらを繋ぐ、中間地帯の事であり怪異現象が起きやすい。昔は川の上にかかる橋、最近では踏切やトンネルで怪談が生まれる。

・より詳しくは吉田先生のコチラの書籍をチェック!

授業を聞いて思った事

正直に言えば、キャシー中島さんの実体験を初めて聞いた時は「地味だな」という印象でした。

それは恐らく世代的に、私が物心ついた時はキャシー中島さんの体験をベースとした派手で刺激的な恐怖描写のある進化型のトンネル怪談が溢れていたからです。血まみれの女が天井から降ってくる、フロントガラスを血の付いた手形がバンバンが叩く、など。

今思えば、それらの怪談は怪談というよりホラー映画的ですがそれでも学生時代は怖いと感じたものです。キャシー中島さんの怪談を知らないで育った私としては、彼女の体験談は特別ではなかった。

これは映画『スターウォーズ』1作目をリアルタイムで映画館で見ていた世代とそうではない世代とのギャップに似ていると感じます。

1977年に公開された『スターウォーズ』は、当時としては画期的な映像表現でそれまでの【映画】の概念を飲み込み、現代のハリウッド大作のベースを作ったとも言える記念碑的作品です。芸人で言えばダウンタウンのようなものでしょうか。

そんな『スターウォーズ』をリアルタイムで見た人々が良く言う感想としては「こんなの見た事がない!」です。それほど『スターウォーズ』の与えた影響は大きく、未だに忘れる事の出来ない特別な体験だったのでしょう。

以降『スターウォーズ』よりも映像技術が進んで、派手さやクオリティの向上した作品が次々に出来るわけですが、それは『スターウォーズ』があったから、と言っても過言ではないのかもしれません。当時リアルタイムで見た方とにとっては「特別な体験」というクオリティで『スターウォーズ』を超える作品は未だにないという方も多いです。

私は『スターウォーズ』をリアルタイムで見ていません。なので『スターウォーズ』がそこまで特別と思える意味が当時は分からなかった。しかしオカルトの世界で置き換えると、かつて学生時代に体験した『杉沢村』は衝撃的で、未だに杉沢村を超える都市伝説は私の中ではありません。

その後の村系都市伝説の進化を考えれば、杉沢村は非常に基本的な構成ですし今聞けば地味です。しかし杉沢村という基本がなければ派生型の都市伝説はなかっとも言えます。

キャシー中島さんの体験談というのは時代を作りかえる程の、つまりキャシー中島の怪談以前・以後というようなレベルでの衝撃的な怪談だったのでしょう。

それらの歴史観を知った上でキャシー中島さんの怪談を聞くと、また新たな発見や考え方が出来そうです。

以上。

最後まで読んで頂きありがとうございました。

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