しかくの顔、あたたかい手
「まーくんに、なかまにはいっちゃだめ、っていわれたんだ」
その日、彼は口を尖らせてそう言った。
いわゆる「男の子の遊び」全般が苦手な息子は、いつもブロックや工作をしていて、女の子たちとぬりえをしていることも多い。
まだ年中さんだから、ひとりぼっちの時もさほど気にしていないようだし、変に気を使っていないところが私は好き。
けれど、仲間はずれがはじまると、どうしても心がざわつく。口を出したい、論破したい、やっつけたいという気持ちが、腹の奥底から湧いてくる。がまん、がまん、がまん…
「どうして仲間に入っちゃダメなんだろうねえ、こんなにかわいいのに」
帰り道、つないだ手をぶんぶん振りながら砂利道を歩く。
「あのね、ぼくは、かおがしかくいからだめだって。おかおのまるいこしか、だめだって」
彼らの仲間はずれの基準は、思ったより適当だ。うるせぇばかやろう、と言いたくなる。お前もまあまあしかくいほうやぞ、と。
でも、仲間はずれをした子も、普段はとってもかわいい。いつもドアのとこまで駆けてきて、紙ひこうきを見せてくれる。
「しかくい顔、いいじゃんねぇ。さんかくも、まるも、いいよね」
「うん、ぼくはとってもかわいいのに」
彼が仲間はずれをされても、自分を仲間はずれにしなければそれでいい。そうして嫌な気持ちを知って、優しい人になってほしい。
ただ、未熟な私は左手でこぶしを握る。それでおしまい。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?