見出し画像

有名になりたい 第3話

高校3年生になると、部活の後輩が沢山増えていった。たまを後輩に教えて貰ったりしつつも相変わらずパンクに夢中だった。J先輩は卒業してバンドを始めていた。そのきっかけでH先輩というギタリストとも出会う。

友人のもじゃもじゃ頭のKはすっかりイメージチェンジして、V系のバンドで目黒の鹿鳴館でライブをやるくらいになっていた。

彼の家には部活が無い時に毎日のように遊びに行っては色々教えてもらった。メタルに傾倒していた彼のおかげでメタルやハードロックを沢山聴かされ、知ることになる。

またSFCのかなで〜るというソフトで曲を打ち込んでいたのを聴いて衝撃を受けた。その頃は自分自身も作曲の真似事を始めていたのでお互いこんな曲を書いたと聴かせ合うようになっていった。この頃はモノラルのテレコに吹き込んではダビングしてMDに纏めていた。

初夏に文化祭でバンドをやりたい!という欲が出てきた。1、2年生の頃は演劇部で何も出来なかった。初めて自由に参加できる文化祭。

そして生まれて初めてバンドを体験することになる。

夏前にエレキギターを買った。3ヶ月間ガソリンスタンドでアルバイトをして金を作った。同僚はヤンキーとギャルばかりだったが、まぁまぁ楽しかったように思う。初めて買ったエレキギターはエピフォンのレスポールスタンダード。本当はスティーブジョーンズのような白いレスポールカスタムが欲しかったが、エピフォンですら高かったのである。文化祭の為に買ったようなものだった。

夏休みに入り、バイトの合間にN市のI楽器のスタジオで練習する日々が始まった。メンバーはKとドラムは部活の元同期だったA。Kに教えてもらいつつ、アンプを使っての初めてのエレキギター。

…衝撃が走った。

よく漫画などでガーン!という表現があるが、正にそれだった。ずっと聴いてきたあのエレキギターの音が自分から出てる…!!という感動。

中学時代の友人ともたまに遊びつつ、文化祭に向けて練習の日々だった。曲は3曲。

ANARCHY IN THE U.K/SEX PISTOLS

MINORITY/GREEN DAY

青春/THE HIGH-LOWS

あとはオリジナルもやる予定だったが、Aの脱退により有耶無耶になる。そう、ドラムのAが急に辞めた。人前で叩くなんてやっぱ出来ないと言う有りがちな理由だった。急遽、同じ部活の同期でもあったFという男にドラムをお願いすることになった。彼はLUNA SEA好きでちょっと変人の部類だったが、まぁ仲良くやっていた。今はボディビルをしている。

KもFも後輩のバンドや、もう一つの同級生の女の子のバンドでも掛け持ちする事になっていた。時間が無い中、どうにか形にしていく作業。実際2〜3回だったように思う。文化祭は2日間あり、その前からギターを持ち込んで弾いていた。軽音、というかフォークソング同好会という名目ではあったが、彼らの練習場所を借りて昼休みは練習させてもらったりもした。

その頃はアコギも教室に持ち込み、たまに弾いては遊んでいた。ヤンキーにめちゃくちゃ絡まれたりもしたが、別にどうということもなく。ギターを弾いて歌ってる演劇部の変な奴という評価になる。

高校2年の冬には3年生の壮行会があり、体育館で全校生徒の前で自分が歌うなんて事もあった。バンドやったりカラオケがあったり。ブレイクダンスをやったチームが一番盛り上がっていた。ダンスが流行ったのだ。

自分はPAは無かったからほぼ生音だった筈だ。

閑話休題。

そうこうするうちに文化祭当日になる。

片思いしていた女の子も観に来ていて、物珍しさか人は多かった。視聴覚室を使っての時間割。

自分達は実行委員に提出する書類を出す段になって、バンド名をつけ忘れていた事に気づき慌てて名付ける。初めてのバンド名は…ドドリアだった。

今思えば完璧なノリだったが、当時は3人組というのもあり爆笑。ご存知ない方の為に説明するとドドリアというのはドラゴンボールという漫画に出てくるピンク色の酷悪なデブの戦闘員である。フリーザ、ザーボン、ドドリアというワンセットで登場していた。

1日目はつつがなく終わり2日目。

急遽ハイロウズの14才という曲を追加する。発売したばかりの曲だったが、どうしてもやりたくて何度か合わせてはいた。ただほぼぶっつけに近い状態で披露する事になる。全て自分の独断だった。

結果は上手くいった。

"リアルよりリアリティ"

1年生の頃にブルーハーツに出会い、そして3年生になってハイロウズの曲を歌う事になったのも不思議なものだ。

好きだった子には振られたが、冬に彼女が出来た。2つ下の後輩だ。彼女とは長く付き合った。

青春時代をひたすらに謳歌した3年間だった。

そして大学の推薦を貰えるところを「バンドやるんで」と蹴り高校を卒業する。

18歳、何も怖いものは無かった。ただ、自信だけがあった。







この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?