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有名になりたい 第1話

行き先は日光だった。その日、クラス全員でバスに乗り込んで林間学校へ向かっていた。何故か毎回カラオケをするのがお決まりな道中。1997年の話になる。

Mという女子がマイクを握って歌った歌に、猛烈に感動させられた。チープなカラオケに乗せて彼女が歌う「余計なものなど無いよね…」という歌詞。既に懐メロになっていた曲、某ドラマの主題歌だったその曲をちゃんと聴いたことも無かった。当時視ていたCDTVという番組で1991年のベスト10なんてやっている時に流れていたが、その程度。元々音楽が身の回りにある家庭では無かったし、兄が何か聴いていたのは知っていたが年齢が遠いのもあってそういった話をする機会も特に無かったのである。

TVの歌番組などを流し見する程度の興味しかない自分が初めてこの歌をしっかり聴いてみたいと思わされた。

家に帰り早速兄に尋ねてみる、そうすると兄が数枚のアルバムを貸してくれた。THE BEATLES、TM NETWORK、チェッカーズ、そしてCHAGE&ASKAだ。それまでCDをまともに触った事も無かったが、早速リビングにあったCDラジカセで聴いてみる事にした。

選んだのはあの曲が入ったCHAGE&ASKAのアルバム。SUPER BEST2という当時200万枚以上売れたアルバムだった。

数曲聴き進める内に、子供の頃に聴き覚えのあるメロディが沢山ある事に気付いた。兄が部屋で聴いていた、まだ自分が小学生低学年の頃に流れていたあの曲達だと気付き感動した。またその頃から友人の付き合いで少しずつ音楽に触れる機会が増えていく。

それこそカラオケや友人の家でたむろしながら流れていた曲。MY LITTLE LOVERやX JAPAN、TKサウンド…

煙草を吸いながらこれ最高だよなと言う友人達に混ざって、音楽というのはこんなに心が動くものなのかと改めて知る。

そこからは近所のレンタルビデオ屋で色々なシングルやアルバムをレンタルしては聴く日々が始まる。

そして、その年の夏に入院する事になる。

喧嘩で左目の網膜が剥離してしまったのだ。未だに左目は見えない。

入院中はひたすら音楽を聴く日々だった。

そして、退院してからはひたすら受験勉強の日々に突入していくのだが、のらりくらりとギターに触ってみたり詩を書いてみたりする。この頃はひたすらに本を読んでいた。

ただ漠然とした表現欲求だけがあり、悪い遊びを繰り返しつつも何がやりたいのかは掴みあぐねていたように思う。

志望校を決める頃には芝居に興味が湧き、演劇部の有名な高校に決めた。

そして春。

無事に合格を果たし、高校生になる。


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