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ポストアンコール探訪1- チャム族"シルバースミスの村"ぶらり旅がまるで「鶴瓶の家族に乾杯」だった話

90%くらいが仏教徒というカンボジアにもイスラム教徒の少数民族がいて、チャム族と呼ばれる方々がそれです。カンボジア各地の、主にリバーサイドにチャム族が暮らす村が点在しています。その中で代々銀細工師を生業としている人々が暮らす村、通称”Silversmith Village”を探訪してきました。

空白の200年ポストアンコール歴史探訪

なぜシルバースミスの村を訪ねるに至ったかというと、前回「6世紀カンボジアを探る旅 なぞの環濠集落と扶南最初の王都(?) バープノン」の旅でご一緒した先輩との、「次はポストアンコールの都ロンヴェークに行って、残っていない城壁を探ろう! 」という、ただの歴史浪漫からでした。アンコール王朝の遺跡は数多く残っていますが、その後、プノンペンに遷都されるまでの間に転々としたポストアンコールの都は、ほぼ跡形もない状態。歴史書もあまりないし、学者の方々の調査でも、パキっと鋭い記述はありません。つまり、謎多き時代。歴史学者は「歴史の空白の200年間」と呼んでいるそうです。謎=浪漫、という勝手なる思考で、今回の日帰り旅はスタートしたのでした。ロンヴェークに行く途中、シルバースミスの村があるので両者同時に訪ねるというわけです。前回の先輩に加えて、旅友がもう1人加わり、3人でのぶらり旅。ほんとうに、ただぶらぶらしただけなので、この先にエキサイティングな話はありません、あしからず。

google mapでも出てくるシルバースミスの村。少し北にロンヴェーク

本当にいるの? シルバースミス

地図上にシルバースミスと書いてある場所に到着してみたものの、ただの村。地方に行くとよく見る光景の、ただの村。「ここでいいんですかね? 」「いや、車に乗ったままではわからんよ」と我々は歩いてみることに。ぶらぶらしていると、チャム族の村らしくヒジャブをつけた女性たちの姿が。1本道をまっすぐ進むと、聞こえてきたのです、カンカンカンの音。「おおおお、これは銀を打っている音に違いない」、音に近づくとビンゴ! まず1軒目、シルバースミスの方々が軒先で作業をされていました。覗き見をしていると、「どうぞ、入って! 」と快く作業場に入れてくれました。お坊様用のうちわの取手の銀細工を加工しているとのこと。ここでは3人の方が作業をされていました。

粘土のような土台に銀細工を固定して打っているところ

お寺からの受注

先に進むと、軒先でカンカンしている老若男女を何人も見かけました(カンカンと銀で遊んでいる赤ちゃんまでも)。資料によるとかつては村全体がシルバースミスだったものの、現在は30〜40軒ほどがこの仕事を続けているそうです。その中で1軒、わりと大きめの工房を構えている場所を発見。遠慮なく中に入ると、お寺の装飾品や仏頭など、制作作業中のものが並んでいます。こちらでは、カンプチアクロム(ベトナム南部でかつてカンボジア人が暮らしていた地域)のお寺からの注文を受けているとのことでした。申し訳なくなるくらい作業の手を止めてとにかくぺらっぺらと詳細に説明してくださるシルバースミス兄さん。社会科見学くらいの満足感を得させていただきました。イラスラム教徒であるチャム族が多く暮らす村ですが、モスクのすぐそばで仏具の細工をしていたりと、なんというか、カンボジアらしいやさしい融合を体感しました。

お寺からの注文の品を作成しているシルバースミスの工房

スルーを知らない人々

シルバースミスの作業を覗き歩きながら、往来する住民たちとの交流も面白かったです。わざわざ商店でも民家でも我々が覗き見しながら歩いたからなのでしょうけど、目を合わせてにこり、挨拶してにこり、にこりどころか大笑い、それがない人がいない、なんというか、ご丁寧な村。見上げた高床式の家の窓から歯が1本しかないじいさんが手を振ってくれたり、すれ違う子ども軍団が、いちいち我々とハイタッチして去ったり、やれどっから来たのだのなに人だだの、とにかく明るくてかまってくる女性たち。イスラムの衣装をまとって颯爽とバイクに乗っていたひげもじゃのおっちゃんも、バイクを止めて「君たち移動手段はあるのか? 」と聞いてくる始末。もしかして、バイクに乗せてくれようとしてた? ここは、スルーというものを知らない民族が住んでいる村らしい。気温34度で外も暑いんだけど、心の中もポカポカしてきて、アツい場所でした。クールダウンに妙に長いサトウキビジュースを飲んだですよ。

撮影しながらサトウキビの先端で刺されそうになった

モスク前のブティックにて

ご丁寧な村で、ブティックなんかに立ち寄るとどうなるか。御多分に洩れず、大勢の人が集まってきておせっかいをかましてくれます。我々はイスラム教徒ではありませんが、炎天下にクロマーを被りながら歩いてみて、ヒジャブは日差しからも守ってくれる機能的な洋品なのではないか、という考えに至って、ついつい手にとってしまったのです。すると素敵にヒジャブをまとったお姉様たちが、これが似合うのではないか? とわたしをマネキンにみたてて巻いてくれたり、身につけ方を教えてくれたり、もうやんややんやです。

モスクの門前にあった素敵なブティック
前髪出てるし、絶対違うでしょ、これ。

素敵な女性たちを見ていたらそれにすっかり感化されてしまった旅友A。こうなりました。馴染みすぎ・・・。

街にすっかり馴染んでしまった人(本人より掲載許可あり)

シルバースミスの作業が見られたらいいねぇと言いながら訪ねた村では、どこかからやって来たおかしな外人おばさん3人組は、村人に温かく迎えていただいて、なんだか「鶴瓶の家族に乾杯」のようなわいわい楽しい時間になりました。

この後、ウドン(香川のアレではなく、地名です)で昼ごはんを食べて、いよいよ古都ロンヴェークに行くのですが、それは次のブログにて。
おあとがよろしいようで。

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