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結局どうやったら服の塗りやシワが上手くなるのか研究した道のり

はじめに

一枚のイラストの中で衣服が占める割合ってけっこうあって、水着とか露出度が多い系でない限り、たいてい人物の肌より面積が大きいです。そのため、衣服の塗りのクォリティは思った以上に絵の印象を左右するし、素人っぽさを脱する鍵になると思います。

ということでここ数年、服のシワや塗りをいろいろ研究したのをまとめました。過去の記事と重複する部分も多いので、飛ばし飛ばし読んでいただければ!
コミックイラストの話が中心ですが、それ以外でも役に立つ部分はあると思います。

取り組んだのは大きく分けて以下の2つです。
・形を取れるようになること
シワがどんなふうにできるのか、物理法則を学び、その形を再現できるデッサン力を身につける。布の立体感を掴む。

・塗り
効果的に陰影をつける。今っぽい色使いや塗りを身につける。

布の厚さや素材による質感の違いとか、他にもいろいろあると思うけど、とりあえずこの二点。
下記に記しますが、あくまで自分が試行錯誤しながらやってきたことを連ねているだけなので、最短のやり方なわけでもないし、ベストなやり方とも言えないかもしれませんので念のため。

シワと仲良く

どこにどんなシワができて、どんなふうに影ができるかを理解してないと、線をなぞるように影を入れてるだけになっちゃったり、雰囲気でエアブラシに逃げたり、手癖や勘で塗っちゃったり…となりがちです。

◯線画の時点で勝負がついてる(場合もある)

上手いひとのメイキングを見てると、線画の時点で布の流れやどこが山でどこが谷か見て取れることも多いです。
こちらの絵師さんはかなりしっかり描き込んでる感じ。線画の時点でこうなってると、影も決めやすそう。

つまり我々が影の塗りで事故るのは、線画の段階で布の起伏のことをあまり考えないで、そのまま塗りの工程に入ってしまうのが原因の一つかもしれません。まさにこれ↓

もう一つやってしまいがちなミスが、「塗りに頼る」という状況です。描き込みを多く必要としたり、立体感の把握が難しいパーツを描く際、「ここは色を塗って立体感を出すから、あまり描き込まなくていいや」と、線画やラフの描き込みもそこそこに塗りに移ってしまう状況です。

出典これ↓

例えば下の絵。

布の凹凸をある程度考えておかないと、コレ(右→)になりがちです。しわになってるはずなのに輪郭が真っ直ぐで凹凸が合っていません。これだと服のしわじゃなくてこういう柄の服みたいに見えてしまいます。ぶっちゃけ、プロの漫画家さんの絵でもたまに見る現象です。実際は左←のように山や谷があったり、布と布が重なってる部分があったりします。塗ってから後で主線を直してる場合もあるのかも。

←しわの山と谷を意識した主線 しわと合っていない主線→

前立て(ボタンの合わせのところ)とかも、体型やポーズによってはシワや体の凹凸に応じてくねくね入り組んでいます。

※画風にもよるけど

描き慣れてる絵師さんだと、あえてラフや線画の時点ではかっちり決めずに、塗りの段階で考えながらシワを作っていくタイプの人もいるみたいです。
例えばうみぼうず先生、こういうスカートのシワは塗り時点で考えてるらしい。

ってこの本で言ってる!

が、そこまで経験値を積むまでは、線画の段階で少なくとも主な山谷くらいは決めておいた方がいいと思います。

というのを踏まえて、まずは服のシワの形を取れるようになることを目指しました。以下が具体的な練習です。

◯服のシワオクフカス

服のシワは昔の巨匠たちもめちゃくちゃ練習していて、ダヴィンチもDRAPERY STUDIES(布のしわの習作)をめっちゃやってます。

それだけ、服のシワって奥が深くて、それなりにたくさん描いて身につくけないといけない要素なのだと思います。当時の風俗的にヒラヒラのドレスを描くことも多かったので、今よりもさらに重要な要素だったのかも。

いずれにしろそれなりにしっかり身につけないといけない部分だと思うのですが、その割に衣服て基礎練とかあんまりやってこなかった気がします。人体はクロッキーとかモルフォとかたくさん教本もあるし、いっぱい勉強するのに。

◯模写してみる

というわけで2カ月くらい、重点的に布を描く練習をしてみました。線画だけでなく、影やハイライトを入れて描いています。

参考資料はジャック・レアチューのデッサンです。たまたま大量に見つけたので。


最初は簡単そうなやつだけ描いてたけど、だんだん複雑なモチーフも臆せず描けるようになったので、効果はあったんじゃないかと思います。カラフルにしてるのは飽きないためのあがきですw。

ある程度の期間、集中して布を描く練習を積み上げることがポイント。モチーフはなんでもいいと思います。

写真模写もやってみたけど、拾う線と省略する線の取捨選択が難しい…!写真だと無駄に情報が多くて、忠実に描こうとするとなんだか変になってしまいがちでした。最初は2次元の模写から入る方が挫折しないかもしれません。それか単純な四角い布とかから始めるか。

これは無料素材(捨てアド推奨)。


◯シワの物理学


人体でいうところの美術解剖学みたいに、布のシワのでき方の物理法則も勉強してみました。

服の描き方の本、いろいろあるけど個人的に気に入ってるのはこちら。もう何度も紹介してますが、理論でオーバーキルする感じなので、そういうのが好きな人向け。ソッカとか好きな人には合うと思います。逆に初心者の人にはちょっと情報過多かも。

シワとシワがぶつかってできるシワとか、シワの中にシワが入れ子になってるシワとか、ここまでシワの物理法則を掘り下げてくれている本はたぶん他にないと思います(たいていの本はちょろっと基本の法則だけやったら、「いろんな素材やアイテムを描いてみましょう!」とかになっちゃう)。

ただこの本、コンセプトは最高なのに文章の説明が周りくどくて頭が痛くなるレベルなのがお勧めしづらい点…。翻訳のせいとかそういうレベルじゃないっぽい。
座学用に使うというより、模写とかしながら「このシワってどうなってるんだろう?」って思った時に開くのがいいかも。

kindle版はセールになってたこともあるので、安くなった時を狙って買うか、本屋さんで中身を見てよかったらそのまま本屋さんで買うのがおすすめです。

あとはモルフォからもこういうのが出てます。こっちは手を動かして身につける感じ。

シリーズでいつも丸裸にされていた(時には骨まで見えていた)モル夫やモル子が服を着せてもらってて、よかったね!!と感慨深くなります。

下田スケッチさんもシワの解説本を出されています。電子もあり。ついったでもシワについて考察を書いてらっしゃいます。

しかも電子版を無料公開してくれてます。


シワの物理法則を説明した動画もいろいろあります。最初は大事なのだけ押さえて深追いしすぎないのも手かも。この5パターン覚えてるだけで十分そう。

本は未読…

Clothing fold やDrapey(+illustration とかdraw とか)で探すと海外Tipsも見つかります。当たり前だけどだいたいみんな同じこと言ってます。



素材や布の厚さによる質感の描き分けとかも。この辺の記事が詳しくておすすめです…!

デフォルメ強めのイラストの人や、「服以外のもの(人体とか)を優先的に練習したい」という人は、ある程度基本だけ押さえてとりあえず記号化・パターン化してしまうのも良いと思います。最初からあれもコレも極めたいと思うとなかなか大変で続かないので。

第二部 塗りとなかよく

◯アニメ塗りか厚塗りかブラシ塗りかソシャゲ塗りか水彩塗りか全滅するか復活するか

塗りに関しては、どんなテイストで描きたいか?デフォルメしたいか??を考えてどんどん模写していくのがいいかもしれません。
服の塗り方的な教本とかもあるけど、厚塗りか水彩塗りかアニメ塗りか、そもそも塗り方が違うと参考にできる部分も少ないので。むしろ好きな絵師さんや塗り方の教本やチュートリアル、メイキングを見た方が勉強になった気がします。


※ブラシ塗りってなんなん?ていう人向けの記事↓

個人的に良かったのはこのへん。この本、シリーズの中でもすごく使えるのでおすすめ。中級者以上向けかもだけど、もしkindleセールになってたらポチッて欲しい!絵師さんによるけど、「いい感じに整えます」の内容が具体的に書かれてたりして、どうやってるのかよくわからなかった部分が理解できました。

服そのものに割いてるページは少なかったけど、こういう感じが描きたい人なら神慶さんとか。

個人的に服のシワといえばのバニリゾさんのご本も出ました。

あとスコッティ先生のファンボックスがいろいろ勉強になりました。ワンコインで全部読めるのに、申し訳なくなるくらい情報量が多いです。しかもなるべく専門用語使わないで解説してくれてて好き。ある程度クリスタを使いこなせてる人向き。


◯目指したい絵柄の絵師さんの塗りめっちゃ模写

もともとある程度練習してきた人だったら、コレを一番やるべきだと思う…!

私の場合はいわゆる大陸系絵師さんの服の塗りが理想。ブラシ塗りと厚塗りの中間くらい。中でも、お絵描きチュートリアルシリーズのパク・リノ先生がTwitter(エックスとは意地でも言わない)にアップしてくれている、こういうポートレート風の絵が模写練習にすごくうってつけでした。パク・リノ先生はphotoshopみたいだけど。

いろんな服、いろんなポーズがファッションスナップっぽく描かれていて、しかも膨大なのでめちゃくちゃいい練習になります…。
もちろんこれはパク・リノ先生の作品なので、模写してネットにアップするのは絶対に!!!NGです。模写であることを明記してもダメ。

あと何度も紹介してるけど、パク・リノ先生のこの本おすすめ!布の塗りについての解説もあります。

こちらも海外絵師さんですが、ついったで絵のチュートリアルを載せてくれています。英語だけど服の塗りも豊富。

布の描き方で圧倒的に惹かれるのがFKEY先生。こちらも海外の絵師さん。

正直、最近あからさまにFKEY先生に影響受けたんだなーみたいな絵をいっぱい見るようになった気がする…。

絵画系だとCarl Heinlich Blochさんも現代のイラストに通じる部分が多くて良かったです。

写実系の絵画の「程よくリアルで程よくデフォルメされてる感じ」が練習にちょうど良いことに気づいて、このシリーズを一時期よく模写していました。ブグローとか。

◯写真模写

ある程度描けるようになったひとなら写真模写と二次元の模写を組み合わせるのがおすすめです。普段写真模写をしてる人は、たまに二次元の模写をしてみると、上手い人がどこを拾ってどこを拾わないか、略したりデフォルメしてる部分を理解できるし、普段二次元の模写しかしてない人が写真を模写すると、「上手い人がよく入れてるこの線ってこの部分だったのかー!」みたいな発見があります。

自分で手頃な布を用意してスケッチするとかもできるし、写真素材とかもあります。

これはさっきも紹介したけど、無料のやつ(捨てアド推奨)

この記事に出てくる布の写真はここから使っています。


異世界モノ、悪役令嬢ものを描きたい人はこういうのとか。

QuickposesとかSketchdailyとかは、着衣の写真だけに絞ってクロッキーできます。


着衣モデルを描くクロッキー会なんかもあります。下記はどちらも東京。

いろんな練習の合間にリアルクロッキー会やデッサン会に参加すると、どのくらい上達したか観測できて楽しいです。


ちなみに神絵師の皆さんの写真模写



◯面でとらえる


線をなぞるだけの塗りになっちゃってる自覚がありありすぎて、ちょっと腰を据えて取り組んでみることに。

https://x.com/utg_amtu/status/1842479498308235531

これもわかりやすいかも!

「面でとらえる」についてはよー清水先生の本が割と詳しく解説してくれてます。

この本。

上の本にわりと近いことを解説してくれてるのがこちら。
石膏像のせっちゃんの動画。人力ポリゴン。

実際にやってみました。

写真をトレースして線でなぞってから、お手本の写真を見ながら塗ってます。

最初はシンプルなやつがいいかも。そしてまずは色相は無視してモノクロで。
だんだんポリゴン感無くなってきちゃったけど。

なんとなくここは反射光で明るくなってるんだなとか、ゆるく観察しながら描いてます。影の塗り方は淡い色の布と濃い色の布でだいぶ手応えが変わるので、どっちもやってみるのがおすすめ。


具体的な塗りの諸々

◯大きな影→細かい影へ

いろんなチュートリアルで言われてるのが、「大まかな影から塗って細部へ」っていう話。最初はわざと大きめのブラシを使うのがコツかも。

※音声出ます

大まかにウニョらせるやり方。

コレになりたい

すぐ忘れてちょこちょこ細かいとこ塗っちゃいがちなので、上で上げた練習の時にいつも意識して、大まかな影から塗る習慣をつけました。

◯濃い影と薄い影のメリハリ

シワの深さや光源からの角度、オクルージョンなんちゃらとかシャドウとシェイドとか諸条件によって、影の濃さが違います。

https://770451664554.gumroad.com/l/drapery

絵にするとこんなかんじ。

この辺が関係するかな

でも詳しい原理はおいておいて(最初は落ちカゲや深いシワの影は濃い、とかそんなんでいい気がする)、とりあえず上手く絵に取り入れるといい感じになります。

例えばこちらの方の絵では、首元や胸の下の濃い影と、腕とか肩にうっすら入ってる影とで濃さを使い分けているのがわかります。

秋吉しま先生のこちらのイラストも、ピンクのカーディガンとか見るとシワの深さが影の濃さで表現されているのがわかります。



単に濃い影からグラデーションするだけじゃなくて、面によって使い分けたり、飛び石的に薄い影を単独で入れるイメージです。
浅いシワとか、シワとシワの間の平らな山のところとかに使うと良さそう。

◯影を思い切って濃くする

逆に濃い影は思い切って濃くしてみるのもいいかも。「こういう環境だから影は薄め」って意図してるならいいけど、自分で塗っててパッとしないなって思う時って、影がぼんやりしててコントラストが効いてないことが多いです。
どこにどんな影ができるかわかってないから自信がなく、思い切れてないせいでこうなっちゃってる。これはシワのでき方をおさらいしたり、資料見て描くのがいいかも。

デジタルなら、あとから明度彩度をいじっていいバランスを探すこともできます。例えばこんな方法とか。※ただし日本人が明暗に弱い、というのはデマです。

色調補正とかトーンカーブで色々いじっていい感じに見えるポイントを見つけるのもいいと思います。

下の図のうち、左は「地のレイヤー」と「服の影レイヤー」で描いたもの。右はさらに「服の影レイヤー」だけクリスタの色調補正にある「色相・彩度・明度」でいじったもの。なんとなくそれっぽいのに近づいた気がしませんか?ちなみに影の塗りはやわ肌ブラシです。

数値はお好みですが、明度を下げつつ彩度は上げるといい感じ

慣れてくると、これをやらなくても最初からしっくりくる配色をある程度狙えるようになった気がします。

◯ぼかす部分と、ぼかさない部分

初心者ついつい何でもぼかしちゃいがち説がありますが、ぼかすのがダメなんじゃなくて、ぼかすところとぼかさないところのメリハリが大切。デデチさんのこちらのイラストを見ると、ぼかす部分とくっきりする部分をかなり明確に使い分けてるのがわかると思います。

ぼかすところとぼかさないところはちゃんと条件があります。こちらの記事が詳しいかも。

上記記事の出典はmignon先生のこの本。肌塗りの本なんだけど、それ以外でもかなり勉強になりました。肌の本なので露出多い女の子中心ですが、苦手じゃなければおすすめ。photoshopを使ったマスク塗りの技法の本なのですが、それ以外の人にも役立つと思います。

有料(100clp)だけどこういうブラシもあります。

それと、以前フリーレンの電車広告見て「おっ」て思ったんだけど、アベツカサ先生のこういう塗りとか、水彩っぽいけど服の影の境界はパキッとしています。肌は全体的に柔らかくぼかしてる感じ。

〇汚いムラを作らないこと

淡い色は早い段階でそれっぽく塗れるようになったのに、濃い色の服はなかなか初心者っぽさが抜けないことに気づきました。

その大きな原因は「ムラ」だと思います。淡い色と比べて、濃い色はムラが目立ちやすいです。

極端な例だけど、ぼかしツールもうまく使わないとこんなふうに変なムラができてしまいます。

狙ってあえてやるならいいと思うんだけども。

影とそうでないところの境目をどう料理するか、影のグラデーションをどう作るかは、やりたい技法で変わってくると思います。水彩塗りみたいにぼかすか、厚塗りみたいに筆の形を活かして重ねるか、アニメ塗りみたいに境界をくっきりさせるか。

もちろん、あえてムラを作る場合もありますが、狙いを考えずに「なんとなく」でやってしまうと負け戦に向かいがち。

具体的にどんなやり方があるかは以下に続きます。私の場合はたぶんブラシ塗り〜厚塗りの中間ぐらい?(くっきり塗りつつ、ぼかしたり筆の形もそのまま出したりする)に当たると思うので、その場合のやり方です。

◯たか先生の講座

いきなり他の人の講座だけど、とりあえずこれ!たか先生の動画は知りたいことがミニマムに詰まってて、かなりいろいろ見ました。特に私の塗りの初心者っぽさの原因はほとんどこの動画に収まっていた気がする。塗りで悩んでる人はとりあえず見てみて欲しいです。

後述するけど、影を後から削って整えると一気に初心者感が減る気がする…。

〇いい感じのペンで塗って伸ばしたり馴染ませたり馴染ませなかったりする

ツールはアイビスだけど、塗って伸ばす系のやり方。

ブラシだけでどうにかできるわけじゃないとは思うけど、ある程度ツールがなんとかしてくれる部分もあると思います。ブラシ名で検索するとチュートリアルとかも出てくるので。

私は服もコレで塗ってる。

これも人気。

厚塗りみたいに筆の形を活かした塗りのブラシ。

Procreateなら、いろいろ試した中ではコレが一番使いやすかったです。大きめのブラシで境界をサッと撫でるといい感じに馴染みます。


〇「塗りは削り」と気づいた時から俺たちの物語は始まる

削りや消しもよく使われています。これに関してはちょうどピッタリなのがバズってたのでこちらを。

上で紹介したたか先生の動画と共通する部分もあるけど、削ることによって「影と影じゃないところの境目」がはっきりしたり、筆の形を活かしたりできます。

透明色で塗るって、知ってる人には常識かもしれないけど一応。クリスタの場合は好きなブラシで、色を選ぶときに透明色を選択します。

なんでこんなことするかっていうと消しゴムツールには◯しかないからです。


Procreateは透明色で塗る代わりに、消しゴムやぼかしツールに好きなブラシを適用できます。

消しゴムアイコンをもう一度タップするとブラシ選択が可能。
消しゴムアイコン長押しで現在のブラシを適用もできます。


〇エアブラシのこと敵視しすぎてた説

初心者向けの動画で、失敗しがちな理由として「初心者、エアブラシで塗りがち」というのがよく挙げられていると思います。
物心ついた頃からそういうの見て育ったからどうしてもエアブラシにアレルギーがあったんだけど、ぼかすべきところとぼかさないところを理解して使い所さえわかれば、実は強い味方です。

男性向けで多いのが、胸や臀部のまるっとした感じをエアブラシでふんわりハイライトで表現するやり方。

あと、いろんな人の講座とか見てると、ざっくり全体的にグラデーションを作ってから細部の影を作っていくパターンも多いです。

というわけで便利なエアブラシ。みんなそろそろエアブラシのこと許してあげてもいいと思う!

◯主線を入れずに塗りや影だけでシワを表現する部分を作る

「主線の段階で勝負は決まってる説」といきなりバッティングする話だけど、そもそもシワの部分はそこまで線で描いてない絵師さんも多い気がする。

「線画が透ける=塗りの透明度が高く感じる」なので、透明水彩っぽい塗りにしたい人は線画を活かすやり方でもいいと思います。
私は厚塗りっぽい感じ、不透明でソリッドっぽい感じを目指しているので、主線の引き算を心がけることにしました。

細かいシワまでしっかりペン入れして、色トレスして馴染ませてーー!とかやってたけど、カラー絵ってそもそもそこまで細かくペン入れしなくていいんだな。髪とかもそう。

前述の通り、いきなり塗りの段階でフィーリングでシワを描くと悲劇が起きがちなので、下書きレイヤーとかでシワのアタリをつけておいて、塗りでシワを表現する感じがいいのかも。塗りの段階でいらない主線を消しながら影を入れる方法もよさそう。いろいろ模索中。

◯色選びでだいたい勝敗ついてる説

そもそも色使い、特に影色にどんな色を使うかで結構勝敗ついてる気がする。なぜならうまい人は色ラフの時点でめちゃくちゃうまいし、アニメ塗りとか、ザクザクっと下塗りでもめっちゃうまい。

こちらの絵のお袖のところとか、一見わりとザクザク塗ってるっぽいけどめちゃ上手い。

これに関しても淡い色の布は適当でも何とかなるけど、はっきりした色の布の時に力量の差が出やすい気がします。

そしてうまい人、目指す人の作品の色遣いを研究するのも近道。そのあたりのセンスは、一人で練習して自然発生的に身につくのは時間がかかるし、難しいので。

見てもよくわからない時は思い切ってスポイトしてどんな色を使っているか研究するのも有りだと思います。プロもやってるくらい。

もちろん、スポイトしてそのまま絵に使ってネットとかにアップするのはアウトです。

色に関してはもうたくさん情報があるので参考まで。

カラーパレットも素材としていろいろ出ているので、とりあえずそういうのを使ってみるのもいいかも。

◯カゲの中間色

薄い影と濃い影、特に濃い影…という要領で影の濃さを何段階かに分けて塗りたい場合、中間の色が浮いてしまうことがあります。1カゲまではいい感じだけど2カゲが上手くいかないとか、グリザイユだと上手く塗れるけど自分で色を作ると途端にダメになってしまうという人がいるのはこのへんの難しさかもしれません。

極端な例を出すとこんな感じ。カラーサークルのどこを拾うかが問題かも。

右でもいい時はあるんだけど浮いちゃう時もあるし、錯覚で色相がズレてるように感じてしまう気がする

そもそも暗いところ=明度だけ下げる、ってやっちゃうと、もとの色の色相や彩度によってはしっくりこなくて、くすんで見えたり色相まで変わったように錯覚してしまう場合があります。

固有色などによってはこれでもいい場合もあると思うけど

そんな時は、明度は下げつつ彩度を上げるとそれっぽくなる場合があります。カラーサークルで言うと、影が濃くなるにつれ右下を拾っていく感じ。

明度を下げて彩度を上げるとこんな感じ。

それから、ブラシの不透明度を下げて馴染ませていくやり方も。これが一番かんたん。ブラシ塗りと相性が良さそう!

厚塗りの人はそのまま塗るんじゃなくて、コレで一旦パレットを作ってから塗るとかがいいのかも。

あとはエアブラシなどでグラデーションを作ってそこから色を拾っていくやり方も時々見かけます。

もちろんちょっと青っぽい影を入れたり、赤っぽい影を入れたり、色相をずらして影を入れる場合もあります。

最後は人間の目でどう感じるかが一番大事だけれども。

◯おまけ 光と色の要素

以下は服の塗りに限らないけど光と色で「手っ取り早くエモ見せ」するやり方。絵を勉強して来た方には当たり前の話だと思うのでざっくり。

相変わらずパク・リノさんの本を推すやつ。

最近読んだ中で良かったのはコレ!手広く広げすぎずとりあえず今風の絵を描くのに必要な情報に厳選していて、さらには結局クリスタでどうやって描けばいいの?っていうところまでしっかり道案内してくれる本。


逆光とか部分的に強い光を当てたりとか

コツはいろいろあると思うけど、いろんな人のメイキングをみていると、色ラフの時点で光をしっかり考慮するのがポイントかも。

理論は知らなくてもとりあえず形から入るだけでもいいと思います。

◯ハイライトとか

リムライトとかは初心者でも使いやすそう。

それから「キワのところに明るい線を入れる」。これ一本で布の厚みがでます。フリルとか袖口とかに使うと良さそう。


◯影の境目に別の色相を入れたり、鮮やかな色を入れる

特に白い布や淡い色の布にはどんどん使ってます。

とりあえずこういうのを使ってみる手もあります。

◯影の境界を濃く

コレも一気にそれっぽくなるやつ。

これしか見つからなかったので、銃だけれども…。

全体的に窪んでる盆地っぽいシワの場合、中央部分を薄くするとそれっぽくなるかも。

ライティング

◯ホログラム風グラデーションマップ

服に限らないけど、どうやってるのかずっと知りたかったやつをやっと見つけたので…。これも手っ取り早くエモ見せできる方法。

https://twitter.com/emokakimasu/status/1474669104569421825

◯フリル


◯見て描く

神絵師さんたちって、私たちが想像してる以上にしっかり資料を用意して描いてたりします。

というわけで以下は資料になりそうなリンクです。もちろん自分でシャツとか撮って資料にするのもいいと思いますが、着画はなかなかハードル高い気がするので。


有料だけど、gumroadとかartstationとか海外素材まで探してみるとかなり大量です。英語にアレルギーが無ければ。特に異世界ものとか描きたい人にはお宝みたいな資料がいっぱいある気がする。
ただファイルサイズが無駄にでかい…。

これは0円のサンプル版。サテン地の服は陰影がくっきりしてて練習しやすいかも。

gumroadとかでポーズリファレンスを販売してるノアさんは自身もアーティストで、モデルもやってます。Twitterでフリーの参考写真をよく載せてくれるのでフォローしておくと助かるかも!

有償のは💲10〜くらいから。円安が痛い!

Art stationのSatineさんの画像は、アドレスがついててオンラインでも見られるのでストレージ限界民におすすめ。

海外素材系はブラックフライデーとかで安くなることもあるので、気になるのがあったら時々チェックするといいかも。

というわけで以上です。

ひょっとしたら「そんなの当たり前じゃん!!」っていう部分もあったかもしれませんが、上手い人、描ける人が当たり前にやっていて特別とも思っていない(ので言語化されて表に出てこない)部分にも、勉強中の人から見たら画期的なやり方がたくさんあるものだと思います。乗算レイヤーの存在だってはじめたての人は知らないので。

長々と描きましたが、この記事の何かが役に立って服の塗りが上手くなったって人がいたら嬉しいです。

おまけ

記事を書きながら仮に貼っておいたURLの名残です。何かお役に立てば。

https://twitter.com/hashtag/alicetutorial

韓国のなんらかの何か

ネオアカデミーっていう講座らしいんだけど、言語の壁に阻まれて詳細は謎…。日本からも受講できるかも謎…。
ただ、翻訳を頼りにツイートの作例を眺めてるだけでも参考になります。

動画とか



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