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着物の伝統と未来を語る-きもの語り-vol.2 (後編)「甲子園から江戸小紋へ 江紋屋 代表 三田村浩幸氏」

日本全国には、その土地の風土から生まれた工芸品、文化が数多にあります。そんな工芸品・文化を継承し、新たな挑戦を続ける方と弊社博多織元5代目社主 岡野博一の対談をお届けします。

この大好評(自称)シリーズ!の第2弾は、江戸小紋メーカー「江紋屋」代表の三田村浩幸氏にお話しを伺いました。
冗談、笑いありの楽しい対談になりました。

※こちらの記事は後編になります。前編をまだお読みになってない方はぜひ先に (前編) をお読みください。

■秋がないから「飽きない」帯

三田村さん:OKANOさんではウチの江戸小紋に合う帯をオリジナルで織ってもらいましたね。
「春・夏・冬の柄」で「秋がない帯」つまり「飽きない帯」はすごい好評でした。

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↑春・夏・冬で「秋がない」→「飽きない帯」

岡野:ミタちゃんから「こういう帯を織ってほしい」って話をもらうんだけど、当時は「え!こんなアッサリしたものでいいの!?」って驚いたよ!?

三田村さん:お客様に似合うモノをご提案したくて、
着物・帯・帯揚・帯締のトータルコーディネートのバランスを考えたときに、当時の感覚もあるけど、ウチのシンプルな江戸小紋には、煌びやかな帯ではなく、シンプルな帯が合うなって。

だから、当時の博多でも、西陣でも、どこでも織っていなかった、江戸風なシンプルで洒落た帯をOKANOさんに依頼しました。

岡野:江戸小紋は汎用性があるからね。名古屋帯を合わせてカジュアルに、紹巴や佐賀錦織の袋帯を合わせてセミフォーマルにね。
江戸小紋と一緒にOKANOで織っている全ての帯をコーディネート提案できたから、有難かったし、勉強になったよ。

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↑江紋屋の江戸小紋にOKANOの博多帯

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↑雪輪の地紋に「万筋」を染めた江戸小紋

三田村さん:OKANOで織っている帯で、ウチに合わない帯は1本もないですからね。

岡野:江戸小紋っておもしろい。すごい。

■変えないトコロと、変えるトコロ


岡野:江紋屋さんの江戸小紋はこだわりが強いよね

三田村さん:「着る人の目線」でのものづくりってのは大事にしてます。
見た目はもちろん、着心地の良さを感じてもらえるように、白生地にもこだわってます。
今は単衣を着る時期が長くなったから、単衣に向いている江戸小紋をつくったり。
伝統工芸だから変えてはいけないところは、しっかりと守り、
時代に合わせて変えるべきところは、新たな挑戦をしていく。
「色」も時代にあわせて変えていく。
「着る人の目線」でのものづくり、そこへのこだわりはあります。

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↑裏も染めた江戸小紋。単衣仕立てがオススメです。

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↑地紋が入った生地を使用した江戸小紋

岡野:地紋が入った白生地に染めている江戸小紋もおもしろいよね。

三田村さん:織で柄が先に入った生地の上に、型をのせて染めるんだけど、
光沢があってドレッシーに仕上がります。

■5年先の近い未来「つくる続けること」の難しさ

岡野:今後の展望はどんな風に考えてる?

三田村さん:そうですね、春の選抜甲子園で優勝した頃に戻りたいね。
「春・夏連覇だ!!」でマスコミが煽ったのに、0-1で一回戦負けしちゃっいまして、、、あーすれば良かったって反省はたくさんあります。

岡野:笑笑笑。それは今後じゃなくて、過去に戻りたい話ね、笑
でもその反省はミタちゃんの人生にとって大きな財産だったんだね。
今のものづくりにもきっと生きている。

で、今後の展望は?

三田村さん:博多織も同じだと思うんですけど、やはり江戸小紋も「つくること」が難しくなってきています。
染屋さん、生地屋さん、原材料屋さん、道具屋さんが今後も「ものづくり」を続けるためにはどうしたらいいのか。
30年、40年先の話ではなく、5年先に今の「ものづくり」ができるかっていう、近い未来の話で。

ありがたいことに、着物を着る人はゼロになってはいない。
「着る人」がいるのに、「つくれる人」がいなくなっているのが今の着物業界。これは何としても避けたいですね。

岡野:伝統工芸を守っていくのってノリと勢いと情熱だけではダメなんだよね。しっかりとした「マネージメント能力」が必要。
ミタちゃんは17、18歳っていう感受性が一番強い時に帝京高校のキャプテンで80人近い部員をもとめていた。若い時からマネージメント能力が抜群のミタちゃんならきっとできるよ。

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↑アークヒルズ店スタッフに江戸小紋のレクチャーをしていただきました。

■守備範囲が広い「江戸小紋」

岡野:最後になるけど、ミタちゃん
「江戸小紋の魅力」と「江紋屋の魅力」を一言で言うとなんだろ?

三田村さん:・・・・・・ん?僕が言うんですか?

岡野:そうだよ!笑

三田村さん:江戸小紋の魅力は「格式の高さ」と「着用シーンの広さ」ですね。
武士の裃(かみしも)に始まった格式の高さ、でもコーディネートによってカジュアルにも、セミフォーマルにも着れる着用シーンの「広さ」が魅力です。

岡野:ミタちゃんが守っていたセンターの守備範囲くらい広いね。笑


三田村さん:今はキャッチャーですけどね。

岡野:体型はね!笑

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↑徳川将軍家の定め柄「御召十(おめしじゅう)

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↑よーく見ると、かわいいテディベア

三田村さん:で、江紋屋の魅力は、今、東京でつくれる江戸小紋の半数近くを扱っている、商品数の多さかな。

岡野:最大手だよね。

三田村さん:あとは、地紋がある白生地、裏も含め3回染めるとか、
素材、染めにこだわったものづくりが魅力ですかね。

岡野:江戸小紋ってインクジェットやプリントのモノもあるけど、三田ちゃんのように、伊勢の型紙を使って、職人の手仕事で染めている江戸小紋は今は年間どれくらい生産されているの?

三田村さん:今は約2,000反ぐらい。

岡野:え!まじで!?
これは希少性高いね、ほんと。1年に2000反しかつくられていない江戸小紋のうち、100反以上を今回OKANOに持ってきてくれるんだよね?

三田村さん:はい、こんなに集まる場所はないですね。

岡野:貴重な機会をありがとうね。ほんと。

三田村さん:はい!ビールはスーパードライが好きです。

岡野:うん、笑。コロナが落ち着いたら昔みたいにまた飲みに行こう。

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【 江戸小紋フェア 】
2021年8月27日(金)~30日(月)の4日間、OKANOアークヒルズ店にて江紋屋さんの江戸小紋をご紹介します。
そして、8月29日(日)15時より、三田村さんによる江戸小紋講座をおこないます。※残り席わずか 
ぜひ、ご予約のうえお越しくださませ。
ご予約、詳細はこちら

三田村さん

東京染江戸小紋総合プロデュース 江紋屋
 代表取締役 三田村浩幸氏
1974年生まれ       高校時代 名門 帝京高校で甲子園出場
全国にて江戸小紋コーディネーターとして活躍中
好きなビールはスーパードライ

岡野社長② (2)

岡野博一
伝統的工芸品、博多織の織元5代目。
博多織をルーツとするOKANOを六本木アークヒルズ、博多リバレインモールに出店。日本の伝統工芸を世界ブランド化するために精力的な取り組みを続けている。

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構成/文 指首太志                 
1990年生まれ 着物業界5年目
大学院で貧困と教育について研究し、卒業後はインドネシア、台湾で教育支援活動をおこなう。海外で生活する中で日本の文化に興味を持ち、中でも着物に強く関心を持つ。帰国後、都内の着物屋を30店舗ほどまわり、博多織の織元OKANOに出会い、入社。仕事でもプライベートでも着物、1年の350日は着物で過ごす。

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