11年振り「国債買入」オペの "札割れ" ー 銀行は何を考えているのか
"札割れ" を大分久しぶりに見た。通常だと「国債買入」の "札割れ" は「銀行が国債を持っておらず市場に足りない」≓「需給」の引き締まりから「金利低下」要因となる。だが今回はどうも様子が違う
銀行が「損」を確定させるのを嫌がったからではないか
2年JGBは概ね@0.33~0.34%で取引されているが、この水準は2年以内に日銀が+0.5%「利上げ」することを織り込んだ水準。「そんなに利上げしないんじゃないか」。そういう "淡い期待" が滲む。年内に最大+1%の「利上げ」を見込んでいる「損切丸」とはえらい違い(苦笑)
思わずこんな替え歌(古い!)が浮かんでしまうが、直近で思い起こすのは 「金利」は時に「為替」より怖ろしい|損切丸 (note.com)
債券で▼2兆円の「損」??
1994年の例、e.g. グリーンスパン議長による6ヶ月間で+1.5%超の急速な「利上げ」、を紐解けば「損切丸」でなくとも@4~4.5%程度までの「利上げ」は想定できるはず。確かにパウエル議長による3回連続+0.75%「利上げ」は前代未聞だったが、それでも「損」が兆円単位になる前に先物でもスワップでも手は打てたはず
こんな議論が会議で踊っていたのだろう。下手をすると2022年にウォール街が「金利@2%運動」「@3%運動」(株価維持を狙って金利が@2~3%でピークを打つという宣伝)を起こした時に ”ナンピン買い” に動いたのかも。 米国債 "逆イールド" の検証。|損切丸 (note.com) がきちんと為されていなかったのだろう(「損切丸」を継続的に読んでいてくれれば…)
とにかく「損切り」は "気楽" にするのが一番。「こんなはずじゃない」「何とか損を取り返さなければ」は厳禁。過剰に ”気持ち” が入ると客観的に判断出来なくなる。筆者も随分痛い思いをしたが、一旦「損切り」してみると「なんでこんなモノに拘っていたんだろう」と目が覚める
アメリカではシリコンバレー銀行(SVB)やシグニチャーバンクなどの中堅行が吹き飛んだが、農中の1件もそれに近い。中堅行の1つや2つ軽く吹き飛ばす程の損失だ。外資系なら間違いなく金利関連のマネージングディレクター数名、下手をすればCEOの首が飛ぶ
結局1兆2,000億円もの増資が "軽く" 決定されているが、これは巨大な ”モラルハザード” (倫理の欠如)に他ならない。バックにJA(農業共同組合)が付いている準・国営銀行だから「お金」は政府から出ているようなもの。つまり元は「税金」。巨大な「票」を抱えているから可能な案件である
筆者が何を言いたいのかというと、こんなんで日銀は+1~2%の「利上げ」に向かえるのか。20年以上も「超低金利」に安住してしまったため、こちらも巨大な ”モラルハザード” が蔓延。これ程「円安」が深刻化する中、2年で+0.5%しか「利上げ」を想定せずに「国債買入」が "札割れ" を起こすようでは先が思いやられる
もっともこれを恰好の "言い訳" に日銀も「QT」(量的引締)≓「国債買入」減額に動きやすくなる。銀行が応札しない以上オペを続ける必要はない。現在の「下限金額」↓ に十分落とせるし回数も月4回から減らせる
まあこの辺が「日本金融村」の ”阿吽” の呼吸。日銀と市中銀行が "札割れ" を演出した可能性もなきにしもあらずだが、仮にそうだとしてもJGBを中心とした金利ポートフォリオの管理が甘いのは事実。「利上げ」に動いても「円安」が止まらなかった時にどうするのか。 "低金利の王様" 日銀でさえも追い込まれれば2回連続+0.5%「利上げ」なんてことも起きうる。ターミナルレート(利上げの着地点)は最大@3%ぐらいに設定しておかないと米国債の時と同じ事が起きるだろう
「新NISA」で毎月▼2,000~▼3,000億円も「円売り」が恒常的に起きる中、巨額のJGBは早晩国内だけで消化できなくなる。♪「金利」を知らない子供達♪ には想像がつかないかもしれないが、金利上昇に伴って邦銀も血で血を洗う「預金獲得」競争が始まる。果たして現経営陣で対応出来るだろうか
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