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人民元に付いていく韓国ウォン 其の4 - 急激なウォン高反転。危機は去ったのか?

 「おお、随分戻すなあ」。同じような感想をお持ちの読者もおられたかも知れないが、ちょこちょこ眺めていた韓国ウォンがこの1か月で急激に値を戻したので、久しぶりに少し調べてみた。

 韓国政府の対日政策が変化したのと合わせて動いたので日韓で融和か、とも感じられたが(そういう風に誘導したい勢力もいそうだが)、どうもそれが主因ではなさそうだ。やはり「米中貿易紛争」の緩和期待とそれに伴う人民元高が相場を動かしている。↓ 

ドル人民元1M

 一時@7.15近辺まで人民元安が進んでいたが、その後直近1か月で急激に人民元高に戻し、11月7日には一時@7.00を割り込んだ。ウォンはこれに引っ張られている格好で、韓国だけの要因で戻したわけではなさそうだ。中国に関係の深そうなアフリカ諸国や香港、あるいはベトナム(通貨:ドン)も調べてみたが、ここまで露骨に人民元について行っている通貨は韓国ウォンだけ。最早「人民元ペグ」といってもいい程。まさに中国の「衛星国家」だ。

 ただ、中国向輸出の回復期待から対人民元でもウォン高に振れており、( ↓ )交易条件を考えると必ずしも韓国にプラスとまでは言えない。

人民元ウォン1M

 面白いのはこの間、相場の動きとは裏腹に韓国経済の先行き悲観論がやたらと増えていること。相場は先取りして動くので、韓国内の認識が改まってきたこと自体を好感しているのかもしれない。文在寅政権が続こうが、レームダック化、あるいは退陣しようが、今までの「間違った政策」が是正される期待が強いとも解釈できる。(ただ、あくまで”期待”である)

 上海や韓国の株価を見ると( ↓ )、危機的な状況に陥る前のG20@大阪前後の状態に戻っただけ。連日最高値を更新しているNYダウや最近好調な日経平均とはパフォーマンスに圧倒的な差がある。

上海6M

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 ここから上値を追うためには、中国、韓国の国内景気が本当に持ち直すのか、が問われてくるだろう。もっとも共産主義で巨大な内需市場を抱える中国は株価などものともしないのかもしれない。デジタル通貨を巡る「通貨覇権」の戦いも控えている。長い時間をかけて覇権を握る手法を中国では「長い碁」と言うようだが、目先だけを追っている訳ではなさそうだ。

 ただ韓国はそうはいかない当然目先にこだわっている。何しろ政権を追われれば命の危険がある国である。11月23日に失効日が迫るGSOMIAについてはアメリカから強烈なプレッシャーが掛かっているし、そのための対日融和の「ポーズ」だろう。→ 本気ではなく一種の演技。反対側では鬼の形相の中国や北朝鮮(共に宗主国?)が睨みをきかしているので簡単ではない。

 まあ韓国の財閥や富裕層はとりあえず通貨や株価が戻ってほっとしているのではないか。ただ、相場が戻したからといって、必ずしも雇用などの実体経済が戻るわけではない。マーケットも半年前の水準は取り戻したが、さて今のままで今後本当にうまくいくのだろうか?

 人民元も韓国ウォンもまあ良く動くものだが、しかし振れ幅が大きすぎる。相場つきで言えばビットコイン(BTC)にちょっと似ているかも知れないが、「損切丸」があまり得意でないBold Marketsの一種だ。

 韓国のお国柄なんだろうか、この「感情に訴えかけてくる相場」は独特である。トレーダーもよほど自分の感情を上手くコントロールしないと巻き込まれてえらい目にあいそうだ。さもなければ手を出さないこと。一攫千金も可能かも知れないが、すってんてんになる恐れもある。筆者も今回のようにたまにはアップデートはするが、今ぐらいの「遠巻きの観察」が丁度良い。日韓の距離感もその程度が双方にとって良い気がする。

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