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"不気味" な中国国債Ⅲ。ー 今度は金利上昇。債務負担の大きさが問題化。

 ニュースソースが少ないのでつぶさに追っているが、中国の電子商取引(EC)大手、蘇寧易購の株価が急落(  標題)。日本では2011年に「ラオックス」を買収したことで知られているが、時価総額はここ6年で▼70%近く減少。問題となっているのが「借金」の多さだ。

 2020年決算では純損益▼42.75億元(▼約710億円)と上場以来初めての通年赤字転落(前年は+98.43億元(約1,634億円)の黒字)。売上高は前年比▼6.29%減の2,252.96億元(約4.2兆円)、純利益から特別損益を除いた本業も▼68.7億元(▼約1,130億円)損失となり、これも*上場来最大の赤字

 *特別損益を除いた本業での損益は6年連続の赤字となっており、元々収益力には問題があったようだ。2017~2018年に所有していた中国EC最大手の阿里巴巴集団(アリババ)の株を3度にわたり売却。2017年に+33億元(約548億円)、2018年に+110億元(約1,827億円)の売却益をそれぞれ計上し、資産売却により何とか帳簿上の黒字を維持していた。

 2018年+136.87億元(約2,273億円)、2019年+155.54億元(約2,583億円)と「資産の切売り」で赤字を回避して来たが、2020年の特別利益+25.32億元(約421億円)へ急減。 ”ネタ” が尽きた

 6/15発表の資料によれば、管理当局(北京市第二中級人民法院)は会長が保有する5.4億株、資産価値で約30億元(約515億円)相当を凍結債務負担の大きさと相まって今回の株価急落を招いている。

 今回の「蘇寧易購」問題の引金になったと言われているのが、中国不動産開発大手の恒大集団(チャイナ・エバーグランデ・グループ)。2020年9月に株価、社債が急落し「デフォルト」問題が浮上したが、一部投資家が保有していた2021年1月に一定の条件下で「社債買い戻しを求める権利」1,300億元(約2兆円)のうち、約863億元(約1.3兆円)分の「保有継続」で合意株価、社債とも急反発し、危機は去ったかに思われていた。

 だが当該「権利」のうち200億元(約3,076億円)を保有していた蘇寧易購の経営危機が表面化するに連れ、引き摺られるように恒大集団の株価も更に下落。差し詰め「連鎖倒産」の様相を呈してきている。

恒大集団(1年)

 本件を追えば追うほど、日本のバブル崩壊と過程がよく似ている。こうなると両社とも、特に**海外の投資家に社債を売って資金調達するのはかなり困難になる。頼みの綱は国内の銀行だが、どこまでこういう「不良債権」予備軍を抱え込めるか。判断を誤れば45兆ドル(約5,000兆円)にも及ぶ「社会融資」全体にも悪影響を及ぼす懸念もある。

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 **邦銀は「ドル」のクレジットラインを欧米の銀行から次々と切られて「金融危機」に陥った。当時国際業務を大々的に展開していたため「ドル」の需要は膨大。邦銀に対する与信には「ジャパン・プレミアム」が発生し、+30~+200BP(+0.3~+2.0%)もの「上乗せ金利」を課された。

 さて本件では大企業の例を取り上げているが、同じような問題は中国のあちこちで起きているはず。日本のバブルもそうだったが、***問題の核心は「不動産向け貸出」日本ではバブルを着地させるのに10年以上を要したが(その後のデフレ20年を入れると30年か?)、中国は金額が途方もない。いかに一党独裁とはいえ、数年で着地させるのは無理だろう。

 ***何のリターンも生まない「不良債権」のための資金調達を「ロス・ファンディング」と呼ぶ。「資本」勘定の「損失」は「損金処理」しない限り「永遠に」資金調達が続く。そのコストを下げるために中央銀行は「利下げ」する訳だが、さすがに10~20年も続けば支払利息が嵩み、早く「損金」処理した方が安くつくCrash&Build のアメリカが「早期処理」の代表だが、今回の「コロナ対応」も日米の差がくっきり出てしまった。

 輸出主導で成長している中国も日本同様「ドル」は不可欠のはず。それなのに「ドル」の供給源となる「金の卵」香港を潰したりアメリカと正面切って喧嘩するのはちょっと理解に苦しむ。自ら首を締めるようなものだ。

 結果として人民元の高金利、e.g. 10年国債@3.15%実質@+1.49%)が起きているのだとしたら、やはり "不気味" 5年CDS@36BP " 画面提示" されているが、果たして ****"リアル" な保険の受け手はいるのか

 ****「利回り」は高いのだから、CDSの売り手がいれば「5年CDS買+中国国債買」のポジションがもっと構築されても不思議ではない(もっとも "デフォルト条項" 中国の政治リスクをどれだけ盛り込めるかが鍵)。

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 今回も「見えない信用連鎖」の1つが明るみに出たのは参考になった。今後も中国に関しては ”少ないネタ” を丹念に拾っていけば、もう少し何か見えてくるかもしれない。金利と共に人民元高の行方も気になる。

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