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続・ ”バズーカ” の後始末 ー マーケットは国債先物、スワップ等多方面から「総攻撃」。

 6/15 ”国債先物は▼2円超の急落で安値引け、サーキットブレーカー発動”

 ”バズーカ” の後始末 ー 「10年日本国債@0.25%無制限買取オペ」の深層。|損切丸|note の続編。

 ”バズーカ” の後始末が大変になっている。*国債先物が▼2円急落でサーキットブレーカーが発動されるのを久しぶりに見た(ちょっと懐かしい)。日銀とはいえ官僚・サラリーマンの端くれであり、「親分」の顔に泥を塗る訳にはいかない

 *これが株だったら夕方のトップニュースになるはずだが、国債や金利の事のなると、なぜか日本ではまともに報じられないまるで財務省が国全体の「親分」のような巨大な ”忖度” が働く

 ”日銀は** "チーペスト銘柄" に当たる10年債356回債について、@0.25 %で無制限に購入する連続指し値オペを16,17日に実施すると発表”

 ** "チーペスト銘柄" とは国債先物を決済する期限日に、先物買い手が受け取る残存期間7年のJGB(日本国債)。先物の売り手が ”最も安い” 銘柄を渡すから "チーペスト" (Cheapest)と呼ばれる。国債先物は裁定取引を含め大量に売買されるため、 "チーペスト" は市場では不足しがち

 先物急落につれて "チーペスト" に当たる7年国債金利が@0.30%まで急騰10年債との "金利逆転" が起きたため、日銀は対応を余儀なくされた

 日銀はその他にも3.7兆円もの国債買入オペを実施(うち1.3兆円は無制限買入オペ)。金利上昇を抑え込もうと必死の防戦体制だ ↓ 。

 6/15、16の日銀による国債買入 計3兆7,155億円:
 ・残存期間1年超3年以下  6,250億円
 ・残存期間3年超5年以下  6,250億円
 ・残存期間5年超10年以下   8,000億円
 ・残存期間10年超25年以下 2,500億円
 ・残存期間25年超     1,500億円
 ・残存期間5年超10年以下(固定) 5,443億円
 ・残存期間5年超10年以下(固定) 7,212億円

 10年超の超長期債の金利も急騰したため急遽オペを追加。オペ後、30年債は一時@1.13%まで低下したが、その後先物の売りに連動して@1.25%までに急上昇(価格は急落)。株だけでなく、こちらも ”風雲急”

 今回の仕掛けは海外勢が主導。差し詰め「ヘッジファンド vs 日銀」「弱いところを攻めろ!」 ー 「資金繰り」が決め手の「信用格差」。|損切丸|note の原則に則って攻勢に出ている。日銀の "泣き所" は540兆円にも及ぶ保有JGBの在庫いずれ限界が来ると見越しているのだろう。

 とはいえ国内勢ががめている国債の現物では分が悪いので、仕掛けは「先物+デリバティブ・スワップ」が中心。実際10年円スワップは@0.40%を超え邦銀も長期ローンのヘッジ等でPay(金利を払う、の意味。金利上昇方向)がほとんど今買い向かう(=金利低下方向)のは相当キツい

 国内エコノミストは「日銀に限界はない」の大合唱。それぞれ "立場" があるのだろうが、本当にそう思っているのか?「資金繰り」の視点がスッポリ抜けている

 確かに国債を買い続けることは技術的には可能だが、仮に国債全部1,200兆円を買ったら「資金繰り」はどうなるか。ここから+700兆円「資産」が増えるということは、「負債」も+700兆円増やさなければいけない。これまでは国内の「預金」1,000兆円が銀行を通じて「当座預金」として入ってきたが、ここからはそう簡単にはいかない

 実際今でも「政府預金」という形で30兆円程「短期国債」を発行=マーケットから「お金」を再調達している。700兆円のうち何割かは「当座預金」として戻ってくるとしても、仮に▼200兆円不足すれば新たに「短期国債」を発行するか、短期の「売現先」で市場から「お金」を引っ張ってくるしかない。そうなれば円短期資金市場の需給は逼迫し、TONAR(無担保コールO/N)を押し上げてしまう。つまり「金利を低下させるために金利を上昇させる」という自己矛盾を生み出す。悪い表現で言えば「自転車操業」

 こんな事は日銀も財務省も承知。2021年央から 「お先に!」 ー 着々と進む日銀による「ステルス・テーパリング」。|損切丸|note しているくらいだから、既に "限界" は感じているはず。ちょっと金利に関する知識があれば自明の理だが、「日本金融村」では口が裂けても「金利が上がって大変になる」とは言えない

 おそらく@126円辺りからドル円を買っている(円売っている)ヘッジファンドは、文字通り "ヘッジ" (危機回避)で国債先物を売ったり円スワップを払ったりしているはず日銀が「無制限オペ」廃止等、何らかのアクションを起こせば円買い戻しが想定されるが先物やスワップで儲かりアクションがなくても円売り再開で収益が出る。どちらでも構わない訳だ。

 2020年から「日銀バランスシート」シリーズを時系列で追ってきたが、やっと ”実を結んだ” (ご興味のある方がマガジン「日銀編」でご一読を)。ヘッジファンドの餌食になるのは気に入らないが(苦笑)、これだけ「弱いところ」を見せたのは自業自得。金利+1%で財務省が年間▼10兆円、日銀が▼5兆円「やられる」状況が生まれており、しかも容易に解消できない。かといって「円安」も放置できない...。まさに ”八方塞がり"

 まずは本日(6/15)のFOMCだが、続く日銀政策決定会合も波乱含み。何せ円金利市場はまだ十分リハビリが出来ていない。今回の「サーキットブレーカー発動」は幕開けのプロローグ(序章)だろう。

 ECBもあまりに急激な金利上昇を受けて、パンデミック緊急購入プログラム(PEPP)で購入した債券の再投資を柔軟に活用するかどうかを緊急協議欧州国債は急反発(金利は急低下)している。

 これは株も国債もFXもかなりの相場変動が予想される。マーケットの復活は喜ばしいが、相当ふんどしを引締めて臨む必要がある。


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