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ムダを削減する

 朝市の運営には、トヨタ方式(トヨタ生産方式)の影響を受けた合理的な現場運営をあちこちに取り入れています。きょうはそのひとつ「ムダ取り」の話をします。トヨタ方式の7つのムダとは以下の7つ。

(1)加工のムダ
(2)在庫のムダ
(3)不良・手直しのムダ
(4)運搬のムダ
(5)作りすぎのムダ
(6)動作のムダ
(7)手待ちのムダ

 「えーあの悪名高いトヨタ方式」と思うかたもいるかもしれません。そういう取り上げ方をしている社会科の資料集なんかが昔あったのをわたしも覚えていますから。しかしわれわれは「使えるものはなんでも使う」のです。トヨタ方式、ご興味があったらぜひ学んでみてください。たいへんにおもしろいどころか、仕事や労働というものにたいする日本が生んだ哲学です。

 このムダとりという考えかたはこんなふうです。

 ある作業には本質的に価値をうんでいる部分とそれに付随するけれどなくてもいい部分があります。たとえば金属部品の溶接工程を例にとると、溶接火花が散っている瞬間だけが「価値を生んでいる」と見なします。それ以外の部分はすべてムダと考えてどんどん削減していくわけです。

 もちろん削減しにくい部分もある。部品を作業用の治具に設置するとか、溶接棒を交換する手間とか。しかし部品を倉庫から運んでくる作業とか、部品が届くのを待っている時間というのはまるきりムダ。こういうわかりやすく削除しやすいムダからどんどん削除していく。

 「しかし工場の生産現場とはちがって、朝市のような場は雑談や手作業などムダを楽しむ」部分があるじゃないか?」はい。わかります。しかしタモリの名言を思い出しましょう。「仕事じゃないんだぞマジメにやれ!」。あきらかに削減すべきものはたくさんある。そこをまずはどんどん削減していきます。このへん容赦してはいけない。アカンもんはアカン。楽しむところは楽しむ。シャンシャン終わらせるところは終わらせる。

 たとえば会場設営や撤収は営業時間には入りません。ラクであればあるほどいい。ムサシオープンデパート朝市は出店者やボランティアに撤収を手伝ってもらいますので、効率のいい作業工程が組んであれば仕事がどんどん進む。テンポのいい作業は楽しい仕事にすらなりますし参加しようという気にもなります。

 朝市の会場を見てもらうとわかるように、会場の中心部にテーブルやベンチの収納場所があります。つまり最短動線かつ分かりやすい場所に設置してあるわけです。これはなんども場所をかえていまの場所に落ち着いていますが、これもまたいずれさらなる改善で移動していくでしょう。

 さらに軽作業のだいじなポイントとして「可能なかぎり人力でものを運ばない」ことです。

 これは単純なようですが、わりと実現しようとするとめんどくさい。なぜなら朝市のようなシンプルな現場では実際にはガンガン手で運んだほうが早い場合がたくさんあったりするわけです。それでも手で運ばない。運ばせない。台車や軽トラで運ぶために作業全体を組み直すことをねらいます。

 これを実現するためにけっこう注意やお小言を言ったりもしました。朝市には元気のいい人が多いですから「運びまっせぇ!」といって運んじゃう人がいるんですよ。ほんとうにありがたい話なんですが、これを止めないといけないわけ。けっこうめんどうですよ。元気に手伝ってくれる人に「やめてください」と伝えなくちゃいけないわけですから。

 しかし意図を伝えることに成功すると、全体の労力が圧倒的に削減され、疲労感がぜんぜんちがう。大車輪でドタバタ作業するのではなく、同じ時間だけどサラッと終わらせる。部分最適ではなく徹底した全体最適をねらいます。それに自社スタッフも出店者もボランティアも巻き込んで。

 今週は新しく軽トラを導入しました。会場まで人や荷物を運ぶのはもちろんですが、実は軽トラには会場内の人力運搬をできるだけ削減する「動力式荷車」という役割もある。リヤカーやターレットなどの導入も検討しましたが、けっきょく軽トラがツブシが効く(朝市事業をやる人はトラックなどの実用車を運転する機会が多いのでマニュアル車免許は必須です)。テントやベンチを撤収するときに人間がやるのは畳むところまでだけで会場内の運搬はすべて軽トラや台車でおこないます。

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 手が空いていても人力ではモノを極力運ばないというこのスタイルは出店者にも定着してきました。

 かつては撤収に2時間近くをかけていましたが、分単位で時間を計測したこともあって最近は1時間を切るようになりました。あっという間に撤収が終わったあとスタッフが名残惜しそうに会場でおしゃべりしているのが恒例になっています。

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