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お母さんはシミだらけ

「お母さんはシミだらけ」
 ニヤッと笑って息子が言った。10歳男子は母を貶めたい年頃なのだ。

 わかっているのに、いつものように笑い返せなかった。
 なぜだろう?

 ◇

息子が2歳か3歳だったある日、ハッとした。

あれ? こんなシミ あったっけ!?
よくよく見ると、顔だけではない。
腕や脚……、ギャー なぜこんなところにも!!

彼らは「昔からここにいますよ」くらいの自然な顔で、いたるところに鎮座あそばされていた。

……そりゃあ、シミもできるよね。

朝から晩まで、近所の公園で過ごした。
専業ママのあるあるだと思う。

午前中遊んで、お昼を食べに家に戻り、午後にはまた公園に行きたいとせがまれた。たっぷり遊んだ後はお昼寝させたい。ベビーカーに息子を乗せて、寝つくまで徘徊。
遊ばせ、食べさせ、寝かせる。大げさではなく、それだけで一日が終わった。肌のお手入れはしていたのか、記憶がない。

出産前は肌がキレイだと褒められたけれど。
鏡の中の浅黒い自分は「どこの化粧水を使ってます?」なんて聞かれることはもうないだろうなと、切ない気持ちになったっけ。

白い日射しが照り返していた、夏の空気がよみがえる……。
かわいかった。大変だった。必死だった数年間。

 ◇

 本当に大人げない。けれど
「あなたが小さいとき、よく公園に連れて行ったの。これはそのときにできたのよ」
と、息子に言い返していた。

彼は神妙な顔になり黙りこんだ。

しまったー!

「あなたのせいよ」 と聞こえたかな。 
非常によろしくないぞ。伝えたかったのはそれではない。
慌ててつけ加えた。

「だから、これはお母さんの勲章なの。大事だから、笑われたくないの」

美しくまとめすぎた感はあるが、そうだったのだと腑に落ちた。
勲章とはいえ、消せるものなら消したいけどね。


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