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020 実家の両親の終活③~老人との対話には傾聴が必要

《前回の話》

父との会議には、父の弟にあたる叔父と私の弟も同席していました。これは父の望みでもありましたので。

孤独を深める老人の生活
この数年間(というか生まれてこのかた、に近いかも)父の話をまともに聞くことはありませんでした。いい歳をして実に情けない話ではありますが、はっきり言って父とは不仲です。近年はさすがにケンカこそしなくなってはいましたが、たまに実家へ戻っても挨拶以外に会話することなどほぼなしで。

よくよく考えてみれば、それは私に限らず叔父も私の弟も同じようなものだったのではないかと。だから昔から外面だけは良くて身内には自分勝手極まる父の言い分などまともに耳を傾けることもなかったですし、20年ほど体を悪くしてほとんど車イスやベッドで過ごすだけの父は孤独を深めて意固地になっていた可能性も。そう考えると少しだけ同情はしますが、私を含め周囲の評価は「自業自得」、これに尽きるでしょう。

父の言い分は「認知症が徐々に出始めている母のことを心配している」。だから母を老人施設へ入所させろと言うのですが、一人でまったく生活のできない自分については「一生を自分で建てた家で終わりたい。人間扱いされないような施設で過ごすのは御免だ」「一人で全部やれる」と主張するばかり。また始まった、と親族の誰もがうんざりしていました。

最後の親孝行?
百歩譲って気持ちを汲んであげることはできます。しかし結局は周りに面倒を掛けているだけの存在なので、まるで説得力がありません。

会議の途中、これまで遠方に居る私以上に迷惑を被ってきたであろう叔父と弟は、父の勝手な言い分に対して遂に本気で怒り始めました。私も正直に言えばイライラしていたのですが、ここで自分がキレてしまったらこの会議はその場で終わることも分かっていたのです。この2年、コロナの影響とはいえまったく帰省することのなかった身としては、老い先長くない父親のおそらく最後に近い言い分を、今日だけはとにかく傾聴しようと決めていました。それがどんな勝手な内容であったとしても。そして納得できるかできないかは別にして。

会議の後半はかなり険悪なムードになったのですが、すべてを聴き終えた私は父に「言いたいことは分かった。まったく納得はできないけどね」と話を〆ることにしたのです。その場で結論を無理に出すことはせず、しかし後で叔父や弟と打ち合わせをすることも事前に打ち合わせ済みでした。

父は言いたいことを言ってようやく少し納得はした様子。後に父の言い分などひっくり返す決定をするかもしれませんが、とりあえずこれで一歩前進できるかも、と少しだけ肩の荷が下りた気分でした。もしかしたらこうして男の身内の前で父の話を聞いてあげることが最後の親孝行になるのかもしれません。

次回「老人との対話にはリスペクト・トレーニングを」(仮)へつづく。

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岡橋秀樹

一般社団法人プリエンド協会 代表理事
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