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E49: タキャキュのお客様

僕は決めていることがある。
「何かハプニングがあったら、愚痴を言うのではなく、そこから必ず何か『学び』を見つけよう」


(状況が状況なので、ここから数行だけ、笑い無しで行きます)

・・・・・・・・・

さて、先日の通勤中、人身事故の影響をもろに受けた。

人の命に関わることだ。
迷惑だなと思う反面、やっぱり厳粛に受け止める。
きっと、つらい思いをしていたのだろう。
もちろん命は大切にしてほしい。
当事者、携わる人、すべてに心の中で手を合わせる。

こういう時、不満たらたら、あろうことか駅員さんに文句言う人までいる。
人の振り見てなんとやら、愚痴は言うまい。
僕はそう心に決めている。


・・・・・・・・・

(これ以降、気楽に読んでください)


さて、止まったJRの駅から、距離にして約700 m。
僕は私鉄の駅にダッシュする。
身体を動かすのがきつくなっている僕にとっては、大変なことなのだ。でも仕方がない。

ドタドタ走り込んで、なんとか乗り込んだ私鉄の特急は、やはりちょっと混んでいた。


でも、僕よりも、ハプニングに慌てていたのは他でもない、その私鉄特急の車掌さんだった。

「ただいま、JRで人身事故が発生したため、タタ、タカ、タカ、タキャ、タキャキュ、タカクのお客様により、車内が混み合っております。お客様には大変ご迷惑をおかけ……」



ん? 今、なんつった?



タキャキュ?


6回目くらいで、彼女は、やっと言えた。
「タキャク」らしい。

前後の文脈から
たぶん「多客」なんだろう。

それにしても「多客のお客様」て!!

申し訳ないけど、変な日本語である。
(注: 自分の下手な文章は、棚に上げています)


ここからは、勝手な想像をしてみる。


声からすると、彼女、まだ車掌になって数年ではないか。
列車指令から無線で連絡を受ける。

「ただいまJRで人身事故発生。振替輸送を実施するため、『多客』が予想される状況。各乗務員においては、ドア取り扱い等注意すべし」

まぁ、そんなような指令を受け、

慌てた彼女、聞いたそのままを車内放送
「タ、タ、タキャキュ、タカク、タキャク…」
もう大混乱…。
まあたぶん、そんなところだろう。



ところが彼女、真面目すぎるのか、
列車が駅に着くたびに、全く同じアナウンスを繰り返す。

そして、また,
同じところでつまる。
「タ、タ、タキャキュ、タカク、タキャクのお客様に…」

(言われへんかったら、やめときゃええのに…)

ところが、人間とは不思議なものだ。だんだんと僕の心境は、こんなふうに変化していった…。

1駅目 怪訝な顔をした僕
2駅目 吹き出してしまった僕
3駅目 可哀想になってきた僕
4駅目 応援したくなってきた僕

気がついたら、心の中で、(がんばれ!)と応援していた。
確かに日本語は間違っているし
車内アナウンスはグダグダだったけれど
それが何だって言うんだ。
そこに、あたふたしていた20代の僕を見た気がした。

電車を降りる時、最後尾の車両を確認した。
思わず敬礼しそうになって、やめた。

みんな、必死に自分の仕事をしているんだ。
「頑張ろうぜ!」

敬愛するさぼ姉さんが、笑いすぎて腹がよじれるような電車ネタを書いているので、僕の実力は、彼女の足もとにも及びませんが、
(あ、そう言えば、俺も先週、電車ネタあったな!)ということで、予定を変更して書いてみました。

(さあ、源ちゃん、書いてみ)さぼさんの声が聞こえた気がした…。


最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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