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小さい秋みつけた

 サトウハチローさんが作詞した童謡「小さい秋みつけた」の挿絵です。

 心地よいリズムで、何気に口ずさんでいたのですけれど。 

 ハチローさんは幼い頃、わき腹に大やけどを負い、その後遺症で体が不自由になり家にこもりがちで、大人になってからも、執筆の仕事は布団の上でうつ伏せでしていたとのことです。

 小学校へは母親のハルさんがハチローさんを負んぶして通い、キリスト教徒のハルさんは教会へもよく連れて行ってくれたそうです。ところが、父親で作家の佐藤紅緑が女優の三笠万里子と恋仲になり、ハルさんは、ハチローさんが14歳の時離婚し、ハチローさんを置いて故郷に帰ります。
 絶えず世話をしてくれた母、自分を置いて行った母…。思春期のハチロー少年の心を思うと、ヒリヒリと痛いです。母に対して屈折した思いも生まれたかもしれません…。ハチローさんが21歳の時、ハルさんは亡くなります。

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 一番 (~略~)
    めかくし鬼さん 手のなる方へ
    すましたお耳に かすかにしみた
    よんでる口笛 もずの声(~略~)

 二番 (〃)
    お部屋は北向き くもりのガラス
    うつろな目の色 とかしたミルク
    わずかなすきから 秋の風(〃)

 三番 (〃)
    むかしのむかしの 風見の鳥の 
    ぼやけたとさかに はぜの葉ひとつ
    はぜの葉あかくて 入り日色(〃)

 歌詞を読み直してみると、外で自由に遊べなかったハチロー少年が耳や目、肌を通じて感じた淋しい境遇が短い言葉で、音や気温、色として描きだされていて、それを「小さい秋」とすることで自身の淋しさを超え、多くの人が感じるような淋しさにつなげ、その上でさらに鮮やかな秋に仕立て上げているように思え、そこにこの人の強さを感じました。

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『真夜中の図書館』谷山浩子・著|ヤマハミュージックメディア 

 ちなみに、作家の佐藤愛子さんがハチローさんの父・佐藤紅緑と三笠万里子の娘さんだと知って、(読書家さんにはよく知られた話なのでしょうけど…)凄い家系だな…と思いました。

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