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『文豪×文庫』展のお知らせです2024.6.10~7.19/竹尾見本帖本店2F

装丁家さんやデザイナーさんとイラストレータ―で制作した文庫カバー、100点強を展示する企画展に参加します。
夏目漱石の『こころ』、林芙美子の『放浪記』、萩原朔太郎の『猫町』の
3作品のカバーをそれぞれの解釈で新たに作成しようというものです。

情報量が多い(笑)

私は、2点出品で
1つは『放浪記』をブックデザイナーの喜來詩織(デザイン事務所エントツ)さんと、もう1つ『こころ』を一人で(勝手に(笑))
制作しました。

2冊ともデザイナーさんにお願いしようと思いましたが、
自分の場合、『ギリギリまで引っ張ってしまう性格』でギリギリまで先延ばししてデザイナーさんに迷惑をかけそうな気がしたので1冊だけお願いすることにしたのです。

まずは、『放浪記』をどうしようかとzoomで喜來さんと打ち合わせをし、のらりくらりと進め喜來さんのデザインラフのおかげで、むくむくとイメージが湧いてきてどうにかなってきた頃に、MAYAさんで受賞者展がありズルズルと放置し続け、案の定『こころ』の方は手つかずのままどんどん期限が迫ってきました。

さて、『放浪記』は今回、初めて読みました。
舞台のイメージが強すぎて「面白くなさそう」という思い込みがあったのですが、舞台とは全くの別物でした。
「日記形式なのに時系列でなくて読みずらい」「芙美子が職や男を転々としすぎて…」などの評価がありますが、私は前後関係も気にならないしダメ男がいっぱいだし、芙美子の吐き出す「独特な言語表現」に引き込まれ、心の中で何度も「いいね!いいね!」しました。

『放浪記』の芙美子さんの原画です。

とにかく媚びない。
名言・名文だらけの(自分比)本で、これまで抱いていた勝手なイメージは覆りました。
私は一気に芙美子さんを好きになってしまったので、カッコイイ、媚びない、それでいて可愛い、弱きに優しい姉御肌の、自分なりの芙美子像を考えて喜來さんにカバーをデザインしてもらいました。

名言・名文がいっぱいで、書き出そうとすれば相当量あるので、そのうちの100分の1くらいを書いておきます。

「瞳が炎える。
誰も彼も憎い奴ばかりだ。
あゝ私は貞操のない女でござんす。一ツ裸踊りでもしてお目にかけましょ うか、お上品なお方達、へえ、てんでに眉をひそめて、星よ月よ花よか!」

「富士山を見た
 赤い雪でも降らねば
 富士をいゝ山だと賞めるに当らない。
 あんな山なんかに負けてなるものか」

「男なんてくだらない!
蹴散らして、蹈たくってやりたい怒に燃えて、ウイスキーも日本酒もちゃんぽんに呑み散らした、私の情けない姿が、こうして静かに雨の音を聞きながら、床の中にいると、いじらしく、憂鬱に浮かんで来る。今頃は、風でいっぱいふくらんだ蚊帳の中で、あの女優の首を抱えているであろう……と思うと、飛行船に乗って、バクレツダンを投げてやりたい気持ちだ。」

手元に置いておきたい本になりました。

会期が長いので、思い出したらブラーっと立ち寄ってみてください。

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