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たまたま似たテーマ

伊藤比呂美『伊藤比呂美の歎異抄』、吉本ばなな『キッチン』読了。

『歎異抄』と『キッチン』を並べるなんて変な話だ。でも、伊藤比呂美『伊藤比呂美の歎異抄』と吉本ばなな『キッチン』は、どちらもちょっとだけ身近な人の死をテーマにしている。

だからなんだということでもない。テーマが似ていたのはたまたま。私にとって少し年上と少し年下の作家を気が向いて読んだに過ぎない。これもなにかの巡り合わせだろう。そんなことをいったら昨日観ていた韓国ドラマ『涙の女王』だって、ある意味、人と人が出会うこと分かれることをテーマにしていると言える。

https://www.netflix.com/jp/title/81707950

伊藤比呂美を読んだのは、『読み解き「般若心経」』が面白くて何回か読んでいるし、古典訳の『日本霊異記』も読もうと買ってあるから。つまり好きな作家なのだ。初期の詩集『青梅』も面白かったが、あの頃はずいぶんととがっていたことを思うと、古典訳などをする最近は、ずいぶんと丸くなったのかもという印象も受ける。

いずれにせよ、言葉が大事なことは変わりなく、そこは詩人としての面目躍如ということなんだろうなと読んでいていつもそう思う。

一方の吉本ばななは、実は私はちょっと苦手で、かなり前に「みんながよいと言うから」という極めて薄弱な理由で十冊ほど、結構、我慢して読んだのだけど、それで私の中では「もういいかな」となってしまった作家だ。今回、再読したのも魔が差したに近い。

私の中での吉本ばななの評価が高くないのは、作風や言葉使いが好きになれないということもあるのだけけれど、それ以上にどこか似ているタイプの知人がいて、苦手でなのかもしれない。自己完結型空回りな印象ばかりを感じてなじめないので。

もちろん、そんな感想のもろもろは、あくまでも人それぞれだし、吉本ばななが、あの頃、あれだけ売れたのには、きっときちんとした理由があるのだろうと思う。私が苦手だということも、もちろん作家のせいではもなく、あくまでもごくごく私的な感想だ。

それに、身も蓋もないことをいえば、売れ方からいえば、伊藤比呂美と吉本ばななでは、吉本ばななの圧勝なのだ。

だから、あえて、なんで『キッチン』は売れたのかをぼんやり考えるのもいいのかもしれない。本当は嫌だけど。

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