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一句鑑賞

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所属する結社誌で発表した句の鑑賞文。
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2022年4月の記事一覧

鑑賞*行く春や古書街裏の珈琲店

高野馬齢 神田の古書街は学生街でもある。 心躍らせて始まった学生生活も五月になって生活の…

岡田耕
2年前
85

鑑賞*引つ張れば引つ張り返す凧の糸

霜田秀子 海風にまかせて凧糸を伸ばすと、凧は松林を越えて国道を越えた。 姿は遠く小さくな…

岡田耕
2年前
70

鑑賞*木の芽和しづかな夜のはじまりぬ

辻前 玲子 筍を剥く、茹でる、山椒の葉を千切る、擂鉢で擂る、具材に味噌などの調味料を混ぜ…

岡田耕
2年前
67

鑑賞*なんとなくプラス思考の春の宵

山口 香葉              「黄帝内経」という中国の最古の医学書に季節が身体に…

岡田耕
2年前
78

鑑賞*ふくふくと赤子の肌着春の昼

佐野 聰          ゆったりと柔らかな肌着の中に埋もれるようにいる新生児。 着て…

岡田耕
2年前
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鑑賞*旧近衛師団跡なり諸葛菜

赤津義彦 近衛師団と諸葛菜。 時代も国も違えど日本と中国のエリート軍団たちの名の取合せ。 …

岡田耕
2年前
78

鑑賞*春ともし薩摩切子にブランデー

長谷川信之 グラスには、幕末に薩長に対する幕府側についたフランス生まれのブランデー。 当時の薩摩切子にこんな組み合わせがあったろうか。 春燈の下でブランデーの琥珀色がグラスに滲む。 百五十年を経て実現した色の融合と文化の融合。 (岡田 耕) (俳句雑誌『風友』平成二十七年九月号)

鑑賞*4Bの鉛筆削る日永かな

山口香葉 屋外でスケッチやデッサンをしている穏やかな一日を想う。 それは4Bであるからこ…

岡田耕
2年前
78

鑑賞*足裏まで三毛の三毛猫日の永し 

いそむら菊 冬の間は忙しく過ぎていった昼間の時間が、春になって少し長くなり、周りのものを…

岡田耕
2年前
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鑑賞*ひこばえや主峰につづく里の山

佐野 聰 大樹の根元から萌え出る小さな若葉。 高い山の裾に連坦する里の山。 大樹と蘖、主…

岡田耕
2年前
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