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160億年に一秒しかズレない時計は何に使うのか

はじめに

ここでは時計の歴史から最新の時計について、簡単にまとめていきたいと思います。
この後出てきますが、光の格子時計について知る機会があり、時計について調べたことを記録しようと思いました。
今までどんな時計があったのか、これから時計はどんなことに使用されているのかを書いていきます。

時計の歴史

最古の時計

時計の始まりは、農業です。いつ種をまき、いつ収穫すればよいのか、どうしたら豊作になるのか、この判断をするために時間を知る必要がありました。今でも、何月に種をまくと何月には収穫できるのかを判断しています。
これが約4000年前の紀元前3500年頃のことです。
このころに考えられた時計が「日時計」です。これは公園などで見たことある人も多いのではないでしょうか?影を利用した時計です。
これと同時に1時間を60分とするような、60進法やカレンダーで使用される暦の概念も確立されました。
しかし、日時計には晴れているときの屋外でしか使用できないという欠点があり、これを克服するために、「水時計」が使用されるようになりました。

水時計

水時計は紀元前1400年頃から使用され、水がたまる速度で時間を計っていました。水時計もとても役に立ち広く使用されていましたが、寒いと凍ってしまったり、蒸発して、正しい時間がれ計れなくなるなどの欠点もありました。

様々な時計

水時計のほかに、蝋燭などを使用した火時計、線香を利用した香時計、砂を利用した砂時計など簡単なつくりの時計が使用されてきました。
こののち8世紀ごろに機械式時計が発明されました。

機械式時計

機械式時計は主に歯車を使用する時計です。ただ、現代までに多岐にわたる変化をしてきています。
機械式時計の基本要素として、「動力源」「調速機」「脱進機」があげられます。これらを工夫し続けることで時計は進化してきました。
発明された当初は50秒に1秒の誤差が出るような時計でした。
その後徐々に精度が向上していき、20世紀になるまで、8時間に1秒の誤差が生じる時計がほとんどでした。

最新の時計

現在の時計は、機械式時計を基本に作られていますが、さまざまに変化してきました。水晶を用いたクオーツ時計、原子時計、光格子時計、アナログ時計、デジタル時計などその原理や表示方法で呼び方が変わります。
現在使用されている時計には3000万年に1秒の誤差が生じるセシウムの原子時計というものがあります。
最先端のものでは東京大学で研究された光格子時計といい、こちらは160億年に1秒しか狂わないといわれています。
人の人生は100年しかないのに何に使うのか、と思いますよね(笑)
もちろんしっかり、使い道はあります。3000万年に1秒狂うということは、一日で0.0000….1秒という単位で毎日ズレていることになります。この誤差の影響を受けるものがあるのです。
簡単に時計の歴史について触れてきました。
ここからはもう少し詳しくまとめていきたいと思います。

時計の仕組み

時計は「動力源」「調速機」「脱進機」が主な構成になっているということは先ほど触れました。それぞれについて簡単に説明していきましょう。

動力

機械式時計には手巻き式と自動巻き式があります。もちろん近年の時計には、電気や太陽光などがあります。クオーツ式時計は電力を使用するため、電池を使用するもの、発電するものもあります。

調速機

調速機は回転の速度を一定に保つために使用されます。振り子をイメージするといいと思います。振り子は左右に振れる速度が一緒ですよね。このように、一定の速度で動かすということが調速機の役目になります。

脱進機

脱進機は調速機と組み合わせて使用され、この組み合わせたものをまとめて脱進機と呼ぶこともあります。
調速機は一定の速度を保ちますが、振り子同様、力が加わらないと減速していきます。この力を一定に加え続けるものが脱進機です。


世界三大複雑機構

時計には実用性や機能性を高めるためのメカニズムがたくさんあります。そのなかでも最高峰の技術とされているものがあります。それが世界三大複雑機構と呼ばれている、「トゥールビヨン」「永久カレンダー」「ミニッツリピーター」です。これらは機械式時計としてっ開発され、現在では数百万円から数千万円中には億を超えるものもあります。
デジタル時計などでは必要なくなった、トゥールビヨンや永久カレンダーですが、機械式で実現するためのその機構が複雑なため、時計マニアの中ではとても人気です。

トゥールビヨン

トゥールビヨンは複雑機構の中でも、もっとも製造が難しいとされ、構成するパーツが多く精巧さが求められるため、熟練したメーカーでしか作成できません。
トゥールビヨンは、時計の部品に対する重力の影響を均一にし、精度を維持する機構です。重力の影響は腕時計の向きに影響を受け、着用者の姿勢によって精度が異なります。これが姿勢差といいますが、トゥールビヨンはこの姿勢差を最小限に抑えます。

永久カレンダー

皆さんご存じの通り1か月が30日の月もあれば31日の月、28日の月もあります。また、うるう年の影響も考慮しなければなりません。通常の時計では自分で1日進めたりなど調整が必要です。永久カレンダーはその名の通り、この調整の必要がなく、ゼンマイが巻き上がっていれば正確に日程を表示してくれます。ちなみにうるう年のための歯車がありこれは4年に1度しか動きません。また、この永久カレンダーはユリウス暦を採用しており、現代のグレゴリウス暦とのずれがあり、2100年に1回は調整する必要があります。

ミニッツリピーター

ミニッツリピーターは最も歴史の古い機構で、音で時刻を知らせる機構です。ボタンやレバーを操作することで、ミニッツリピーターが駆動し、異なる二つの音色を奏でます。この音の組み合わせで何時何分かを知らせます。

今までの時計

現在主要に使用されている、最も高精度な時計はセシウムを使用した原子時計です。セシウム原子時計と水素メーザ原子時計を組み合わせ標準時を測定していました。

これからの時計

現在技術開発が進められ、標準時測定に使用されている時計がストロンチウム光格子時計です。これは10億年から300億年に一度ズレるといわれており現在最も優れている時計です。地球ができてから1秒もずれないという途方もない精度を誇っています。

ここまでの精度は必要なのか

正直、3000万年に1秒とか100億年に1秒とかどちらでも、時計として使用する分には、違いなんてわかりません。この時計は何に使用するのでしょうか?

ネットワーク業界への利用

皆さんが多用しているインターネットにはこの時計の精度が重要なの知っていましたか?
インターネットについて簡単に説明すると、データはインターネットを通じて移動するときに、パケットといわれる単位に分割します。分割された後のパケットはその順序やタイミングを正確に管理しなければいけません。例えばYouTubeなどの動画視聴をしている際に、もしこの管理がうまくいかないと映像が欠落したり、何が映っているかわからなってしまいます。パケットには、このタイミングや順序を管理するために、時刻のデータがふくまれることがあります。
この、パケットの分割サイズは人が認識できないほど小さいため、一日に1秒もずれる時計では1分の動画を見るのに何時間かかるんだという話になってしまいます。
遠距離に通信する場合、この時間の計測の正確性が直接影響します。そのため、数千万年、数億年に1秒の誤差しか生まれないという精度の時計が重要なのです。

参考

時計進化年表
光の格子時計
光格子時計ネットワーク


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