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動かされた心 動かす身体

感動はとても刹那的。

その瞬間は心を動かされるが、時が経てば「感動した」という経験しか残らない。そこからもう一歩。動かされた心から動かす身体へ。

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『ジョジョ・ラビット』という映画を観た。舞台は第二次世界大戦下のドイツ。ナチスへの忠誠心を持つ10歳のドイツ人少年、ジョジョ。彼の空想上の友だち、アドルフ。そして、ジョジョの家の隠し扉の中にいたユダヤ人少女、エルサ。知的で聡明なエルサと言葉を交わしていくうちに、ジョジョは彼女に惹かれていく。

映画には、反ナチ運動をおこなった人びとが描かれている。ジョジョの母もその一人。人種に「優劣」をつけるナチスの教え。その教えに背けば、殺される。そんな異常な状況でも、自分にできることをおこなう活動家たち。もしこの時代の、この国に生まれていたら。もし迫害を受ける立場であれば。まったく想像がつかない、つくはずもない。さまざまな想いが身体をめぐる。

3年前、カンボジアのトゥール・スレンのドキュメンタリー映画を観た。元看守と収容者が政治犯収容所「S21」の跡地に集まり、当時の状況を粛々と再現する。後悔では済まされない現実が映像から伝わった。

それから半年後、カンボジアへ渡った。実際のS21は映画の中よりも静かで、喉を締めつけられるような感覚だった。拷問器具や人骨、残された血の跡。そして、名前を奪われた収容者らの写真。一人ひとり顔は違うが、まったく同じ表情をしていた。そこには映画では感じ取れない「訴え」があった。

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心が動かされることはたくさんある。ただ、その感覚を経験だけでは終わらせたくない。そこから一歩踏み出す。その一歩が自分の身体へ落とし込まれる。

あらためて、いまの時代に目を向けた。同時に身体を動かしたくなった。感動したくて映画を観たわけではない。他人を動かしたいわけではない。世界を変えてやろうなんてもってのほか。ただ、小さいことを、小さくはじめればいい。『アンネの日記』を読むのもいい。チャップリンの『独裁者』を観るのもいい。なんだっていい。

それが、動かされた心から動かす身体。

Jojo and his mother are watching the hanged bodies.
He asks her what they did.  She replies quietly.
"What they could."


#未来のためにできること

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