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100人いたら100通りの子育て取材 №.15大石政代さん

今回は2020年の師走の時期に取材を受けて下さった大石政代さんです。政代さんは昨年、陶芸工房「陶の杜」を構え、陶芸作家として活躍されています。昨年は個展等を通して、多くの人の目に手に触れる機会があり、私も政代さんの作品に魅せられて素敵なお皿を注文した一人です。ご自身のお子さんと一緒に作られたという器を日常使う食器として食卓に普通に使っている生活や、お子さん達とお料理したり、遊びなども一緒に楽しんでいる姿など、ご自身のお仕事も大切にされながら、子ども達との時間を大切にする政代さんの子育てについて伺いました。

この企画は北海道帯広市を中心に活動をしているおかあさんのがっこうの『魅力プロジェクト』と題し、100人のお母さんに子育ての取材をする企画です。おかあさんのがっこうの活動詳細については以下をご覧ください。


政代さんには中学3年生の長女、6年生の長男、小学3年生の次女、3歳の三女の4人のお子さんがいらっしゃいます。それぞれのお子さん達の個性などをお聞きしました。


上の二人のお子さんは繊細さがあって、大勢の集団よりは少人数の場所が向いており、次女は身体を動かすことが好きで今は鉄棒にはまっており、様々な技にチャレンジをしたりと、大人数の学校のなかで刺激を受けているとのことで、兄弟4人それぞれ違うよねと話してくださいます。
そんなお子さん達と向き合う時に大切にしていることは何ですか?と伺いました。


「自己決定できることです。自分で決めて歩みだすように、それを待ってあげるしかないんですよね」
長女が小さい時に、下の子が産まれて赤ちゃん返りが始まり、それまで歩けていた長女が急に歩けなくなり、二カ月間歩かなかったエピソードを話してくださいました。
「3さいのたんじょうびにあるくから」と小さな長女が宣言し、お父さんの手につかまって一歩づつまた歩けるようになったそうで、子どもと向き合う時に、待ってあげるその姿勢はとても大切なことだと感じました。

夕食後の子ども達との時間を大切に過ごしているという政代さん。台所の片づけは後回しにして、トランプをしたり、大縄跳びをして遊んだり、カフェタイムの時間にしたり、そんな風に過ごす心のゆとりをどうやって生み出しているのか伺いました。


「今、何が大事だろう?って考えるかな。茶碗洗いより、今は子どもとの時間が大切だって思うから。子どもの時ってあっという間に過ぎていってしまうから、今を大切にしたいんです」

時間の大切さをひしひしと感じたのは政代さんが30歳の時に、お父さんを亡くされた経験があったからといいます。この先もずっと元気でいて、孫を抱いてもらったりと元気に老いていく未来を想像していたのが、急にそれが叶わなくなり、時間の大切さを感じたと言います。
「たたまないといけない洗濯の山はあるけれど、洗濯物をたたんでいるより、子どもとの時間を大切にしようって思っているんです」

政代さんのお仕事には陶芸家の他に、性(生)教育のお話し会や子育て相談・不登校相談をする「まある~布と土と心のばんそうこう」があります。
そのお仕事を始めるきっかけをお聴きしました。

「きっかけは娘の不登校でした。ふと娘の顔を見ると、笑顔が全くなくて。その時にハッとして、この子の笑顔を取り戻したいって思いました。学校に行くのが当たり前と思って、100%現状を受け入れ切れず、私自身も苦しかったんですが、そんな自分も全部受け止めたら、楽になりました。」


学校に行けない時間をお母さんと一緒に大切に過ごそうと話して、娘さんが絵を描くのが好きだったので、パステルシャインアートの先生に教わりながら絵を描いていくうちにすこしずつ元気を取り戻したといいます。
そして、ある時「お母さんのこと大好きだけど、自分のことも大好きだよ。」と話し、
「私、自分で決めて生まれてきたんだよね?」と話してきた娘さんに、「学校へ行く、行かないも自分で決めていいんだよ。どんな選択をしてもお母さんはあなたの味方でいるよ」と伝え、その後、学校に行き始めたのだそうです。


この一連の出来事を振り返った時に、これが性(生)教育の原点だと感じたといいます。
自分のことが大好きと、自己肯定感をもち、自分で行く、行かないを決める自己決定をする、その土台をしっかりと作っていくのは親や周りの大人の愛しかないといいます。
「あなたのことが大好きだよ」とたくさん愛を伝えていく。それは子どもがお腹に宿った時から出来ることなんですよと政代さんは言います。どの学年になったから、性(生)教育を伝えるのではなくて、妊娠中から伝えていく。その性(生)教育の原点を伝えていくこと、自分の経験も交えて伝えていくことが使命ではないかと感じて、このお仕事を始められたそうです。


娘さんの出来事を経験してから、その子の「今」を見て、どうしたらよいのかを考えているといいます。政代さんが子ども達を捉える目には目で見えているものだけではなく、その子が抱えている見えない感情も拾いながら、何が「今」大切なのかを捉えて、子どもとの時間を大切にされていることが伺えました。

そして、土には人の気持ちを引き受けてくれる力があるといいます。
まだ、子どもが小さかった頃も、陶芸教室の先生と色んな話をしながら、土に触れ、心の安定剤になっていたそうです。
性(生)教育も陶芸も政代さんの中では全て繋がっていると言います。
土に触れながら、心を癒し、話したいときに想いを話して、カウンセリング的要素もあり、これからは土に触れることを通してそんなことをやっていきたいと話してくださいました。

「陶芸をしているのは自分の為でもあるんですよ。大人が楽しんでいる姿を子ども達にみてもらいたい。自分が楽しんで生きている姿を見て、子ども達も生きるっていいなって思ってもらえたらいいなって思うんです。」

政代さんが子ども達に手作りでおやつを作っていたことが、今は長女が作ってくれ、とても上手に作っているそうです。
「好きなものを見つけるきっかけは大人の役目かなって思います。なるべく、やってみたいと言ったものはやらせてあげれるように、やってみたいって思えるようなきっかけを作るのは大人の役割だなって思って。」


子どもさんがラーメンが好きで、好き過ぎて自分でスープを取るところから自分で作ってみたいと言い、ラーメンを作ったエピソードを話してくださいました。
ラーメンを作った翌日に残ったスープを食べてみると、さらに美味しくなっていて、次に作る時には前々日から仕込もうということに子どもが気付いて、次に繋がっていることを教えてくださいました。

最後に若いお母さんや、これからお母さんになる方へ何かメッセージはありますか?と伺いました。
「一人で子育てしないで、仲間をつくって助け合えることって大切ですね。本当の自立は困った時に助けてと言えることだって本で読んだことがあります。私も大変だった時にお友達にいっぱい助けられました。あと、お母さんが笑顔でいることが大事ですよね。4人目の子を産んだ産科の医師が退院時にかけてくれた言葉に『お母さんではあるけれど、自分の人生も大事にしてね』って言ってくれたんです。お母さんって自分を犠牲にしてしまいがちですが、一人の人間として自分自身も大切にしてあげることが必要ですよね。」

子どもとのかけがえのない時間を大切にし、親や周りの大人が愛を伝えていき、子ども達に愛が浸み込んで、それが生きる土台を造る。楽しんで活き活きと生きる大人の姿を子ども達に見せていくことで、生きることの素晴らしさが子ども達に自然に伝わっていく。


何が正解か分からないのが子育てではありますが、政代さんが自分の経験から伝えてくれたことの中に沢山のヒントがありました。一人の人間を育て上げていくという、壮大なプロジェクト。悩みながら、子どもに導かれながら、親も一歩づつ一歩づつ成長していくのですね。
政代さん、お忙しい中、お時間を作っていただき、貴重なお話を聴かせていただきありがとうございました。

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大石政代さん プロフィール
北海道十勝管内出身  (元)養護教諭  陶芸家、性教育のお話し会、子育て相談、不登校相談など「まある」主宰、一男三女の四人のお子さんとご主人の6人家族

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