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お墓へ草取り

 砂利だった駐車場は、きれいにアスファルト舗装されていた。
車から外に出ると、アスファルトの匂いが強く感じた。比較的
最近舗装工事をしたのだろう。
 昨年閉店した花屋は、建物ごと無くなって更地になっていた。
隣に残っているもう一軒の花屋の中に百合の花が見えた。店は
訪れるかどうか分からない客を静かに待っていた。母の日は過ぎ
さり、多くの人が店に来るのは、お盆まではないだろうか。
 昔からの付き合いということで、無くなった方の花屋で花を
買っていた。最後にあの花屋に行ったのは、2年前の2日前、
琵琶湖の畔で園児らの列に車が飛び込んだ交通事故があった日だ。
 
 墓にはつる草が繁茂していた。隣の墓にはイネ科の草がよく
伸びていた。すぐ隣だが植生が違う。
 花は供えないから墓参りではない、というのが私の定義だ。
墓石を拭くわけでもないので墓掃除でもない。やはりただの
墓の草取りだ。
 駐車場では風は吹いていないように感じたが、ここは結構
強い風が吹いていた。尾根上に位置し、風上の東西に丘がある
から風が集まる形だ。ナントカおろしのミニチュア版だ。
 風防がなければロウソクの火はすぐに消えてしまう。プラス
チックの筒に穴を開けて針金を通し、石灯篭本体に巻きつけて
いる。台風などで強風が吹いた時に、簡単にどこかへ飛んでい
ってしまうからだ。プラスチックの筒の正体は、ダイソーで
買った箸立ての胴体だ。強い日光にさらされて濁り、透明度は
落ちていた。時々交換する必要がありそうだ。
 風防があっても、ロウソクの背が高いうちは風で何度も火が
消えた。線香束は、強い風が吹く度に炎を出して燃え上がって
いた。
 カラスの鳴き声が聞こえた。お盆じゃないからホオズキは
ないが、なにかと食べるものには事欠かないのだろう。
 目の前を着陸態勢に入った飛行機が、ゆっくりと横切って
いった。

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