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水【インタビュー#4】『私の大切な言葉』 vol.1・4by 菊川天照さん


今回は、『私の大切な言葉』vol.1・4です。

この企画の最終回となります!

第4回目のゲストは、菊川天照(きくがわ てんしょう)さん。

菊川さんは、筆者の大学時代の先輩で、学部と院では、洋画研究室に所属されていました。現在 教員をされています。いつも周りの人を笑わせてくれる、とても楽しいそんな菊川さんは、大学時代からコンビでお笑いもされていました。

いつでも楽しく面白い菊川さんの「大切な言葉」とは?

「言葉」を意識しはじめた幼少期のお話や「言葉の仕入れ方」、また「言葉のもつ危険性」などいろんな視点からお話ししていただきました。

さぁ、菊川さんの「私の大切な言葉」を聞きに行こう! 


_____________________________________


________今回のテーマは「言葉」ですが、普段から言葉には敏感ですか?

あ〜〜〜…言葉、言葉はね。ものすっっっっっっっごい、敏感。超敏感。


________超敏感。

こうやって喋ってるけど、やっぱ言葉選びに対しては、すごいシビアに考えてますね。こんな真面目な感じでいいですか?(笑)



_______いいですよ(笑)。いつもの感じで。

自分が喋る言葉選びもそうだし僕以外の他人が喋ってる言葉選びとか、ワードセンスなりっていうのは、すごく敏感に受け取ってますね。言葉の受注発注は、どっちも気を使ってます、意外と。



_______なるほど。でも、それはやっぱりお笑いをされているからですか?

人を笑わせる時もそうですよね。例えばツッコミで『何だよお前、それが仕事かよ!』ってこうね、突っ込む時も、『仕事かよ!』って突っ込む場合と、その「仕事」って言葉を細分化できるんですよね、実は。「副職」とか「本業」とか。「仕事」でも言葉を解体できる。だから、一回言葉を解体するっていう作業は必要かなって。

だから「仕事」っていう言葉でも、「副職ですよ」とか、「本業ですよ」とか、「パートですよ」「アルバイトですよ」。で、その言葉を解体した中で、その場でTPOに一番合った言葉ってどれなんだって。だから、『仕事かよ!』っていうのか、『副職かよ!』っていうのか、『お前それパートかよ!』っていうのか。

…っていう、ちょっとした違いはありますね。言葉選び。同じ言葉でも、音が違うければ、なんかちょっと聞こえは違うのかなっていう。



________確かに。なるほど。

そうなんですよ。言葉って面白いんですよ。だから、もっともっと勉強しなきゃいけないんですけどね。



________超敏感、なんですね。

ちょっと気になってしまうんですよね。あるとき某知り合いの論文をみた時に、その人には言ったんだけど、その人は論文でアンケート調査をやってて。で、職業の欄のところに「ほぼ主婦」って書いてる人がいて。



________(大爆笑)。

「ほぼ主婦」!?「ほぼ」って何だ、みたいな(笑)。主婦は、主婦じゃん。「ほぼ」って何? 時たまなんか変身すんのかな?みたいな。時たま私働いてますみたいな。その「ほぼ」が気になるんだよね。

だから、そういうちょっとした「意外」の。「ほぼ主婦」って、どう答えたんだ。ちょっと見栄を張ったのかね。主婦は主婦で立派じゃんみたいな(笑) 。「ほぼ主婦」。じゃあ、主婦じゃねーじゃんって(笑)。働いてるんでしょみたいな。そういう、ちょっとしたところは敏感ですね。

うん、言葉ね。だから国分寺駅のさ……あ、ごめんごめん!めちゃめちゃ喋るわ(笑)。国分寺駅のさ、南口の方に新しく張り紙が貼ってあって。写真撮ったかなこれ。



________(言葉を)拾ったりするんですか?

え、拾う拾う。俺めっちゃカメラロールに拾ってるやつある、言葉を。そういうのが趣味って訳でもないけど、なんか自然と撮ってる。(写真を見せながら)「鳩の落とし物(フン)にご注意ください」

ってさ、「鳩の落とし物、かっこ(フン)にご注意ください」って書いてあんの。これさ、落とし物に変えたのはいいけど、かっこ(フン)にするんだったらさ、もういらなくね落とし物のくだり。はははは(笑)。

こういう、だから言葉選びではないけど、その言葉の並びとか、こういう風に「落とし物」っていう言葉を選んだんだけど、結局「フン」っていう保険を…(笑)。



_______でも、だから面白くなってるんですよね(笑)。

そう、だから面白くなってるんだけど(笑)。そういうの、すっごい気になる。で、ここ、ここ!ここも国分寺駅の南口だよ。(写真を見せながら)すっごい紳士服、なんか婦人服の品のあるところだったんだけど。コロナの影響だろうね。「やけくそ価格」って書いてんの。しかも、ポップな色で。

これ、「やけくそ価格」って書いてる時どんな気持ちだったんだろう、とかね。あと隣見たらさ、「またまたやけくそです」って書いてあんの。もう「価格」なくなってるし。「またまた」ってこれ二回目なんだよ多分。二、三回目なんだよ、またまたやけくそってことは(笑)。これを手書きでさ、やけくそ「です」だから。

「やけくそ」と「です」って、意外と合うんだな、そこ。丁寧な言葉と「やけくそ」って意外と合わせると面白い。「やけくそです」。丁寧だけど、言葉はちょっと荒らい。

そう、今、岡本さんに『言葉に敏感ですか』って言われて思い出した、意外と。それをね、使ったりしてるだろうしね。言葉ね、面白いですよね。



_______なるほど。ではさっそく、【あなたの大切にしている言葉】は何ですか?

大切にしている言葉…。それは、印象を受けた言葉とか。



_______印象深く、自分の中でずっと残っている言葉。

こんなこと言ってるけど、すぐ抜けていくからな。なんかあるかな。いくつかばーっと出てきたけど、とりあえずじゃあ、いくつか言ってそこでいいやつ拾ってください。

まずー、漫画家。漫画とかって結構、言葉が多いじゃないですか。絵の素晴らしさもあるけど、言葉の素晴らしさっていうか。そこで僕「あしたのジョー」がすっごい好きなんですけど。「あしたのジョー」で(検索しながら)調べたら出てきました。

「あしたのジョー」で、主人公の矢吹ジョーの言葉は、今でも結構残ってます。それが、なんだろうな、シーン的には、ジョーってもう、ボクシング一本でやってるわけ。でもジョーは、年齢的にはもう遊びたい年齢なはずなわけよ。

で、ジョーのことを好いとる、好きな女の子が、その周りの同年代の人たちはいっぱい遊んだりしてるのに、矢吹くんは遊んだりしないの、寂しくないの?っていったら、その「燃え尽きたいんだ、俺は」って。今、調べたら出てきたんだけど。


________『燃え尽きたいんだ、俺は。』

そうそう。『そこいらの連中みたいに、ぶすぶすとくすぐりながら不完全燃焼しているんじゃない。ほんの瞬間にせよ、眩しいほど真っ赤に燃え上がるんだ。』っていうね。『そして、後は真っ白な灰だけが残る。燃えかすなんか残りやしない、真っ白な灰だけだ。』っていうね。これがね、すごくいいんですよ。


その最後に残されるのは、真っ白な灰だけだっていうのは、その、短い瞬間にせよ燃え尽きる、一つのことに燃え尽きたいっていう、そのジョーの気持ち。遊ぶとかじゃなくて、僕はボクシング、健闘を通じて燃え尽きたいんだ、って、輝きたいんだっていう、その矢吹くんのこのセリフは刺さりましたね、当時。俺もなんか燃え尽きようって。


________それは、いつ読まれたんですか?

これ、だいぶ前だよ。でも、だいぶ小学校の時には読んでたんだけど、この言葉が響いたのは追々。読み返してる時に、あ、これは…って。矢吹ジョー関連でいうと、矢吹ジョーの作者に会ったことがあるの、ちばてつやさんに。中学生くらいの時に。

あの、俺、すっごい好きだったから。熊本のちっちゃい美術館で会ったんだけど、会ってサインしてくださいって言ってサインする時に、普通は”ちばてつや”だけなんだけど、俺がお願いして『”あしたの天照(てんしょう)”って書いて、”あしたの天照、ちばてつや”でお願いします』って言ったら、『天照(てんしょう)って言うんだね。』って。

”天”に”照らす”だから、『あなたが行くところ行くところが、周りが明るくなるような人になってくださいね』って、言われた言葉は残って….。あ、俺が行くところは明るくした方がいいのかなって。名前に持ってかれてるんだけど。(笑)それは、なんとな〜く、俺がいる空間はせめて明るい空間でありたいなっていうのを。

…話してくると、出てきますね言葉って。さっき数分前まで、全く。なんかあったっけって。そうだね。「灰」で言うと、俺メモったんだよな。これは最近、拾った言葉って言うか、残った言葉。YouTubeで三浦じゅんが講義してる動画があがってて。それを最近見て、クリーンヒットした。



_______どんな言葉ですか?

その、何だろう。『”みんな将来何になりたいですか”とか、”俺、将来何になんのかな”とかじゃなくて、みんな最後は”灰”になんだよ。だから、何になりたい、将来何になりたいとかじゃなくて、結局はみんな灰になるんだよ。無から始まって、無に終わることなんだから、別に怖いことはないじゃん。』って、三浦じゅんが言ってたね。

確かに、何もないとこから始まって何もないとこで灰になって終わるんだから、ま、これジョーと被ってるけど、真っ白な灰になって終わるんだから、結局は灰なんだから、なんになりたいとかこうしようとかこうしたいとか、そんなのとか、結局みんな灰になるし、こんがりみんな焼かれるんだから、無で終わるんだから、そんな悩むこともないしやりたいように、そんな深く考えることもないなーっていう。

俺は汲み取ったけどね、三浦じゅんのその言葉を。ああ、確かになっていう。無から始まって無に終わるんだから、別に怖がることはないんじゃない?って。だからそう考えたら、何も怖くない。



______確かに。その言葉は、私も今ありがたいと思いました。

ありがとうございます(笑)。俺の言葉じゃないですけど(笑)。俺の言い方とかもあるからね(笑)。まぁクリーンヒットする人はね、まだ心に余裕があんのかなとは思うけどね。余裕がない人は、あんま言葉が入ってこないかもしれない。

あとあるかな…、谷川俊太郎でもあるわ。言葉ってすごいね、言葉って使い始めるといっぱい出てくるんだね、今雪崩のように言葉が。



_______ははは(笑)。それは、どんな言葉ですか?

何だろうな、昔読んだ本で。今手元にないから、何の本か忘れちゃったけど。谷川俊太郎が、からだを説明してる本があったの。頭とか眉毛とか。そこで一番残ってるのは、「おなか」。辞典みたいになってんのそれが、確か。

「おなか」って書いてあって、おなかの説明がしてあるんだけど、谷川俊太郎の「おなか」の説明が、『うんちのおうち』だったの。うんちの「家」だって。それを見た時に、あぁそういう見方もあんのかって、そういう発想あんのかって。

おなかはおなかだったけど、うんちが暮らしてるおうちだっていう発想が、俺にはなかったから。そういう見方を変えるだけで、おなかっていう言葉でも、うんちが暮らしてるとこなんだとかね。その見方を変えるっていう部分で、やっぱり谷川さんの衝撃は。

何の本か忘れたけど、それだけなんか残ってる。それで、見方を変えるだけでこんなに面白いんだっていうのは思いましたね。だから、見方を変えるような言葉を提示できたらいいなって思いますけどね、僕は。


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_______これまでたくさん言葉を出してくれましたが、「言葉」を得て、何か気持ちや考えなどの変化はありますか?

考えの変化…。ま、そうね。日本語でしか考えてないもんね。考えの変化。なんか俺たまに思うのは、日本語しか喋れないし、日本語でしか考えてないけど、夢の中でも日本語だけど、これって英語喋れる人とかフランス語喋れる人とか、いろんな言葉喋れる人ってどんな風に頭が働いてんのかな、どんな風に考えてんのかな、とか思うんだよね。

洋楽を聞いててもさ、洋楽の歌詞調べてもさ、絶対おんなじニュアンスじゃないわけじゃん。洋画の、洋楽の、その人たちの言葉、文化、英語だったら英語の文脈で伝わってくると思うんだけど、外人さんには。でも、日本語しか喋れないから、俺。日本語の中で考えてるけど、例えば、英語を喋れる人だったら、ちょっと英語の片足突っ込んでるからそういう考えの広がりもできんのかな、っていうのはたまに考えますね。

うん。だから言葉は確かに影響あると思う、考えの。でも俺、変わってんのかな。変わってんのかな。どうなんだろうね。


_______”面白いな”っていう、自分のメモ帳には入るんですかね。

引き出しはね、すごい増えてると思う。言葉によって。豆知識も増えるしね。



_______豆知識。例えばどんな言葉ですか?

「花向け」ってあるでしょ?誰かが、円満退社するとか、働き始めるとか。「じゃあ、花向けに」とかって。あれって、花を送ることじゃなくて、語源的には、誰かがその知り合いが次の場所に出発するために、むかし馬を用意して馬に乗って次の目的地に行くっていうのが当たり前じゃん。車じゃないんだから。その馬の、鼻。「鼻を目的地に向ける」っていう、鼻を向けるっていう。で、「花向け」っていう言葉ができたとか。

そういう言葉によって、知識も意外と。あと、話のネタにもなるしね。だから、変化はあると思うんだよね。あと、喋り方とかね。文章だけ、書き言葉だけ見たら喋り方って伝わらないけど。その、人と喋ったりする方が影響されたのかな、俺は。周りの人たちと喋ったりとか。

本は全然、「あしたのジョー」とか漫画意外は全然読んでなかったから。本の書かれている言葉によって影響されたとかは、あんまりないと思うけど。聞いたり、テレビで見たり、人と喋ったり、っていう「聞いた言葉」は、すごく影響受けてると思う。テレビとかね。もちろん、まっちゃん(松本人志)とかもめっちゃ影響受けてる。

松本人志が、昔テレビで、『キザなこというけど、俺は一番笑い声を聞いた耳でいたいんですよ』って言ったことがあるの。そういうの覚えてるけど。あ、じゃあ俺は、一番笑顔を見た目でいようと思ったその時(笑)。ほぼパロディだけど。はははは(笑)。っていう、影響はすごくある。

だから、その人柄とかもあるんだろうけどね。まっちゃんが喋ってたり、それがただの居酒屋の店主が喋ってるのは、影響力が違うし。こっちも勝手にフィルターかかってるから、同じ言葉でも誰が言ってるかっていうのも、何となく気にしてるのかなと思うけどね。居酒屋の店主が言ったほうが、響く言葉があるわけじゃん。



_______ですね。相性がありますね、言葉との。

うん。言葉…。うーん、ねぇ…影響。何だっけごめん、質問なんだっけ。



_______言葉と出会う時に、自分の中で変化は起こりますか。

あ〜。ちょっとした変化は。



_______でも。結構、「プラス」ですよね。面白い言葉に出会うとか。

あ、なんかね、アンテナを張ってるから。言葉に対して意外と。面白い言葉を見つけようってアンテナを張ってるから、面白い変化が起きてるんだと思う。プラスに。悲しい言葉っていうか悲しいアンテナは、全く俺、折ってるから。そのアンテナは。



_______どうして、できるんですか?

何でだろうね。やっぱり、面白くない。ってか、そのマイナスの気とかマイナスの言葉を自分が纏っても、自分が面白くないし纏いたくないんだよね、多分。悲しいオーラっていうか。だから、街中とかですごい機嫌が悪いおっさんとか、なんか店員に口うるさく言ってる人がいたら、俺離れるもん。

そういうオーラを、そういう気を自分が覆いたくない。キャッチしたくない。自然とその嗅覚が働いて、楽しい言葉とか良いなっていう言葉に気を使ってるから拾うのかな。でも、それってマイナスな言葉でも楽しく拾ってると思うんだよね。

だって、さっきの鳩のフン。見方によっちゃ、そんな「落とし物(フン)」とか。文としてはもうおかしいわけじゃん。でも、それをプラスに捉えてるんだよね。「やけくそ」って、言葉としてはあんまりプラスの言葉ではないけど。すごいなんかポップな色鉛筆で書いてるよとか。プラスの変化は多いかもしれない。それは多分、そうでいたいんだろうね。わかんないけど。



_______それは、ずっとそうだったんですか?

ずっとそう。うん、ずっとちっちゃい頃から。今ほど意識はしてないけど、言葉の速さとか、喋る速さとか、言葉選びとかっていうのは、小学校の時に。幼稚園までは意識したことなかったの。幼稚園の時に、お弁当の時とかに友達と喋って、友達が鼻から牛乳を出したことがあるの。俺が笑わせすぎて。

その、鼻から牛乳出たのを見て、すっごい俺がなんかハッピーになったの。人を笑わせて鼻から牛乳出させぞ俺はって。

で、幼稚園の時にそれがあったのと、小学校入学してすぐ、あのー、名前覚えてるけどD君、D君と同じ班になって小一の時に。D君がすっごいマシンガントークで、テンポ早くパパパパパパって喋って周りを笑わせてるのを見て、うわぁ…すごいなぁと思って。今までこんな感じで喋ってる友達と(出会ったことなくて)、D君は同じ幼稚園じゃなかったから、あぁD君すごいな〜って。

それが、ちょうど島田紳助さんをテレビで見たときの衝撃っていうか、島田紳助さんの喋りの感じと何となく似てたの、D君が。それを小学校の時に感じて。あ、こういう喋りの速さとか、こういう言葉選び、そん時は「言葉選び」とかっていう言葉を選んでないけど(笑)。言葉がなんかちょっと違うな〜この子は。とかっていうのは、小学校低学年で。この子が選んでくる言葉って違うなって。

で、やっぱり子供の言葉で大人を笑わせたい時って、俺が子供の時やったのは、「大人の言葉を使う」と大人って笑ってくれんのよ、子供の時って。そういうのがきっかけだったの。大人を笑わせる時って、子供が言わなそうな単語を選ぶと大人って笑ってくれるのよ。



_______たしかに。それは、感覚で?

(丁寧に)はい…。ああ、なるほどなるほど(って)。それは、親から言われてたもん。

『なんか天照が言うと面白いよね』とか、『天照なんでそんな言葉知ってんの?』とか『選んでくるの?』とかね。『天ちゃんなんでそんな言葉知ってるの?』とかって言われ続けてきたら、意識しちゃうじゃん(笑)、自然と。

あっ、そうなんだ、ここで笑ってんだってちっちゃいながらに思うと…うん、いつの間にか(笑)。だから、それが多分、笑わせるために言葉を選んだきっかけだから、笑わせるための言葉選びのアンテナしか張ってないんだと思う。入り口がそうだから(笑)。

そうだねぇ、だからマイナスな変化はあるかな…。俺は大体ネガティブになる時って、よくわからんところでネガティブになってるもんなぁ…。なんかネガティブな人って、俺は想像力豊かだと思うんだよね、ポジティブな人よりも。

だって、実際起きていることと全く違うことの、もう想像しまくって全く違うとこで悩んでるから。



________そうそうそう。すごい!

(笑)。すごい想像力豊かな人がネガティブなんだと思うんだよね。でもそれは…ひとつの長所でもあるよね?(笑)。



_______私はネガティブの方なので、物語をどんどんどんどん作っていって。それで、はぁ〜〜…って(笑)。

自分の中で作ってっちゃうんだ(笑)。でもそれって素晴らしいことで、それが、ね、マイナスになることもあるけど、プラスになることもあるわけで。

例えば、人に話す時だってこれって伝わってんのかな?とか、こういう喋り方で伝わるかな?とか、ネガティブの人は考えるけどポジティブな人ってバンバンバンバン喋っちゃう。でもネガティブな人って想像力豊かだから、ああここでこう言ったほうがいいのかな?とか。

だから、ネガティブな人が向いてる職業とかネガティブな人の方が喋り方がうまいとか。そういうのはあると思うね。俺は昔から、ネガティブな人は「想像力豊かちゃん」って呼んでんだよね、ネガティブな人に会ったら。『あ、想像力豊かちゃんなんだね』って。

でも、だからすごい想像力にたけてるんだよ。岡本さんもすごい想像力がたけてるんだよね。


_______でも、(ネガティブで)プラスの時もありますね。先生に対して怒られる怒られる…って不安に思ってたら、全然怒られなかった時とか。あぁ、なぁんだ〜!って(笑)。

なぁんだ〜!(笑)。でもその振れ幅があるでしょ?(笑)。ポジティブの時の想像力は”半歩”くらいなのに、ネガティブな時の想像力”四万歩”くらいいってる時あるでしょ?(笑)。でも、俺がそうだからわかるのよ。俺もネガティブだから、ネガティブに考えそうになった時は、もう、頑張ってそのポジティブの方に。



_______根は、ネガティブですか?

もう、ネガティブネガティブ。ネガティブですよ(笑)。コントロール…できてんのかわかんないけど、するように。大丈夫大丈夫、俺ならできるとか、何とかなる、とか。でも、ネガティブだったのがひとつよかったなって俺は思ってる。敏感なわけじゃんネガティブな人って。じゃあ敏感で良かったなって。鈍感よりいいでしょ(笑)。「こいつ鈍感だなぁ」っていうよりもさ、敏感な方がさ、それこそいろんなことをキャッチできるから。

ネガティブはネガティブで良かったなって思うけどね。すげぇポジティブだけどね、この答え(笑)。「ネガティブはネガティブで良かったなぁ…」って、ほんとにお前ネガティブか?みたいな(笑)。

でも、どっちの側面もあるよね多分みんなね。だから、言葉を仕入れる時は、結構ポジティブに仕入れるようにしてますねあと輸出するときも、言葉を人に。結構ポジティブな言葉で言うようにはしてる。


_______でも、一度へこんだりするとき、その「仕入れ」ができなくなったりしないんですか?面白いことに対してのアンテナが折れてしまったり。落ち込んでいるとハッピーな映画が観れなくなってしまう、みたいな。

ははは(笑) 岡本さんそうなの?(笑) ポジティブなのは、あまり観れなくなっちゃうってこと?(笑) 自分(の状態)とおんなじようなチャンネルを観ちゃうってことね。なるほどね。


______ないですか?落ち込んだことで、周りを「面白い視点」で見れなくなってしまったり。

あ〜、あるかなぁ。自分が落ち込んでる時?…なんだろうなぁ。なんか名言を残すようで嫌だけど「落ち込むこと」を忘れたんだよね(笑)。なんか大学入って、なんだろうな、大体悩んでる時とか大体不満というか不安がある時って「何が不安なのか」わかんないんだよね。太宰治かなんかの「人間失格」かなんかで出てこなかったっけ。よくわからないけど不安に襲い掛かられる主人公が確か、人間失格で。太宰治もそうなんだから(笑)。何かわからないんだよ、不安になってたり落ち込んでる時って、原因が。

落ち込むこと忘れたのかなぁ…って。落ち込む瞬間は一瞬あるけど、「あ、キタキタキタキタ…」ってなんかもう、すぐ俺追い返すもん。お茶入れない。世間話したら、どっちもナイーブになってくるわけでしょ?(笑)。それがわかってるから。どういう風に切り替えてるんだろうね。

「キタキタ」っていうのは、そりゃみんなあると思うんだけど、そん時にお茶入れんのか、とか、一緒にドライブすんのか、対処法は人それぞれだと思うけど、俺はあんまり付き合わないようにしてんのか、それともほんとにマブダチになってるのかどっちかだよね。


_____もう、ずっと居る?

もうずっと居るから、いいんだよ(笑)。一緒にいても、同じ空間にいても、もう違和感がない。喋らなくてもいいくらいのマブダチになってんのか、もしくは、すげぇ仲悪いかのどっちかだと思うんだけど。その悩みと。悩みはありますか?って聞かれたら、「…」ってなっちゃうもん。悩みあんのかなぁ…みたいな。出てこない。

ただ、みんなが家族とか大切な人が健康でいてほしいっていう、それだけ。家族が長生きしてくれればいいだけ。あと、それ以上の悩みってあるかな。あるかなぁ?いやただ俺がまだ人生浅いから、24年しか生きてないから、こっからいろんなことを経験するんだろうけど、これからいろんな事を経験する俺も何とかそのときそのときでやってると思う。


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_____なるほど。その都度この先もうまく付き合っていってるだろうなと。

そう。I 先生も『大人になってもずっと不安だよ』って言ってたもん。『今も不安だろうけど、そんな不安、大人になってもずっと不安なんだから』って言ってて。『ですよねぇ』って。だから、付き合うしかないんだよね。不安さんとは。…マイナスかぁ。うーん、何だろうね。そういう部分ではあんまりその悩み相談とか、俺向いてるのかもしれないね。一緒に悩みはしないから。



_____そうですね。相手の負のオーラに負けない人が向いてますね。

あぁ、みんなそれがわかってんだ。俺、ものすっっっっごい悩み相談されるの。ごっついくらい。でも、俺の悩み相談の秘訣としては、「他人事」っていうのがある(笑)。俺を入れないっていうかね、気持ちを入れすぎると俺がそれこそ負のオーラを纏っちゃうから。それはお前のことでしょって、ははは(笑)。ほとんど俺、聞いてないからねって(笑)。でも、そういうのがあるから、悩み…。悩みが、みんなの悩みに比べておっきい悩みがないから、悩み相談受けられるんだろうね。悩みだと思ってないのかもしれない、もしかしたら。…もうこれ、なんか新聞かなんかに投稿する?(笑)(手を叩きながら)あははははは(笑)



_____結構もうパンパンで(笑)。一人の特集組みます(笑)

はははは(笑) 言葉はなぁ〜。「言葉」を喋り出したら、やっぱ歴というか、考え出したのほんと小学校…。言葉と付き合ってるときが長い。だからなんか、言葉の美しさとか考えてる人はいると思うよ、でも俺は美しさとかどうでもいいの。面白いか、面白くないかだから。美しい日本語っていうのは、俺知らないの。それは、その方面のさ専門家が居るから。任せた。美しい日本語を守ってってください。

俺は、その若者言葉だろうが、美しい日本語だろうが、面白ければ使うし、あんまりみんなが多用してたら使わないし。そう、だからみんなが多用してるやつは使いません。みんなが多用してる言い回しとか。SNSとかでもそうだよね、みんなが使ってるSNSの言い回しとかっていうのは、絶対使いません。使えません。使う気になれません。

だから、いろいろあるでしょ。なんか、今使われてるのかわからないけど、「控えめにいってなになに」とか、「なんとかしか勝たん」とか「優勝した」とか。いろいろSNSでみんなが使ってる「なんとかなどした」とか、そういうのは使わない。みんなが使ってる言葉を使っても面白くない。やっぱり引っかかってしまう。そういうのはある。だって、みんなが使わないような言葉を選んだ方が面白いっていう始まりなわけじゃん子供の頃から。子供が使わないような言葉を選ぶから面白いんであって。大学生とか、みんなが選ぶような言葉を選んでも、面白くないんだよ。今まで(子供の頃)選んできたやつなんだったの(笑)ってなるから。みんなが選んでない、だからね、やっぱお笑い芸人の人ってすごいんだよね、言葉選びが。(他と)違う違う。

こないだだって、昨日か一昨日くらい、まっちゃん(松本人志)が、「今朝何食べました?」って聞かれて『半チャーハン』って答えたの。「半」? (笑) 。”チャーハン”じゃなくて、”半チャーハン”だよ(笑) 。”半”って付けんだよ。しかも、全チャーハンがわかんないじゃん、ボリュームが。何を持って全なのか、何を持って半なのかわかんないけど、その概念は曖昧なんだけど、「半チャーハン」って答える。その「半」が…(指で机を突きながら)効いてくる。あるか、ないかで。”半”てって(笑)。じゃあ、残り半分どうしたのって(笑)。

そういうことなんだと思う。そう、言葉ってね、面白いよね。俺、zipファイルみたいなもんだと思ってて、言葉って。



_____「言葉」はzipファイル。どういうことですか?

すっっごい、言葉にイメージが圧縮されてる。タカトシの『欧米か』だってさ、その『欧米か』っていうその言葉だけに、米国とかヨーロッパの、欧米の大陸での出来事が、そのイメージが『欧米か』に圧縮されてんだよ。だから、いかにいっぱいのイメージを圧縮された短い言葉を使えるかっていうのがね、限られた時間で喋る人にとっては大切になってくるんだよね。

それが、プロと素人の違いだと思う。だから、先生も一緒だよね、教師も一緒。「喋るプロ」なんだからっていうね。どういう言葉選びをしていくか、だらだら喋るよりも、少ない言葉でイメージが伝わった方が、聞き手も楽でしょ。いやぁ〜、言葉ね。いや、でもありがとうございます。こんな考えるきっかけをね。あんまその言葉について喋らない。喋らないもんねぇ、言葉について。



_____考えてはいても、なかなか話す機会は無いですよね。

話すことはない。ねぇ、しかも、その咄嗟だもんね。「言葉選び」って咄嗟だから、一番手前にあったやつか、その手前から二番目三番目にあったやつを出すから。奥にあるやつはなかなか言葉取り出せないじゃん。だから、常に言葉を入れとかないと。賞味期限の言葉を出す可能性も出てくるんだよね。だから、手前に結構新しい言葉とか面白い言葉を置いとかないとすぐ取り出せない。っていうイメージはあるよね。だから、すぐ取り出せる距離に置いとく。それを面白い言葉で固めてって、で喋る時にすぐ取り出せるようにしとけば、パン!パン!って。



_____すごいですね。会話はいつもアドリブじゃないですか。だから、それを選んで取り出すっていうのは、簡単じゃないと思います。

だから、(頭の中に言葉が)散らかってんだよね。常に半開きで、開かないといけない棚が俺開いてないんだけど(笑)。だから真面目な話とかっていう棚は、全くもう、南京錠五つくらいつけてるもん俺。はははは(笑)。絶対開かない。その南京錠の鍵もどっかやったし(笑)。だから、開いてる棚が偏ってる。俺が喋りやすいテーマだったら、すっごいバンバンバンバン喋るんだけど、真面目な話とかだったら、『うんうんうん……そして?』みたいな。『はいはいはいはい……わかりました。すぅ〜…一旦帰ってお持ち帰りで。』みたいな。ははははは(笑)。



______なるほど(笑)。では、最後の質問になります。あなたにとって、「言葉との出会い」は何ですか?

「言葉との出会い」。言葉との出会いねぇ。俺にとっての言葉との出会い。(恥ずかしそうに)はははは(笑)。「言葉とは何か」じゃなくて、言葉との出会い?



______(質問変更して)では、「言葉」とは何ですか?

「言葉とは何か」。そうですねぇ、何でしょうねぇ〜。なんかすーぐ、キザな事言っちゃいそうで嫌だなぁ…(笑)。



_____いいんですよ。

あはははは(笑)。「すぐキザな事を言っちゃいそうになる道具」ですかね(笑)。あははははは(笑)。



_____キザになってしまう道具ですか!(笑)

”キザな事を言うための道具”かもしれないし、もしくは、”絵を書くための絵具”かもしれないし、”船を漕ぐためのオール”かもしれない。だから、絵具がないと絵は描けない、じゃん。……その〜感じにしとくか。キザな感じに。(わざとテレビ風にカッコつけながら)『(言葉とは)絵を描くためのぉ……”絵の具”ですかね…。』テレレン〜テレレン〜テレレテン〜〜みたいな(笑)(BGM風に歌う)。『ええっとぉ…(言葉とは)船が進むための”櫂(かい)”……ですかね。もしくは……船を進めるための”コンパス”…かもしれませんね』(笑)。



_____急にふざけてます(笑)。

「言葉との出会い」は何か。う〜〜ん、そうねぇ。考えた事なかったなぁ。「言葉選び」とかは考えた事あったけど、「言葉と出会う」ってことは考えたことなかったなぁ。ごめんね、めっちゃハリボー食っちゃってるけど(笑)。

「言葉との出会い」は何なのか。でもみんな言葉使ってるもんね。みんな言葉と出会ってるもんね。なんなんだろう。俺にとっては、「おもちゃをもらった感覚」なのかな、やっぱり。「遊び道具」っていう。大人のおもちゃって言ったら、なんかすごいいやらしくなっちゃうけど。その〜、遊べる道具のひとつなのかな。うん。それの収集家なのかも、コレクターなのかもしれない。おもちゃを集めてるとかの一環なのかもしれない、言葉を集めてるっていうのは。「あぁ、いい言葉もらったな」とか。

こう、なんか、「どこかで使えるかな」っとかっていうのがあるから。(一旦集めておいて)そしたら、その言葉を自分で解体できるでしょ。解体して、あぁ、この紙飛行機ってこういう風に折って飛ぶんだ、だったら自分でも折ってみよう、みたいなところがある。その折り方を学んだから、じゃあ自分の言葉で飛ばしてみようっていうのがあるのかなぁ。ごめんね、比喩ばっかりで。っていうイメージだと思いますけどね。

「言葉との出会い」ね。「言葉」とプラス「人」だよね。言葉とだけ出会うってあんま無い。「その人」と「言葉」。セットでやっぱ俺は入ってきてるかな。



_____そうですね。先程の「店主だから」とか、「松本人志さんだから」とか。

うんうんうん、とかね。家族だってそうだよ。家族が言った言葉とか。親父に言われた言葉とかさ。そういうのって、やっぱ入ってくるよね。おんなじ言葉でも、誰に言われた言葉かでは、だいぶ自分の中に入ってくる深さが全然違うもんね。やっぱり、人と言葉はセットで見てるんだと思いますね。「この人」から「この言葉」をいただいたっていうのは。

でも言葉って、無料だけど恐ろしいよね。言葉って、使うのも仕入れるのも無料じゃん。だから、使いたい放題だし、仕入れ放題なんだけど、それが逆に怖くて。言葉によっては人を傷つけるし、言葉によっては人を追い詰めることなんて簡単にできるから。



______「使う言葉」が「自分自身」になりますからね。

だから、「言葉」は面白い部分でもそうだしマイナスの部分でも、発する時は慎重じゃないといけないなって。言葉ってよく言われるけど、狂気になりかねないからね。そういうのは、今の子供たち、大人たちにも伝えていきたいですね。言葉が溢れたこの世界、SNSによって可視化されたこの世界で。テレレ〜ンテレレ〜ンって(笑)。

常にみんなは「武器」を持ってんだって。その武器を「人を傷つけるために」使うのか、「人を守るために」使うのか。それを、「盾」とするのか「矛」とするのかはその人次第ですよっていうのを、僕はみんなに伝えたいですね。テレレ〜テレレ〜(笑)。…… はい!!おっけいです!!!(収録を終えた感じに)



_____すごいですね(笑)。

あと、六時間喋れるよ。あはははは(笑)。これ、岡本さんが発信してくれるから嬉しいけど、やっぱいろんな人と喋りたいね。



『燃え尽きたいんだ、俺は。』『あなたが行くところ行くところが、周りが明るくなるような人になってくださいね』『何になりたい、将来何になりたいとかじゃなくて、結局はみんな灰になるんだよ。無から始まって、無に終わることなんだから、別に怖いことはないじゃん。』『うんちのおうち』菊川天照さんの大切な言葉

さまざまな視点から「言葉」について話してくださった菊川さん。同じ人間でも、「使っている言葉」や「持っている言葉」が、異なる面白さ。場面や心情によっても拾う言葉、出会う言葉が違ってきます。菊川さんは、幼少期のエピソードからも「人を笑わせるため」に言葉と関わってきたのだと伺えました。そのような姿勢が、物事をプラスに面白く考えるための背景にあるのかもしれません。そして、良くも悪くも「武器」となる言葉との関わり方。自分の言葉との関わり方を今一度考えてみたいと思います。



最後に菊川さんの制作された作品をご紹介します。



【菊川さんの作品紹介】

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水【インタビューvol.1・4】「私の大切な言葉」
取材協力:菊川天照さん
企画・取材・撮影・編集:岡本彩江





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今回で【インタビューvol.1】『私の大切な言葉』はおしまいです。いかがでしたか? 私としては「言葉」というテーマでも、それぞれの「言葉」に対する思い入れ、考え方や関わり方が違っていてとても興味深く取材ができました。私が小学生の頃のような授業中の「手紙交換」や「親御さんを通した遊びの約束の家電」などとは違い、今では手元の操作でいとも簡単に相手や見知らぬ世界に言葉が届く今、どのような姿勢で言葉と向き合うべきなのか、そしていろんな言葉がありふれている世界で、「自分の言葉で話す」という意識は大切だと感じました。次回のテーマは、未定。次の更新をお楽しみに!また会いましょう!






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