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【英語インタビュー】好奇心と勇気がコーチにもたらすもの

こんにちは。
このシリーズでは、国内で活躍するコーチ、コーチングをビジネスや生活に生かしたい方に向けて、ハーバードのコーチング研究機関IOCで公表されている英語の資料(論文、ブックレビュー、インタビュー、ウェビナーなど)を翻訳+要約し、日本語で掲載していきます。

初回となる今回は、ジョージ・メイソン大学の心理学教授、Todd B. Kashdan氏への2019年のインタビューを要約していきます。コーチングにおける好奇心の重要性について、臨床心理士としての経験、自身の書籍の内容に触れながら論じています。

元記事(要会員登録):https://instituteofcoaching.org/resources/interview-todd-kashdan-phd-expert-well-being


1. コーチが持つべき好奇心

Kashdanは、コーチングにおける好奇心について、まず重要なのが、コーチが"You know less than you think"(自分で思うほどわかっていない)という前提に立つことだと主張しています。
コーチがセッションの見通しを持っていたり、クライアントのことをよく知っていたりすると、先入観や思い込みが発生し、コーチの好奇心が発揮されないことがあります。
コーチは、自分の洞察や直感にフォーカスする余裕を意図的に持ち、いまここで何にフォーカスすべきなのかに意識を向ける必要があります。
Kashdanは自身の臨床心理士としての経験から、セッション中もっとも価値のあるものは、クライアントから滲み出る情報(leakage)だと主張します。表情、ポーズなどの非言語情報、いきなり出てくる体験談などの小さなカケラにこそ、好奇心を持つべきです。

このような情報のカケラに対応するには、即興性と遊び心が求められます。コーチは、セッション中に何が滲み出てくるんだろうという好奇心を持ってセッションに臨む必要があるのです。

滲み出る情報について、コーチは準備を全くしていないのが普通なので、コーチはその場で対応していくしかありません。このような部分に触れていくのは、不安を感じるかもしれません。しかし、それこそがまさに目指すべき場所であり、その場の好奇心に導かれるままにコーチが言葉に詰まりながら関わる姿こそ、クライアントとの深い関与の証だと述べています。
見通しや思い込みを捨てて、好奇心が向かう方向に進む勇気を持つことが、コーチには求められています。


2. 感情偏向(Emotional Prejudice)を知ることの重要性

Kashdanはまた、感情偏向(Emotional Prejudice)という概念を提示しています。これは、個人の育ってきた環境などによって個々の感情に対する反応が違うことを説明するものです。感情の感じ方や受ける影響は人によって違うので、コーチは自分自身とクライアントの感情偏向を知る必要があると主張します。

例えば、モチベーションを理論化したデシらによる自己決定理論では、①関係性(Relatedness)②有能性(Competence)③自律性(Autonomy)の3つの心理的欲求が満たされれば、モチベーションとパフォーマンス、精神的健康(=ウェルビーイング)が向上すると言われていますが、Kashdanによると、これはあくまで理論値であり、自律性を全く求めていないクライアントがいても全くおかしくないとのことです。コーチにとって重要なことは、「このクライアントにどうやって理論を当てはめるか?」ではなく、「このクライアントはどのように理論とずれるのか?」という視点を持つことだと言っています。
社会的規範やジェンダーに基づいた仮定に縛られるのではなく、目の前の一人の人間がどのように社会的規範から逸脱するかを観察し、理解することがコーチとしての役割であると主張しています。個々の逸脱を追求し、理解することこそが真の好奇心であり、より効果的なコーチングを可能にすると彼は結論づけています。


3. 好奇心の5つの側面

最後に、Kashdanは好奇心についての自身の研究の結果を語っています。好奇心はこれまで単一の概念として捉えられてきましたが、彼はそれが単一ではなく、5つの異なる側面を持っていると捉えており、これらの側面はそれぞれ異なる結果につながると言います。

私たちが日常生活で口にする好奇心という言葉から想像しやすいのは、Kashdanが「喜びの探求(joyous exploration)」と名付けた側面で、例えば、色鮮やかな蝶に引きつけられて、それを追いかけて過ごす時間が喜びの探求の例と言えます。この種類の好奇心は、謙虚さ、賢明な理由付け、対立状況における満足感、帰属感、自立感、健全な社会的関係、社会的能力、人生の意義と目的、価値の明確化、自己指向、刺激への対応力など、さまざまな肯定的な結果につながります。

また、この喜びの探求が「ユニバーサリズム」の価値観と関連していることを示しています。ユニバーサリズムとは、人類愛とも呼べる、人類共通の価値を認識する考え方で、喜びの探求を発揮できる人は、カテゴリーや枠組みに関係なく、人類と広く深く関わっていくことが可能になります。

善意に満ちた世界を作りたければ、好奇心をより円満に発展させていくことが重要と言えます。

4. 感想

というわけで、Kashdanによる好奇心についてのインタビューを日本語で要約してみました。コーチングをしていると好奇心というキーワードは毎日のように触れることになりますね。とっても重要な概念の一つだと思います。

好奇心を持つことで言葉に詰まる場面があっても、それはコーチがクライアントと真剣に関わっている証拠であるという指摘はとても安心するし、理論を当てはめて考えるのではなく「理論がこの人にどう当てはまらないか?」という視点も、ともすれば理論に溺れてしまうけど、そうじゃなくて目の前のクライアントへの好奇心を思い出させてくれる大切な言葉だなと思いました。そして、好奇心は人類全体にとっても重要なもので、世界が好奇心で溢れることは、善意が溢れることになるんだなあ、と、なんだか嬉しくなりました。

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