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一人で立つこと

生きることは悲しいよ
生きることは騒ぎだよ
できることはしなきゃいけないことなのさ
しなきゃいけないことをするんだよ
だから、うまくできるのさ

ボブ・ディラン ”雨のバケツ”


ちょうど去年の7月10日、僕は会社を辞めてフリーランスになった。
noteの記事でいかに勇気と覚悟を振り絞って会社を辞めたかについてしたためて、意気揚々と始めたフリーランス生活。ちょうど一年後のこのnoteでは、この決断は間違っていなかったと振り返って、新しい一歩を踏み出そうとする人たちを少しでも勇気づけることができればと思う。


でも、そんな書き出しは、できなさそうである。



2022年の振り返り

独立してからの一年半を振り返るところから始めてみたい。

音楽一家に生まれアカデミアを通り抜けて独立した僕は、ビジネス的な考え方が欠落していた。一人で仕事をしていくには致命的だった。

収支計画が全く建てられていなかったし、そのせいで売り上げがジェットコースターみたいに変動するから、クレジットカードの引き落としの度に膝から崩れ落ちそうになった。新しいお客さんに出会いたいのに、引っ越してきた新しい土地で人との出会い方もわからず、部屋に閉じこもってばかりいた。せっかく引っ越してきた札幌で、スキーウェアは買ったけど、スキーに行く精神的な余裕はなかった。

さらに、春先にTHE COACHの資格試験CACPを受験して、不合格をいただいた。コーチングを始めて約1年半。試験に受かったら、いよいよコーチングの価格変更をしようと計画していた。そんな矢先の出来事だった。
200時間近く重ねてきた有償セッションや、コーチとしての在り方に対する自信を打ち砕かれ、仕事の状況の悪さも相まって、自分のコーチングも、わからなくなってしまった。

何もかもうまくいかず、力不足に絶望して頭が回らないのに、恥ずかしい現状を誰にも見せるわけにはいかず、なんだかわからない泥沼の中で、コーチ仲間とのミーティングをドタキャンする以外はこれといって行動もせずに過ごしていた。

お金は体力というのは本当だ。預金残高に睨まれながら毎日を過ごしていると、自信がなくなって軸がブレ、意思決定の精度が落ちる。自分の持つスキルもリソースも、取るにたらないものに感じる。自分が資本主義の社会で生きる能力を欠いているのではないかと疑い始める。

そして、就職を考えたり業務委託を検討したり、魔法使いになる方法を探したり、作曲を真剣に学び直してみたりして、さらに時間を無駄にしてしまう(調べたところホグワーツに入るにはSATのスコアなどはいらないそうだが、招待状が必須だった:出典)。

こんな状況の中で、やばいな〜と頭では分かりながら、現実と折り合いがつかず、周りにも自分にもその絶望を感じさせないように、顔には微笑みを貼り付けて、飄々と逃げ回って過ごした。

仲間の応援

6月のある日、コーチ仲間数名と雑談の機会があった。
その場にいたのは、投資家や世界的に活躍するコーチなど、華々しい人生を送っているように見える人たちばかり。どんなに絆ができた間柄でも、そんな素晴らしい人たちに自分の話をするのは怖い。絶対に批判されたり、呆れられたりすると思い込んでしまっていた。

でも、雑談の中で、僕は自然と自分の現状について自分から言葉を発していた。共にコーチングを学んだ関係性が僕の背中を押し、自分の現状と無力感に打ちひしがれていることについての言葉が、弱々しく場に共有されていった。自分の言葉を聞きながら消えてしまいたいと思ったが、結局この出来事が、2023年上半期で起きたことの中で一番いいことだった。

言葉を聞いたみんなからは、批判や呆れや嘲笑は全くなかった。みんな真剣に、忙しい人生の60分を僕のことを一緒に考えることに費やして、アドバイスや温かい共感をかけてくれた。わざわざ後日DMを送ってくれる仲間もいた。みんなが揃ってかけてくれるのは、「応援してるよ」という言葉だった。

こんなに情けない姿を見せても、応援してくれる人がいる。どんな自分でも一人にはならないんだとはじめて知った。みんながかけてくれる応援の言葉は、重みと温かさと安心感があり、言葉の意味以上のものをいただいた時間だった。

思えば、これまで生きてきて、こんなふうに人に頼ったことはなかったのかもしれない。常になんとなく外側にいるような感覚で、少し離れたところから人に関わってきた。すがるような思いで自分の願いを他者に曝け出すことは、これまでの人生でずっと避けてきたことなのかもしれない。

こんなに弱い部分を曝け出した先でかけてもらえる応援を、僕はちゃんと受け止める責任があると感じた。
飄々としたペラペラの笑顔は、必要なかった。弱い部分も見せてよかったんだということに気づいた。

器は円熟する

弱さを曝け出した先で出会える応援や共感。これはとっても貴重なものだ。

これまで、自分というキャラクターの枠に収まらないものは、すべて切り捨ててきた。目も当てられない弱さや、こっちが恥ずかしくなるダサさ。自分が許せる自分という枠の外には、顔を背けたくなるものが広がっているんだと思っていた。

でも、仲間との関係を信じて飛び出してみた自分の枠の外には、他者の存在があった。

自分の弱さを自分から認めることではじめて、かけてもらう応援を真正面から受け取ることができた。

自分を認めるとか、自分を肯定することってつまり、自分の情けない部分にOKを出すだけではなくて、応援を受けて本気でがんばる自分にもOKを出すことも含んでるんだ。弱さを、そこに注がれる応援や愛とともに責任を持って受け入れること。これができてはじめて、自分を全方向から肯定することになるんだろう。

自己の器って、こうして大きくなっていくものなのかもしれない。きっと人間は、直線的に成長していくのではなくて、円を描くように大きくなっていくものなんだ。弱い部分に踏み出したら、その分だけ、がんばる自分や、自分の中に眠るリソースにも気づける。そう考えると、人間の器の変容には、「円熟」という言葉がぴったりくる。

自分の中でまだ使えていないリソースを、とにかく使っていきたい。だって、僕のことを信じて応援してくれる人がこんなにいる。その人たちのためにも、僕の人生をよくするために僕ができることは、まだまだあるはずだ。

おわりに

このような気づきがあり、今はなんとか、まだフリーランスを続けている。

自分は一人ではないことがわかった。みんながかけてくれる言葉や眼差しを真剣に受け止めて還元したければ、自分の力を活かし切ることが一番だと思った。人生は、自分だけのものではない。僕自身が僕の人生に真正面から向き合うことが、周りの人たちの人生に向き合うことになると感じている。

それに、試験に受からなかったからと言って、これまでの経験がなくなってしまうわけではない。この経験がぼくのコーチングのリソースにもなるだろう。これまでの実践は嘘をつかないし、色々な人生の輝く瞬間に、コーチとして関わってきた。ぼくのコーチングが人生を円熟させ、たくさんの誰かの人生を輝かせる力になればと願っている。

会社を辞めてちょうど1年。一人立ちをしようと頑張ってきたが、必要なのは一人で頑張ることではなくて、みんなの力を借りることだった。それがわかって、僕はようやく一人立ちの一歩目に立てた気がする。

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この記事は、THE COACHで繋がったメンバーと作る『2023年夏のアドベントカレンダー』の一部です。
まーさんりみさん、THE COACH繋がりのみなさん。ありがとうございます。

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