見出し画像

雇用調整助成金をはじめとした、国や地方自治体の「助成金」を受給するための要件とは?

社会保険労務士のこうぶちです。

今回の新型コロナウイルスの感染拡大により、助成金に関するお問合せを頂くようになりました。

その際、まず最初に考えなければならないのは、「助成金を受給することができる会社かどうか」です。ここを外してしまうと、そもそも申請するスタートラインに立てない、という事になります。

まず、国の助成金は厚生労働省が管轄しており、雇用保険の中の事業として予算が計上されています。そのため、助成金を申請できる事業主(経営者)とは、「従業員を雇用保険に加入させている事業主」となります。

雇用保険は「賃金を支払う者」と従業員の双方が負担する仕組みです。
そのため、例えば出向者で賃金が出向元から支払われている場合は、賃金を支払っている「出向元」が雇用保険の保険料を負担します。なので、社員が全員出向者、という場合は、そもそも誰も出向先で雇用保険に加入していないので、助成金を申請することはできない、という事になります。

また、東京都をはじめとして、独自の助成金制度を持っている地方自治体もあります。国の助成金は、「従業員を雇用保険に加入させている事業主」であれば原則申請できますが、地方自治体の助成金は、それぞれ独自の条件が定められている場合があるので、注意が必要です。

例として、東京都の「事業継続緊急対策(テレワーク)助成金」を取り上げてみます。この助成金は、新型コロナウイルス感染症等の拡大防止策として緊急対策の助成金として創設されたものです。助成金の上限額が250万円、しかも助成率は10/10(全額)という、最近の助成金の中ではかなり手厚い内容になっています。
https://www.shigotozaidan.or.jp/koyo-kankyo/joseikin/kinkyutaisaku.html

この助成金を申請するための要件は、国より厳しめになっています。
大きな要件は、上記のページ上に記載されている2点です。

①常時雇用する労働者が2名以上999名以下で、都内に本社または事業所を置く中堅・中小企業等
②都が実施する「2020TDM推進プロジェクト」に参加していること

しかし、これ以外にも細かな条件が募集要項には書かれています。
全て取り上げると長くなってしまうので、重要なところだけ抜粋します。

・都内に勤務する常時雇用する労働者を2名以上、かつ申請日時点6か月以上継続して雇用していること

・労働関係法令について、次のアからキを満たしていること
ア 従業員に支払われる賃金が、就労する地域の最低賃金額(地域別、特定(産業別)最低賃金額)を上回っていること。
イ 固定残業代等の時間当たり金額が時間外労働の割増賃金に違反していないこと、また固定残業時間を超えて残業を行った場合は、その超過分について通常の時間外労働と同様に、 割増賃金が追加で支給されていること。
ウ 法定労働時間を超えて労働者を勤務させる場合は、「時間外・休日労働に関する協定(36 協定)」を締結し、遵守していること。
エ 労働基準法に定める時間外労働の上限規制を遵守していること。
オ 労働基準法第39条第7項(年次有給休暇について年5日を取得させる義務)に違反していないこと。
カ 前記以外の労働関係法令について遵守していること。
キ 厚生労働大臣の指針に基づき、セクシュアルハラスメント等を防止するための措置をとっていること。

つまり、 

「最低賃金額以上の給与を支払っていますか?」

「固定残業代を導入していても、超過分に対してきちんと割増賃金を支払っていますか?」

「36協定を締結・届出していますか?」

「昨年春から義務化された、年次有給休暇を年5日取得させる義務を果たしていますか?」

といった、「しっかり従業員の労務管理をできているか」という点も問われてくるのです。

労務管理には、手間がかかることが沢山あります。正直、面倒くさいことはやりたくない・・と思われる事業主の方も少なくないのではないかと思います。

ただ、こういった緊急事態になった時に、「助成金を受給したい!だから労務管理をしっかりやろう!」では、準備している間に申請期間が終わってしまったり、予算枠が埋まってしまい申請が締切られてしまう事もあり得ます。

なので、普段から労務管理をしやすい環境を整えていく事が、困った時に行政の助け(助成金)を得られる一番の近道ではないかと個人的には思っています。

そういう訳で、受給したい助成金が見つかった場合は、まず受給に向けての条件をしっかり確認することをお勧めします。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?