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迷子犬を保護した話

朝、起きて
顔を洗って、化粧をして
お弁当を作って朝ごはんを食べたら
車に乗って、出勤した

私の出勤ルートは、なるべく信号の無い住宅地を進む道を選んでいる

山の上なのでちょっとクネクネしているが
車通りも少ないし、信号も無いので早く着く
私のお気に入りの道だ

今は桃の花が綺麗で、道端に沢山咲いている桃の花を見ながら出勤するのが日課
山の上なので景色も良い

なんて綺麗な花なんだ

ん?

道に、ラブラドールが歩いている
一匹で

迷いなく道路の橋をトテトテトテと歩いている

おっと?野良か?
車の中から三度見くらいしてしまった
どうやら首輪は着いている

すぐ路肩に車を停めてハザードをたく
すると前から別の女の人が、私と同じように犬を追って小走りで来ていた

あの人が飼い主だろうか?

とりあえず私は犬を追う
その辺から、出勤中であることは忘れてどうしたらこの犬を安全に保護できるかだけを考えていた

犬に出会うまで約五台ほど車が通った

危ない!っと思うがドライバーは上手く私も犬も避けてくれた

犬に近づいたら走るのをやめて、後ろからではなく横からしれっと近づく
追っかけると逃げてしまうような気がしたので
あくまで「たまたま出くわしただけの人」みたいな顔で近寄った

そしたら「ハッハッハ」と言いながら歩みはとめないが逃げもしなかった

なのでスっとしゃがむと、犬は普通に近寄ってきてくれた
なんていい子だ。これは飼われているに違いない

その辺で先程の女の人と合流


この子迷い犬ですかね…?

そうかもしれないね〜!私もさっき家の前を歩いていくの見てさ〜!


とっても気さくな人で助かった
安全な路肩に避難し、犬を観察する
特に怪我はしていない
首輪には「ミルク」というタグと飼い主の電話番号が載っていた


良かった!電話番号載ってるなら安心!


そう言って女の人が電話をかけてくれたが、出ない

仕方ないので近くの交番に電話をしてくれた
その間は私がずっと犬を見ていたが、とても大人しくて吠えたり噛んだりしない
とてもいい子だった


女の人はそのまま旦那さんも呼び出してくれて
旦那さんの到着、警察からの指示、飼い主からの折り返し電話を待つ形になった

この辺りで私は頭の片隅に
「出勤間に合うかしら?」
という思いが湧いて出たが、このまま放っておく訳にも行かないし
このまま放っておいて犬がどうこうなっても私が後悔しそうだったので

グッと飲み込んで連絡を待った


「お家で犬とか飼われているの?」

と女の人に聞かれた

「いえ、まったく。でも好きですよ」
「あらー!そうなの、とっても扱いに慣れてるようだたっからてっきり……
私貴方がこの子の飼い主かと思ったのよ」

「あはは、私はただ通りすがりなんですけど…
さすがに犬一匹で歩いてるので放っておけなくて…」


「ほんとねー!あれ!?って私も思ってたんだけどそしたら貴方がサッと車止めて降りてくれたから…
あぁこんなに優しい人がいるのかって凄い感動しちゃった!」



べた褒めばかりで照れてしまう

しかし、自分でも出勤時間が限られていて、
絶対止まってこんなことをしている場合ではないとわかるのに何故か身体が動いてしまった

放っておく方が無理だったのだ


それから5分後、旦那さんも合流し警察から折り返し電話もあった

飼い主の電話番号に警察が連絡をしたら、どうやら県外の方らしく
ここから約2kmくらい離れたところのキャンプ場に来ていたが、気づいたら犬が居なくなっていたという

交番で飼い主と落ち合って犬を渡す、という結論が出た辺りで私は



すみません……あとはお任せしてもいいですか?
出勤しなくてはいけなくて……

と伝えると


えー!!そうだったの!!
ごめんねごめんね!ありがとうね!


と女の人からも旦那さんからも手を振ってもらった


その直後に先輩へ電話をする

「すみません迷子犬を見つけて、いま引き渡してきたところで。向かってるんですけど遅刻するかもしれません」

というトンチンカンな電話をする

そしてどうしても下道では職場には間に合いそうもなかったので


人生初  高速道路を使った

片道600円ほどだったが、犬のためと思えば安い

GWだったがそんなに車通りは多くなく、スムーズにインターを降りることが出来た
車線変更もなんとかなった

人間とは危機が迫ればなんとでもなるものだなぁと呑気に考えながら高速を運転する私


無事に出勤時間には間に合って、先輩からはめちゃくちゃ労われた


これはとても良い経験をした
私は忘れないうちに、このエッセイを書くことにする

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