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指名手配犯の写真を見るのが好きな被告人。交番で思わず手を伸ばしたもの...(窃盗) 傍聴小景#64

僕は「窃盗」の裁判が好きなのを公言しているのですが、最近それに陰りが出ていまして。

というのも、窃盗の裁判に行っても、半分以上の確率で特殊詐欺でカードをだまし取る事案ばかりなのです。その事件も学びはあるのですが、似た手口が多いので正直うんざりしていまして。

頭の中で擬人化している窃盗罪のキャラが「私たち、お互いを見つめ直す時間を作った方がいいと思うの」と言ってくるので、少し距離を置こうかなと。

でも、今回紹介する裁判を傍聴することができ、「窃盗ちゃ〜ん!」とぎゅっと抱きしめ、やはり窃盗の裁判への未練を断ち切れなくなってしまったのであります。


あ、これから真面目に裁判の話聞くので、擬人化の話でうんざりしないでくださいね。


はじめに 〜配慮が求められる裁判所〜

罪名 :窃盗
被告人:60代の男性
傍聴席:平均6人(計2回)

杖をつきながら法廷に入ってきた被告人。ケガということでなく、不自由そうにしている感じが一目でわかります。

裁判を進める中でわかるのですが、障害者手帳2級を持っているとのこと。2級というのは、必ずしも人の手を借りる必要はないが、日常生活は極めて困難で、労働で収入を得ることができない状態とのこと。

事前に申請すれば配慮されるのかもしれませんが、

 ①裁判官が入廷して起立
 ②人定質問や起訴状の読み上げを聞くために証言台へ
 ③被告人質問のため証言台へ
 ④最終陳述のため証言台へ、

と計4回行き来しているのが、辛そうで見ていられませんでした。最初から、ずっと証言台に座ってて、困ったときだけ弁護士がかけよるみたいにすればよかったのに。

ちなみに、そのように配慮されるケースもありますし、その他様々なケースに対応自体はしてくれる動きはここ数年で進んでいるように感じます。ただ、いかんせん個人の裁量による部分が多く、横の繋がりは弱いと感じますが。


事件の概要(起訴状の要約) 〜オイラーの方程式は美しい〜

被告人は交番に入り、そこの固定電話機(1万円相当)を窃取した。

なぜ交番で盗む!?
そして、なぜ電話機を!?

短い事件内容に2つも突っ込みどころがある素晴らしい内容です。数学の式は短くまとめられている方が美しいなんていいますが、それに近いものがあります。


検察官が提出した証拠や供述内容等

交番は警官が留守の間でも扉の鍵を開けており、急に来た人などが電話で通報できるようにしており、その電話が被害にあった。
被告人は同種犯罪2件を含む前科3犯。前刑は約10年前のもの。

被告人は犯行の動機として
・固定電話を買うお金がなかった
家で携帯電話の場所がわからないときに固定電話があれば便利
などと語り、実際に盗んだ電話を家の電話線に繋いだところ、使えたという。

使えるんだwww
そして犯行動機の、携帯を探すのに便利という理由www。それで警察の盗りにいきますかね。これは被告人本人からしっかり話を聞く必要がありそうです。


被告人質問 〜交番へは指名手配犯の写真を見に〜

冒頭で説明した通り杖をついている被告人。その姿はとても大変そうではありますが、質問の受け答えははっきりしています。年齢も正直60代というよりかは若く見えます。

弁「あなたはもともと電話が欲しかったんですか?」
被「そうですね、欲しいと思っていました」

弁「交番には盗みに行こうと?」
被「いや、違います」

弁「じゃあ、何をしにいったんですか」
被「指名手配犯の写真を見に行きました

ねぇ、俺だけなのかな?この事件、面白くて仕方ないんですけど。
指名手配犯の顔写真見るのが日課だったのかな?なんかちょっとかわいいな。まだまだ面白問答は続きます。

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