4630万円事件に魅せられて過去の判例とか学び始めた話(電子計算機使用詐欺) 傍聴小景 #53-③
みなさんは運の揺り戻しって信じますか?
前回7倍という傍聴券の倍率を勝ち抜いた私。2回目の公判はそこまでいかないだろとは分かりつつも、前回の反動で今回当たらないんじゃないかと思い、山口訪問をどうするか本気で悩んだ僕。
だって、この日はお目当ての1件しか裁判やっていないって言うし、次の日は山口地裁で刑事裁判はないっていうので、外れたら正真正銘の無駄足です。
しかもこの日、大阪で追っていた裁判が、初めて見る事象が起こる予定の日だったのです。
30代の男性が窃盗などで起訴されている事件で、一緒に盗みを行っていたというのが中学生の少年。被告人はその少年が主導でやったと主張しているので、証人尋問で少年が法廷に立つ予定でした。
未成年が証言台に立つのって見たことないんですよね。しかも、検察さんが「少年の足取りがつかめていません」「少年とスケジュール調整したところ」と、「少年」を連呼していたのがなんかツボで。
でも冷静に考えて、やっぱ4,630万円の誤振込なんて今後ないだろうから、こっちを選ぶことにしました。
外れたら外れたで、ネタにすればいいし!
という訳で前段が長くなりましたが、本日も長いですよー。どうかお付き合いください。
当記事は連載の3本目です。
1本目 山口地裁までのおでかけや傍聴券の列の出会いについて
2本目 みんな大好き被告人質問
お読みいただくにあたって
前回は外れて元々だったけど
前回の記事は10月に行われた初公判。今回は2回目の公判。12月27日という、学校とかも終わって倍率が上がる時期に期日いれるなよーと嘆いた日程です。
今回は夜行バスで山口県に入りました。夜行バスがあるのはありがたいのですが、大阪-山口便ってのが1本しかないので、夜行バスにしては高め。福岡に行くより余裕で高いです。
夜行バスのドタバタという話もあるのですが、長くなるので割愛。こういうドタバタは、もしよろしければtwitterで日々投稿しているので、興味がある方は是非に。
そんな訳で2ヶ月ぶりの山口地裁到着です。
前回同様に15時開廷ですが、13時15分~45分に傍聴券のための抽選権を配布するとのことで、30分前の12時45分には地裁に到着。
しかし、誰も待っている人がいない!
10月は阿武町から来たおばちゃんなどもいましたが、圧倒的、悪魔的一番乗り。その後マスコミの方がちらほらと並びましたが、配布10分くらい前まで15人程度だったのではないでしょうか。
「またたくさん集まったらどうしよう(*'ω'*)」と、せっせと誘導の準備をしている職員さんや、15人しかいないのに拡声器を使って傍聴券配布まで少々お待ちくださいと言う職員さんを見ていたら虚しくなってきました。ってか、15人なんだから肉声で頑張れや。
配布開始のタイミングでは結局20人くらいだったかな。並んだ順としてNo.1のリストバンドをゲット。最終的に抽選のときは、この番号と照らし合わせて職員さんに傍聴券をいただくのです。
抽選まで30分ほどあるので、私は地裁の待合室に入って、せっせと年賀状の作成作業。裁判所で何か変わったことをしていないと気が済まない性分のようです。
抽選数分前に現場に戻った僕。どうやら39枚の傍聴券配布に対して、並んだ方は51名とのこと。倍率は1.3倍。前回は外れて元々くらいだったのが、今回は外れたら恥ずかしいって気持ちがあり、正直かなり緊張しました。
結果はなんとか当選!
7倍と1.3倍を潜り抜けて傍聴券をゲットした僕。これは「2度あることは3度ある」を期待して、次回の判決回もゲットしましょう。それまでに、大阪地裁で傍聴券の裁判いっぱい外して運の調整をしておきますんで。
第2回公判概要
さて、ようやく裁判の話!
といきたいのですが、概要欄の「傍聴席:32人」の文字おかしくないですか?傍聴券の配布は39枚だったのに、7人もいないなんて!
実を言うといないのは7人だけの騒ぎではなく、前回同様39席の一般傍聴席+マスコミ用16席前後で構成された傍聴席。マスコミ席はほぼ埋まっていたので、一般傍聴席に座っていたのは16人程度だったんです、傍聴券の配布は39枚もあったのに。
これ、どういうことかと言うと、真実かどうかはわかりませんが、
マスコミさん達がすでに得られているマスコミ用席だけでは飽き足らず、画を書く人であったり、いろんな目で裁判を傍聴するために席が欲しいということで、アルバイトなどを雇って傍聴券を取りに行くんですね。
すでに確保されている席があるのに、なんとがめつい。大阪桐蔭みたいなマネをします。
マスコミさんとしても、欲しい数さえ手に入ったらあとはどうでもいいので、バイトから回収した傍聴券の行き先もなく空席が発生するという流れなんですね。マスコミ不信の波は傍聴席にもあるのです。
さらに事件が。弁護士さんが入廷するとき、弁護士さんがマスコミの方に何か紙を渡しています。後でわかりましたが、裁判で使った弁論のPowerPointの資料をプリントアウトしていたものでした。
マスコミの方は、それをご丁寧にマスコミ席にのみ配り、職員でもないのに入口に陣取ってマスコミっぽい人を選別して渡していました。ブー!ブー!お前らがやたらと主張する「知る権利」ってのは、一般にはないのかー!
ちなみに閉廷後、失礼を承知で弁護士さんにマスコミの方同様に弁論要旨を頂戴できないかご相談したところ頂戴することができました。先生ちゅき。そればかりでなく、これに関連して素晴らしいこともされているので、これについては後ほど紹介。
検察官による論告・求刑 ~正当な取引が前提としての虚偽~
被告人は前回同様スーツ姿で、髪の毛を後ろに束ねる形で入廷。雰囲気は特に変わっていなかったと思います。
検察官より一部証拠の追加などがありつつ、双方から審議にかけられる証拠の提出はいったん終了。それらをまとめて双方の意見を述べる、検察官からの論告・求刑、弁護人からの最終弁論が行われます。
まずは検察官からなんですが、早口で、難しかったので誤りがあってもご容赦を。
これだから銀行だったり、契約が絡む傍聴は嫌なんです。ただでさえ法律用語は難しいのに、聞き馴染みのない契約内容、判例に、早口にと私の脳みそはパンク寸前です。
印象ですが、裁判官もこの辺りの説明のときは、少し頭を抱えるような素振りがあったように思えます。単に考え込んでるポーズだったかもしれませんが。
前回の公判の最後に裁判長から「正統な権限がないことについては次回説明があるのか」と言われていた通り、この手の説明を聞くのは初だったように思えます。
その割に、「信義上の常識だったり、最高裁判例からも誰がどう見ても明らかに犯罪ですやんか。弁護士はんも反論あるなら、証人尋問でもなんでもしたらよろしかったのに、おほほ」って感じがしましたね。
確かに、弁護士が明確に無罪となるべき何を示していたかというと、素人目にはよくわかりませんでしたが、とはいえ100%の有罪の証明をするのは検察側で、弁護側はそれを崩せばいいので、その前提がそもそも示されていなかったともとれるのかなと。
この箇所では、先ほど頭を抱えていた裁判長もところどころ、うんうんと頷いていたように見えました。
銀行口座を持っていて、継続的にやり取りしていることを預金契約と呼ぶのは、消費者にとってその認知度は限りなく低いだろうなと思いつつ、詐欺罪の認定があり、それがコンピュータだから電子計算機使用詐欺というのは、なんとなくわかる部分です。
ただ結局よくわかんないのが、ギャンブルに使っていたというのを秘していたというのが、どう悪いことかってのがわからんのですよね。恐らく関連する例として、出会い系サイトの類似例を出したのでしょうが、騙すのベクトルが違う気がするので、果たして例として正しいのか否か。
なんだか、少しわかっては、また違う疑問が出てきてというのの繰り返しです。ただ初回よりは、理解できてきた気もします。
これは法律を学ぶ上で、とてもいい事例なんじゃないか。ニュースのインパクトに引かれて来た僕も含めた一般の方はポカーンでしょうけど。
一番関心があると思われる求刑は懲役4年6月という相応に重いと思われるもの。
マスパセの求刑・懲役4年のときは法廷が軽くざわつきましたが、今回はそんなことなかったですね。ある程度、予測がついていたからなのか、マスコミが席をがめ過ぎて空席が多かったから、ざわめきほどの大きさにならなかったのかはわかりません。
前回、裁判長が被告人の雇い主である証人に「実刑になったら雇用はどうするか」と聞いていましたが、確かに被害額を考えたら実刑になる話なんですよねぇ、いくら返されていようが。
でも、やっぱ4年6ヶ月は重く感じちゃうなぁ。いろいろと更生の姿勢を見ているだけに。
こうやって、すぐ心が傾いちゃう僕はやっぱ法曹界に向かないですね。ずっと気ままな傍聴人気質で生きていきたいものです。
最終弁論 ~検察官に必死に抗う弁護人~
続いて弁護人による最終弁論なのですが、ここでイレギュラーが。
と休憩を求めました。元々用意していた内容を、検察官の話した内容に応じる形で多少修正するとのこと。
初回公判の冒頭や閉廷前に散々弁護士が訴えてきましたが、やはりここで急遽根拠とかを示されたということのようです。まぁ完全にこの日初めて見たということもないのかなとは思いますが、それまでの経緯もありこの訴えはなかなか考えるものがありました。
検察が何か戦略的にギリギリまで条件を明確化しなかったのか、それとも弁護側も分かってはいたけどあえての態度なのか、など勝手に妄想してしまいます。
ここで分析まで含めると、法曹界のウエストランドに「皆目見当違い」と一刀両断されそうなので控えますが、素人目にもなかなか見る機会がないバチバチでした。
そんで休憩後の弁論
面白いなぁ。
検察としては、「どうせ弁護側として「『虚偽の情報を与えて』って箇所は、そもそも入力する情報の真偽について訴えるつもりだろうけど、情報が正しいという前提に対して虚偽か否かという話ですよ~」と煽っているのに対し、
弁護側も、最初はその論調で話して検察官をにんまりとさせた後、「そもそも銀行の事務処理の目的に反していないって言ってますんで~」と言い返しているのだと思う。多分。
あと検察が平成15年判決をもとに詐欺→電子計算機使用詐欺とする説明は一定のわかりやすさがあったけど、弁護側も同じ判決を使ってそのときの条件が違うのに告知の義務はないとするのも一定のわかりやすさがある。
大丈夫?みんなついてきてる?
法曹関係の方、適当なこと書くなって怒って読むのやめていません?
一般の方、何をずっとわけわかんないことを書いているんだって読むのやめていません?
そう、結局、用途で何が悪いかってのがいまいちわかんないんだよね。もちろん使った行為自体は悪いよ。でも、それは自身の借金返済だろうと、日々の生活費でも一緒でないのかね。
オンラインカジノが健全とは思わないけど、法的な評価として、ことさら何がどう問題かって説明はあんまない気がする。オンラインカジノ自体、日本では真っ黒という評価なのだとしたら、このポイントは的外れだけど。
あと、実質的な被害者云々の話も納得感がありました。それによって判決に影響するかどうかはわからないけど、印象的な話の一つでした。
かっこよかったなぁ。
アメリカ大統領選のスピーチとかだったら、終わった瞬間に大きな歓声が起きるような内容だったように感じます。どこかここまで報じていたかな。
法的解釈はわからないけど、心情としては弁護側に揺れたなぁ。でも双方に納得性があったのは事実。
仮に有罪になったら、判決文の中にちゃんと弁護側主張について、しっかり検討したことがわかるものにしてほしい。
検察官の論告には頭を抱えたり、頷いていた裁判官は、表情を変えずに静かに資料を見ていました。
あと、これはしっかり伝えなきゃなのが、この件の弁護を担当されている山田大介弁護士のHP上にて、弁論要旨、使用したパワーポイントが公開されています。
ちなみに、私のこの記事作成に際して、さーっと見たことは見ましたが、文章作成においては傍聴ノートを使って書いていることをお伝えしておきます。
最後に、被告人から最終陳述の機会が与えられます。
もっと頑張って喋ってくれると思ったのに~!
判決は2月28日(火)15:00~です。
ここまで来て、傍聴券外したくねぇよ~。
最後に改めてのお願いです。
当記事は、レア過ぎるケースというのと、社会的に関心が高いであろうということから、有料記事化せず全文お読みいただくスタイルをとっております。
もし今回の記事が何かのお役に立てたのであれば、今後もこういった事件を追って記事化するための活動費用として、月額会員のご検討、もしくは当記事の単品購入(ご購入の御礼箇所だけが隠されております)をご検討いただけますと幸いです。
また気になって追って欲しい事件などありましたら、可能な限り対応したいと思っていますので、コメントまたはTwitterなどにもご連絡いただけますと幸いです。
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