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【見本市2024ゲネプロレポート】Bチーム 書き手:笠浦静花

見本市Bチーム(ゲネプロ)を観て来ました!劇場職員の笠浦です。

まずみなさんに訴えたいのは、企画山、ヨルノサンポ団、演劇ユニットタイダンの3作品は個性が全然別の方向に散っていて、その順番もベストだということ・・・!

感情があっちからこっちへめっちゃ揺さぶられます。
超おすすめチームです!

※※※これ以降はネタバレあり!!!!の感想となりますので、まだ観てないという方はお気をつけくださいっ!※※※


企画山


30分一人芝居ですが一瞬も飽きません。本の出来栄えもさることながら、演じ手(奥山さん)の技量が素晴らしい。

お芝居というより「芸」、一流の芸事を観ているんだ!という気持ちでした。

奥山さん、落語がとっても上手なんですけど、その技術を演劇に反映するとこうなるんだなあとこちらが勉強になります。曲がりなりにも演目はマクベスなので登場人物はたくさんいて一人で演じるんですが、演劇としては本当に最小限で全部やる。超かっこいいです。

とにかく技量が真似できないレベルなのですが、序盤でうわあああすごおおいとなったのが、マクベスが廊下を歩くシーン。あのペタ…ペタ…という足の裏に冷えた廊下の感覚が伝わって来そうな歩き方、これからやることへの緊張が一歩ずつ高まる様子がビンビン伝わってきます。

人間の欲、業、そして異形へ。。。という山月記フォーマットなんですが、大怪獣×スーパーロボのバトルは、めっちゃ熱い。臨場感たっぷりで、マクベスってカッコいい話だなあと改めて思ったり。

ただ、大枠が子供への読み聞かせなことから、布団や畳の匂いみたいなものがずっと根底に流れています。ラストは解釈が分かれるところかもしれませんが、私はちょっと「子」が怖くなりました。思えば序盤から、戦いごっこで敵を倒しまくってたっぽいこの子、怪獣を出せロボを出せと要求果てしないこの子もまた、すくすくと育つモンスターのような・・・。


ヨルノサンポ団。


ずっと怖いです。ほんとゾックゾクします!

嵐の夜の、中流家庭のリビング。いま帰宅した娘。開幕から嫌〜な感じの緊張感で不穏そのもの。

舞台設定が行き届いてます。もしこんな嵐の夜でなかったら、娘ももっと強く追い出せと言えたのでは…? 結局通報も脱出もできず、もたもたと留まり続けるのがとってもリアル。

また、最初の不信の段階から、まあそう言うならそうなのか…?となったときに帰宅時から着続けていた上着を脱ぐなど、人間の生理に基づいた演出も丁寧です(この辺りから、あ、この作品絶対面白いな、と思いました)。

このお話、前半はサスペンス映画さながらに、設定の妙、心理描写、「兄」の存在感など、不穏な出来事で客を次々精神攻撃してきます。2段ベッドの木目を黒く塗りつぶした話を思い出せないくだりとか、染みのような不安が舞台中に広がっていくようでした。

しかも、中盤以降は攻撃方法が変わり、脳に直接侵入してきます。こんなときに、というタイミングの停電。同じ空間に居るのに状況が見えないもどかしさ。その暗闇に慣れて来たタイミングでの母の「混ざる」発言。当然客も同じ暗闇を共有していますから、殺人犯や、様子のおかしい母や兄がこっちに混ざってくるような、自分の輪郭もあいまいになっていくような実存不安が味わえます。このあたりは本当に演劇ならではの表現なのですが、王子小劇場は地下にある劇場なのでわりとシビアな暗転ができますので、場所を生かしているとも言えます。

サスペンスの定型におさまらず、不安が大きく発散していくようなラストは詩的でもあり、30分の作品だからこそできる着地のような気がして私はとても好きでした。

演劇ユニットタイダン。


とにかくこの距離感で見る生演奏&ミュージカルは最高です!生の楽器は本当にテンションあがりますし、歌って踊るというものすごく初歩的なパフォーマンスの喜びに溢れています。

7人の小人たちみたいな可愛い感じの人々がわらわら出て来て、えいさえいさと舞台を準備する、いい意味で演劇というより出し物と呼びたくなるような開幕。

快活な導入からの、信用金庫かなんかに就職したらしい主人公の、わりと自堕落な顛末。

同僚たちや上司がデフォルメされつつも、なんとなく会社員のリアリティを感じさせるのがすごい。ペットの金魚と少しも心が通じることは一度もないくせになんかそこにい続けるというまさに金魚らしい距離感の存在の仕方も面白いです。

「彼のくだらない悩みに救われた」←このセリフめちゃくちゃ良くないですか?

本当にそういうことってあるし、それがロマンスのきっかけになることもあるし、そういう機微にいちいちの納得感があるのが、この作品の地盤になっていて、浮かれた恋の歌を歌っていても、どこか地に足ついた印象が作品全体の魅力になっていると思います。

引っ越し屋さんとの恋、退職、そこまで思い入れのない街を去るにあたって、逃げてしまう金魚。この絶妙にぬるい感じ、とくに奇跡のないラストを、爽やかに描いていてとても良い。「エモい」という言葉を使いたくなるような、たとえば外でラムネを飲んだあとのような、高級ではないのに特別なものを得たような気分になれます。



【見本市2024 Bチーム 公演詳細】


見本市2024 フライヤー
見本市2024 フライヤー

参加団体:
企画山
ヨルノサンポ団
演劇ユニット タイダン

会場:王子小劇場

日程:
2024年1月
5日(金)19:00
6日(土)15:30
7日(日)19:30
8日(月)14:00
受付開始・開場は開演の30分前。
上演時間は約100分予定(1団体につき約30分の上演

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(各回開演3時間前までご予約が可能です)

皆様のご来場をお待ちしています!!!!!!


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