【ざんねんマンと行く】しょっぱいデビュー編
世の中にはたくさんのスーパーヒーローがいるもんですなあ。
やれスー〇ーマン、ウル〇ラマン、バッ〇マン。
みんな最強、みんなイケメン。で、モテる。
まったく、叶わんですよ。
悔しいもんです。
私はねぇ、思うんですよ。
ちょいと違った主人公がいてもいいんじゃないか。ってね。
例えば
「ざんねんマン」
夏の浜辺で小学生が波にさらわれた。
「誰か~!」
周囲の叫びを耳にした自称正義の味方、ざぶーんと波間に飛び込んだ。
手作り衣装に身を包み、見てくれだけはスーパーヒーロー。
助けてくれるかと思いきや、ざんねんマン、実はかなづち(泳げない人)だった。
おぼれかかるざんねんマン。それを見ていた少年は、体の奥に眠っていた力を呼び起こされたか、意を決して水をかぎだした。
「おじちゃん、がんばれ!あきらめるな!」
最初はおびえた表情で波間を漂っていた少年も、
今や頼もしい青年の表情を見せている。
ざんねんマンの肩をむんずとつかむと、
砂浜に向かって一心不乱に泳ぎだした。
泳ぎ着いたころ、浜辺は救出劇に胸打たれた人たちの温かな拍手であふれていた。
今や、ヒーローは人助けをした少年だ。
ざんねんマン、見せるところなし。
ぐっしょり濡れた手作りスーツを引きずりながら、
「今日も人助けができなかった、、」とうなだれ家路につくのであった。
だが、ざんねんマンは確かに仕事をした。
1人の少年を、頼もしい立派な青年へと脱皮する手助けをしたのだ。
自分が主人公にならずとも、
出逢う誰かを引き立て、世の中の役に立つ人物に変身させるのだ。
こんな形のスーパーヒーローがいても、いいんじゃないだろうか。
ウルトラマンやスーパーマンになれず、
かといって憧れを抱かずにいられない中年サラリーマンの、
とある夜更けに抱いた妄想であった。
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