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2022年5月28日の乾杯

2022年5月28日の乾杯、久しぶりに劇場に足を運んだおねえさんと同じ演目を観たおじさんが、久しぶりに感想を語り合います。

池袋スタジオ空洞で上演されたAURYN『トゥイードル』や、おじさんが観たお芝居のお話などを今回もたくさんに・・・。


👨演劇のおじさんと

👩おねえさんです。こんばんは。

👨こんばんは。街はだいぶ初夏の感じになってきましたね。

👩そうですね、暑いです。蒸し暑いと言いますか。

👨たしかにちょっとムシムシしますけれどね。

👩はい。

👨そういえば、久しぶりにお芝居をご覧になったという噂を聞きましたけれど。

👩観ましたねぇ、久しぶりに観ました。あの、知り合いというか友人がでていたのですが。

👨ああ、なるほど。

👩あの、とにかくその子が観たかったので。でも、実際、観に行って良かったなぁという感じでした。まあ、これで舞台を観にいけるようになったかというとそうではないのですが、よかったです。面白かった。

👨うーん、完全に駄目というわけではないけれど、まだ条件はたくさんつきますよっていう感じですかね。

👩うーん、ちょっと違うかな。あの、まあ、うーん。難しいですね、言葉では。気持ちを言葉でそうですというのはなかなか難しいです。

👨うん。

👩まあ、その話はいいんですよ。

👨えーと、ちなみにその舞台は私も観に行ったのですけれど。AURYNの舞台ですよね。

👩はい、『トゥイードル』ですね。

池袋 スタジオ空洞

👨ご感想は?観にいかれて。

👩うん、なんか、やさしい話だと思いました。

👨えーと、やさしいというのは、あたたかい、warmな話だったと言うこと??

👩いや、warmというか・・。うーん。扱っている内容はこう、なんというかね、人とは、自分とは、誰かといることとか。生きること、自分が自分として生きる、でも人から見たら違ったり。その、人から見ていたって本当のところはわからないし、というか人の気持ちとか人のことってわからないけれど。

👨うん。

👩その、なんでしょうね、言葉でひとくくりにされてしまうとちょっと違うかなっていう感じがしてしまうのですよね。やさしいって、もっと広い気がするんです。別に、とってもやさしいねっていういわゆるやさしさだけではなくて、とても、なんだろうな、みんなが持っているようなところ、悩んだりとか考えたりとかなんだろって、立ち止まって考えていたこととかを、とても心に負担なく見せてくれているっていう感じですかね。

👨うんうん。

👩その、寄り添うという感じではないけれど、とても食べやすくお料理をされているなぁと思いました。

👨ああ、なるほど。

👩けっこう、いろんな人が食べやすいものになっているのではないかなぁとは思いましたね。

👨そうね、たとえば男の私がみると、唯一の男性の登場人物、

👩山崎丸光さんが演じられていましたね。

👨そうそう、彼に気持ちが寄り添う部分ってあったのね。で、なんか、とてもバランスがよい座組だなぁとはおもったのよ。

👩うん、そうですね。

👨あの、占い師を演じていた女性、えーと

👩はいはい、あの占い師の女性ね。

👨えーと、そう、キジマチカさん。彼女の演じる人物にしても、そんなにシリアスでタイトな感じではないのだけれど、不思議なその、なんていうの、噛んでの味の出方みたいなものがあって。

👩うんうん。

👨という風には思ったのね。登場人物が4人いて、ちゃんとそれぞれに違った役割を担っているのだけれど、それぞれから出てくるものって、お姉さんの言葉でのやさしいというのともしかしたらおんなじことを言ってしまっているのかもしれないけれど、なんかこう、受け入れうるみたいな気持ちというのがとてもよく伝わってきて。その上で、なんか舞台の構造を振り返ると、二つの鏡をおいてその中で二人の女性が向かい合わせで互いを観ているような印象があったのだけれど、

👩うんうん。まあ、そんな風におっしゃっていましたよね。

👨それがこう、尖って見えないというか、尖ってガチガチということではなくて、お互いに少しずつ浸潤し合って行くみたいな部分があり、周りの人たちも、その歩みに合わせて見え方も変ってきたから。それは、多分作り手の方の、人徳というのとはちょっと違うのかもしれないのだけれど、世界の見え方なのだろうなという気がしながら観てた。

👩うん。まあ、そうですね。ちなみになのですけれど、私がみた回、冒頭に占いのシーンってあるじゃないですから。

👨はい。

👩そこでめちゃめちゃ占い師の方のせりふがほにゃららんってなっていて。

👨えぇっ。うふふふふ。

👩あの、とぶって言うことはなかったけれど、明らかに・・。

👨揺らいだ?

👩なんというか、その、つっかえていて。でも、でも。

👨うん。

👩いやぁ、参りますよ。あの、専門用語のオンパレード。わからんてって思った。

👨あはは。

👩大変だぁって思って。そこだけでしたけれどね。なんか大丈夫かなぁって不安になっちゃった。うふふ。調子が悪いのかなあぁっおもってしまって。まあ、その後はね、その後は凄く安定していらっしゃたのですけれど。

👨私が観たときには彼女も他の方もすごく安定していらっしゃって.。2日目のソワレに観たのですけれどね。なんか、丁度こう、舞台の空気が馴染んだころなのかなぁとか思いながら見ていましたけれど。

👩うん。

👨やっぱり、観る回によっても違うんでしょうね。なまものだから、舞台は。

👩そうですね。

👨うん。

👩ああ、あの、でもね。私ひとつだけ。すごくバランスも良くて面白いなぁと思いながら観ていたのですけれど、いっこだけどうしても気になっているところがあって。

👨ほう。

👩あの、一番最初にね、占い師のところに戸井田しずかさん、魁ウェンズヂーさんがえんじていらっっしゃた双子の妹さんが占いに傾倒しているというか、好きだから通っているという感じなのですけれど、

👨はい。

👩あの、なんかさ、詐欺みたいなことをするというのはとうなのかなぁ、わからないですけれど。要はその、お時間となりました、じゃあ本日15000円ですって言って、そうしたら1万円札で20000円しかない、20000円でって出したらって言ったら、じゃあもう5000円出したらラッキーカラーも調べられるけれどどうみたいな。それに重ねてお紅茶もどうみたいなことを言うのですけれど。

👨ああ、うん。

👩なんかね、そこが。そこと、後半のいい人というか、まあ悪い人じゃないのだけれど最初のそれがあることで、なんか、なんかね。結局なんかいろんな人の、まあなんだろうな、人間臭さではないけれど、あとあとに占い師さんも言ってもらいたいことを言ってもらえてありがとうみたいなことを、今日はお代はいらないわみたいなことも言うのですけれど、でも、冒頭で慣れた感じでそれをやるわけですよ。そのお金のことをね。

👨ああ、はいはい。

👩慣れた感じでやるということは、これ、繰り返しているのだろうな。いつものことなのだろうなって。で、それで戸井田さんの妹さんはそれに関して全然引っかかっている感じもないし。

👨うん。

👩そうなってくると、いや、お時間でとかいうのは商売だったりもするからあるだろうけれど、紅茶まではいいんじゃないって。

👨うふふ。

👩だって、15000円で20000円しかないっていうことは、お財布の中に・・。いや、これは凄く考えすぎだと思うんですよ。考えすぎだと思うのだけれど、で、別にあってもいいと思うのだけれど、すごくひっかかっていて。

👨ああ。

👩だって、お財布に15000円ですって言われたお会計に20000円しかなくてっていって20000円を出したって言うことは、お財布の中に少なくとも5000円はないわけじゃないですか。5000円札、1000円札が5枚か1枚はないわけじゃないですか。

👨はいはい。だからはらっちゃったらお財布には3000円とか残るかもしれないけれど、でもそれだけだよね。

👩そうそう。なんかわかるんだ。そのちょっと胡散臭さ。占いの胡散臭さ。まあ、観ていけばさ占星術の占い師の方が、根っからの詐欺師には見えないのだけれど、占い師の方の冒頭のシーンがそれだから、なんか途中までそういうことなんみたいに思っちゃったりとか。なんか、なんかね、これは個人的なことなのかもしれない。あの、俳優さんもね、すごく人がいいっていうか良い方という雰囲気を持っていらっしゃる、易しい方なのだろうなという雰囲気を持っていらっしゃる方だったから。そういう演技をしていらっしゃったから。

👨うんうん。

👩なんかねぇ、どうにもこうにも。

👨気になった?

👩うん。そこだけ凄く気になったの。あとはもう、なんかね、うん、演出にしてもスタジオ空洞だからそれほど広い場所ではないわけだけれど、場所もすごく良い味方につけて、で、演出なんかも面白かったりわかりやすかったり、わかりやすい中でもちゃっと挑戦的だったりしていて。そこだけが凄く気になった。本当に気になった。

👨占い師のことについて言えば、彼女も商売だから、対して問題がなさそうなひとにはそうしてお金をぶったくるのだけれど、根が良い人だから本当に困ったときには助けようとするのだろうなくらいにしか思っていなかったけれど、私。

👩うん、でもね。だって5000円だよ。けっこうぶったくっている。

👨うん。まあ、ああいう世界ってなんかプライスレスみたいなところってあるじゃないですか。相場がよくわからないみたいなところが。

👩もちろん。もちろんそうなのだけれど、撮り方がさ。

👨で、さっきおねえさんも言っていたように、そのあたりが占い師さんの人間味かなという感じもしたんだけれどね。

👩ああ、それは確かにした。したけれど、信じている人をさ、ちょっとだましているわけじゃん。

👨うん。

👩信じている人をちょっとだますっていうのは、ちょっと心に来るなあ。やっぱ、実際あるにしたってさ。

👨いや、食べていくっていうことは結局そういうことなのよ、きっと。人間が。

👩でも、詐欺は違うでしょ。まあ、詐欺じゃないかもだけれどさ。

👨騙してはいないじゃない。騙しかけてはいるかもしれないけれど。

👩うん、だましてはいない。でもぼったくってはいる。

👨うん、ぼったくってはいるかもしれない。うふふふ。

👩ぼったくるの、えぇ。いや、胡散臭さの、なんか、なんていうのかな、そのステレオタイプというか。

👨うふふふ。

👩ステレオタイプであっているのかなぁ。

👨あっているかと。

👩胡散臭さ、占い・・・・・・みたいなことのような感じはするのよ。あと、それはもしかしたらエッセンスにもなっているかもしれないなとも思うの、正直。

👨うん。

👩それが、私が気になっただけで、なきゃいいのにと思っているわけではないんですよ。あるものとして観ているのだけれど、もやもやはする。もやもやすることを言うことはいいじゃんっていうか。

👨まあ逆に言うと、その占い師さんの人物造形があまりにもストイックなタイプに作られていると、というか神様以外は信じないみたいな人だったりすると、この話って多分成り立たないので。

👩そうですね。占い師さんも人間だっていうのが、その、すごく隣にいる人間だっていう感じ。最中に占い師さん自身も言っていたけれど、 なんていうのかな、占い師には達観していて欲しいみたいなさ、困っていたり失敗して欲しくない、占い師には失敗をして欲しくないのだろうなというのはその通りだと思うし、あって良かったのだと思うよ。でも、もやもやしたことは、もう伝えておきたい。

👨なるほど。

👩あって良かったとは思う、本当に。でも追い打ちはもう少しかわいいのにしてあげて。せめて、せめてさ、お茶は1000円ぐらい言ってくれたらさ、まあ6000円くらいだったらとおもうけれど、この子いったいいくらとられるのって。

👨あはは。

👩いくらとられちゃうの、やめてあげてっておもって。

👨それはね、おねえさんが優しすぎるのですよ。 

👩えへへへ、いやいや。

👨世間の占い師さんの生活を考えたとき、おねえさんはちょっと優しすぎる。

👩うーん、どうなのかなぁ。

👨でもほら、旦那さんにしてもやっぱり、優柔不断なところが最初はというか、そんなにストイックな人ではないところも出ていながら、最後にはちゃんと考えているみたいなところが描かれたりもしていて。それは、物語として、双子の彼女たちの関係が変っていく中で、周りの人たちの見え方も変っていくみたいな部分でもあって、作劇としてうまいと私は思ったのね。

👩うーん、なるほど。

👨なんというか、そのあたりの、まあ手綱加減ではないけれど、彼女たちそれぞれに置かれたものに対してまわりがどう変っていくかっていうのも、私たちというか観客が物語を受け入れるためにはうまく作られているなって思ったのだけれどね。

👩うーん、そうですね。いやぁもうね、これはだから個人的な気持ち。全然作品的にはあってよかったのだろうなぁって思う。

👨うふふ。

👩でも、思うのは自由。

👨まあ、結局そういうことを生で楽しめるのも演劇のよいところでね。

👩そうですね。

👨あの、多分、毎回そのさじ加減も微妙に違っているのだろうなとも思うしね。

👩はい。

👨そういうのも生の舞台のよさかなって思ったり。

👩うん。

👨まあ、そういうことを感じることができるようになってきたのは、とてもしあわせだなことだと思う。空洞でもそうだけれど、演劇はもう普通にできるようになってきた感じがするしね。

👩そうですね、いや、良いことですよ。

👨こないだも少し話したけれど、2本立ての公演なんかも多くなってきて。そうそう、前回の収録の時にその公演の片割れだけを話して、もう一方について話していないというのもあって。

👩ああ、はい。

👨ひとつはMo’xtra Produceの『グリーン・マーダー・ケース』と一緒に上演された『ビショップ・マーダー・ケース』について。こちらもヴァン・ダインの推理小説、1930年頃のものなのかなぁ、「僧正殺人事件」という元ネタがあって、それを須貝英さんが舞台かしたのだけれどね。その,『ビショップ・マーダー・ケース』の方もとても良ったのですよ。

👩へぇ。

吉祥寺シアター

👨『グリーン・マーダーケース』同様こちらも俳優がそろっていてね。あの、チタキヨという劇団があってね、そこに田中千佳子さんという女優の方がいらっしゃって、今回年嵩の母親役をされたのだけれど、その物語のなかでの存在感が抜群だったとか。『グリーン・・・『』のほうでもザンヨウコさんや小玉久仁子さんが演じる年齢設定の高い女性たちが物語を支えていたのだけれど、こちらでも田中さんがほんと良いキャスティングで。

👩あと、佐藤みゆきさんや中野亜美さんなどもご出演だったのですけれどね。さとうさんは随分昔から存じ上げているのだけれど、やっぱりここ一番での舞台の支え方には見惚れるし、中野亜美さんはまだ20台前半だとおもうのだけれど、舞台の空気をすっと解いたりも出来る俳優さんで、観客をしたたかに惹きつけてもいたし。で、彼女たちも、もちろんほかの俳優の皆様も、本当に気持ちよく個々の持ち味を生かしてお芝居をされている印象があって。あの、須貝さんって俳優に自分の色を出しながら底力を生かしながらお芝居をさせるのがとてもうまいなぁと思いながら観ていた。

👩うん。

👨なんか変な言い方かもだけれど、俳優が演じる楽しさが観る側にも伝わってくる感じがするの。

👩ああ、いいですね。

👨あと、出演者が自主的に始めたことらしいのだけれど。Twitterにスペースという機能があるじゃないですか。

👩はいはい。あります。

👨公演が始まってから、毎晩出演者たちが集ってそれをしていたのですよ。

👩ああ、はいはい。

👨で、それをとりまとめる中野亜美さんの仕切が抜群によくて。ほかの出演者が舌を巻くほど。で、そこで聴ける出演者側の話とか、作り手や演じ手再度の裏話なんかも含めてね、観る側が受け取ったお芝居の楽しさに加えてそれをする側の楽しさも伝わってきて。

👩ふんふん。

👨なんだろ、観る方からしても、その舞台での果実はもちろんのこと、それだけではない公演全体としての果実があるようにも感じて。それもすごくよかったですね。

👩ふーん。

👨きっと、俳優たちどおしでも、毎日毎日の舞台があって、その中で感じたこともあるのだろうと思うのですよ。そういうのを話す場があることで翌日の力になったりもするのかなぁと思ったりもして。

👩ふんふん。

👨ヴァン・ダインの作品には今回のになるものもあるみたいで、それもやってくれれば良いのにとかもおもった。なんか作る方は結構大変みたいですけれどね。

👩うふふふ。

👨でも、ファンは期待しているぞということをこの場を借りて申し上げておきたい。

👩うん。

👨あと、お芝居ではね、「演劇ひとりぼっちユニット あんよはじょうず」という団体の『踊らぬサロメ、きみがすき。』も面白かった。

👩ちょっとかわいらしい名前の団体ですね。

王子小劇場

👨うん、かわいらしい団体名ではあるのですが、作品は尖ってもいて。女性5人のお芝居でね、高校の演劇部の話なのですよ。真ん中には丸い枠が書かれていて、始まるとその中が部活動の空間であることが知れるのね。

👩うん。

👨舞台上手上部には50分と表示されたデジタルタイマーがあって、段々減算していくの。それは高校演劇の態にも思えて。

👩ああ、はい。

👨で、それが最初のうちは演劇部のエピソードなのだけれど、次第にその規律が崩れて、気がつけば、その中のひとりの女性から演劇部に関わった人物たちだったとか、こんな出来事があったとかいう記憶に翻って残るのよ。舞台には常にテンションもあるし、俳優たちは、実はその彼女にとっての人物の見え方とか印象をずっと演じてもいるので、

👩ふんふん。

👨俳優の役に対する足のかけ方というか、その個性を演じる強さが舞台というか物語に浮くことなく彼女の視座から見るその時間になって。また、そうして編まれた舞台のメリハリも凄いのね。

👩ふーん。

👨まあ、「演劇ひとりぼっちユニット、あんよはじょうず」というのは高畑亜美さんのひとりユニットで。

👩ああ、そうなのですか。

👨うん。彼女が毎回俳優を集めて作っているそうで。私は初見だったのだけれど、見終わって焼き付くその世界の切取られ方というかメリハリの付け方ががっつり凄くてね。ここは次も観に行きたいかなとおもったり。

👩うふふふ、良いものを見つけるのが上手ですね。

👨あと、変ったところでは、前におねえさんと倉田翠さんの公演を観に行ったことがあるじゃない。

👩はいはい。

👨彼女が乞われて東京にやってきてね、丸の内で働いている人たち30人くらいにインタビューをして、出演者を見つけたりもして一緒に作品を作ったのね。それを新国際ビルという有楽町の近くのビルの空きオフィスを使って上演をしたのですが、それも面白かった。タイトルは『今ここから、あなたのことが見える / 見えない』

👩ほう。

丸ノ内仲通り

👨働いているひとたちのいろんな感覚とか想いがいろいろに去来する舞台なのだけれど、でもね、サラリーマンをずっとしてきた私みたいな人間には、舞台に描かれたそれらのひとつずつが自らの内に外に凄くわかるの。

👩うふふふ。

👨その、自分のこととして共感できることもあるし、こんなやつがいたなとか思ったりもするのよ。

👩なるほどね。

👨それは、30代の時にはこんな風だとか、40代だとこんな人もいたなぁとか、50代だとこんな感じにそういう感じになるかあととか、そういうオフィスワークなどを為す人の生きる歩みを連想させるトリガーでもあるわけですよ。まあ、サラリーマンなんていうのは歳とともに考え方も変化していく生き物だからね。

👩うんうん、そうですね。

👨倉田さんってやっぱり、人を見る力や聴く力が凄いのだろうと思うのね。そうして受け取ったものを切り取り構成していくのを観ると、そこから浮かんで来る世界があって。それは時に自分が頷いてしまうような、あるいは自分では気がつかなかった側面だったりもして、すごく面白いのね。

👩うんうん。

👨で、それを構成としては、200人くらい仕事が出来そうな広いスペースを使って、それらが交わりあった丸の内の風景として描かれていって。もし、このスペースがオフィスとして稼働しているのであれば、そこにたくさんのサラリーマンのありようがさしたる自意識もなく埋もれているのだろうなぁなんて思ったりもした。

👩はい。

👨ひとつ面白い、面白いと行ってはけないのだろうけれど、出演者のひとりに若い頃からL‘Arc~en~Ceilが大好きな女性が出てきて、で、その本番当日がちょうど1月にファンクラブ抽選でやっと手に入れたライブのチケットを持っている日だったみたいなのですよ、ガチで。で、舞台でもそのエピソードを話して、2回公演の2度目の本番舞台が終わるやいなや、走って会場を出て行ったらしい。で、間に合ったか観客がみんな心配して、倉田さんが彼女はなんとか入れた見たいですみたいなツイートをあとからして、いいねがたくさんついたりとかね。

👩ほう。

👨でもさ、その話から、オフィスでの尻カッチン時のハラハラなんかが自分の体験と重なりあって蘇ってくるわけですよ。私もやっと取ったレアチケットの日に限ってしょうもないけれど抜けられない会議が長引いて、「はよ終われじじい!」と思ったことが何度もあったしね。心から漏れ出してしまいそうな「しょうもないことをだらだらしゃべるな、この上司」とかね。

👩はい、うふふ。

👨そういうふうに舞台上のひとつひとつのこと、ゆっくり語っていることにしてもテンションを持って表現していることにしてもその中に生々しさが残って、気がつけば観る側を巻き込む新しい演劇表現の渦中だなぁって思ったりもして。

👩うん。

👨倉田さんの力を改めて実感した。でも、こうやって、百花繚乱みたいな感じにいろんな人が公演を決断できるようになると、なんかやっとコロナ禍が始まる前のいろんな躍動感が戻ってきたのかなぁというのを感じますね。特に5月の中旬以降は。

👩そうですね。ほんとに。

👨だから前回もお話ししたけれど「20歳の国」みたいにね、まあライブの時間で配信のパートを見ることが出来ないのでアーカイブで見るのだけれど。でもね、考えるとコロナの間に配信の技術がいろんな意味で新たに進んで。それが既存の演劇公演とも組み合わさって新たな表現の広がりにするみたいなことも生まれてきたしね。

👩うんうん。

新宿眼科画廊

👨転んでもただでは起きてはいけないみたいな、文化が持つ底力というか、それはもうしんどい時代だと思うし再びコロナが拡散して欲しくは絶対ないけれど、なんかそのことで育ったものもあるのかなぁって。その「20歳の国」のもう一つの実演作品、『コーヒー』もとっても面白かったし。

👩へぇー。

👨夫婦別れになった男女がマッチングアプリで偶然カップリングされてホテルで会う約束をするのだけれど、妻はそのホテルの清掃員をしていてそこの支配人に代理で会いに行ってもらうみたいな。そこにコーヒーがうまく絡んでね。

👩うんうん。

👨話の構造が45分に見事に収められていて観ていてどんどん面白くなっていく。湯口光穂さんという劇団員の女優さんがいるのだけれど、今回は雰囲気が、大人になったというと失礼だけれど、役柄の想いの揺らぎをゆっくりと滲ませ渡してくれる落ち着いた感じの新しい演技の魅力を持った俳優さんになっていてね。ちなみに石田廸子さんやKAKUTAの高野由紀子さん、あとFUKAIPRODUCE羽衣の高橋義和さんもそれぞれに素敵な味わいをだしていてね、いいキャスティングでもあるなぁとかも思ったり。

👩いろんな舞台をやっているのだなぁ。というか。

👨うん。

👩でも、せっかく久しぶりに同じ舞台を観たのに、その感想の交換がまだちゃんとできていませんよ。よかったということ以外は。私は随分しゃべったのであれですけれど。

👨あはは。話をAURYNに戻すなら、私はあの舞台を観て作演の、彼女の人間を見る目の多重さというか重層さを感じたのね。

👩ああ、確かに。窪寺奈々瀬さんですよね、

👨うん。

👩あの、団体の最初の頃のものも観ていたりもしましたけれど、なんかこうだんだん、AURYNらしさというものが強くなっているなぁって思いましたね。

👨間違いなく作りたいとものへの確かな感覚を持っていると思うのですよ、彼女は。

👩うん、そうですね。どんどん出来てきている。

👨で、多分団体として暫く公演が出来なかったと思うのね、彼女も。

👩うん。

👨でも、その間に、人を描くということの曖昧さもなくなったような気がする。

👩うんうん。

👨私も、たくさんは観ていないと思うのだけれど、過去にも観てはいるので。

👩ふんふん。

👨前観たものの記憶と重ね合わせても、人間を描くということの研がれ方に変なバイアスやノイズがなくて。4人の登場人物がいたじゃないですか。

👩はい。

👨その4人それぞれが抱くものを偏らずちゃんとすべてもらえたから。

👩うん。

👨それが単純にそういう人だったということではないなにか、もうひとランクというか、もう一段上で人が思うこととか、人どおしのしがらみとかバイアスから抜け出す構造みたいなものが曖昧にならず描かれていたから。多分彼女は、彼女の語り口でそういうものを描けるようになってきているのだと思うのね。偉そうな言い方で申し訳ないけれど。

👩うん、そうですね。それは本当に素晴らしい。もっと観たくなるなぁって。

👨そこは極めて同感で、私もこの次を観たいと思うようになりましたけれどね。

👩はい。いやぁ、久しぶりに同じものを観ての話だったのでね、よかった。あまりね、なんだろ、感想がふわっとしているかと思われるかもしれないですけれど、でもねそういう舞台なのですよ。これが私的にはとても正しい,その、ああでこうでああでこうでっていうよりは、舞台のものっていうのは舞台で観る、本当にその空間にいるからこそ味わえるものがあるっていう。AURINは、みなさん観に行ってください。今回の公演を観にいけなかったとしても、観に行ってください。

👨少なくとも私は、この劇団名をみつけたら観に行こうリストには入りましたよね。間違いなく。

👩ああ、素敵。素敵だ。うふふふ。観に行ってほしい。そう思っております。

👨まあ、それぞれね、いろんな劇団がいろんな研がれ方をして。全部が同じようだと面白くないけれど、一つ一つの団体がね。たとえばさっきの20歳の国にしてもそうだけれど、竜史さんの物語の作り方やその中での男女のありようの描き方というのは、『コーヒー』やその前に観た『マジック』を観ていても間違いなくあるし。あと今日観てきたコンプソンズの番外公演で地蔵中毒の大谷さんが作・演出をしたのもすごく面白かった。

👩ああ、その話は次回にしましょう。それだけで、一回分くらい全部使ってしまいそうだから。

👨ああ、まあそうですね。

👩でも、そのお話を伺うのも楽しみです。

👨まあ、そんなこんなで。あと6月はね、ホエイの公演が月またぎであったり、いいへんじの2本立てもあるしね。

👩うふ。

👨ホエイのお話もまた次回にしましょう。なんかね、だんだん私のスケジュール表が昔みたいな詰まり方に戻ってきましたよ。

👩ああ、素敵じゃないですか。

👨素敵かどうかは別にして、だんだんぎゅっと色づいてきて。

👩幸せなことです、それは。

👨あと、6月は鵺的もあるからね。それおまた観たら是非にお話ができればと思います。

👩みなさんもね、是非今日名前が出た団体の舞台をご覧になってみてはいかがでしょうか。

👨またおねえさんもね、お忙しいということはお伺いしておりますが、また是非になにかをご覧になって。私も可能であれば同じものを観てお話ができればとおもっておりますので。

👩はい。

👨それでは、演劇のおじさんと

👩おねえさんでした。

👨また次回をお楽しみに。

丸ノ内仲通り


(ご参考)


・AURYN『トゥイードル』
2022年5月25日~29日@スタジオ空洞
脚本・演出:窪寺奈々瀬
出演:キジマチカ(演劇ユニット「クロ・クロ」、魁ウェンズデー
星秀美、山崎丸光

・Mo’xtra Produce 『ビショップ・マーダー・ケース』
 2022年5月13日~5月19日@吉祥寺シアター
脚本・演出: 須貝英
出演:林田航平、大塚宣幸、加藤良輔、
竹井亮介、佐藤みゆき、照井健仁、
永田紗茅、中野亜美、寺内淳志、
武市佳久、田中千佳子、大内厚雄
声の出演: 永宝千晶

・演劇ひとりぼっちユニット あんよはじょうず。
 『踊らぬサロメ、君が好き』
 2022年5月18日~22日@王子小劇場
作・演出:高畑亜実
出演:市川歩、高橋里帆、西出結、梶川七海
杉山しおん、高畑亜実

・倉田翠『今ここから、あなたのことが見える / 見えない』
2022年5月22日 @新国際ビル 2F
演出・構成:倉田翠
出演:幾山靖代、石田悠哉、小川敦子、
菊池結華、後藤正子、佐々木大輔、
佐藤駿、津保綾乃、中田かおり、

宮原朱琳、矢次純一郎 / 倉田翠


・ 20歳の国 『ホテル』 (一部再掲)  ​​
 2022年5月13日~5月24日 @新宿眼科画廊スペースO(劇場公演)
 作・演出: 石崎竜史
 ―『マジック』
 出演: 尾倉ケント、異儀田夏葉(KAKUTA)
 ―『コーヒー』
 出演: 石田迪子、高野由紀子(KAKUTA/演劇関係いすと校舎)
 高橋義和(FUKAIPRODUCE羽衣)、湯口光穂(20歳の国)―『官能小説』―(配信 ダブルキャスト)
出演:

  A 杉浦一輝(ぽこぽこクラブ) 藤木陽一(アナログスイッチ)
  B 石崎竜史(20歳の国) 古木将也(20歳の国)
―『夜』(配信 一部ダブルキャスト)
出演:尾倉ケント、異儀田夏葉(KAKUTA)、石田迪子
   高野由紀子(KAKUTA/演劇関係いすと校舎) 
   高橋義和(FUKAIPRODUCE羽衣) 湯口光穂(20歳の国) 
  A 杉浦一輝(ぽこぽこクラブ) 藤木陽一(アナログスイッチ)
  B 石崎竜史(20歳の国) 古木将也(20歳の国)

(今後のおすすめ)

・いいへんじ二本立て公演
2022年6月8日~21日@こまばアゴラ劇場
作・演出:中島梓織(いいへんじ)
―『器』
出演:松浦みる、飯尾朋花、小澤南穂子(以上、いいへんじ)、
竹内蓮(劇団スポーツ)、波多野伶奈、藤家矢麻刀、
箕西祥樹、宮地洸成
―『薬をもらいに行く薬』
出演:飯尾朋花、小澤南穂子(以上、いいへんじ)
遠藤雄斗、小見朋生(譜面絵画)、タナカエミ
声の出演:松浦みる(いいへんじ)、野木青依


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