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2024年2月14日の乾杯

新しい乾杯。年が明けたと思ったら日の巡りの早いこと。まだまだ寒さに震えながらも、押し寄せるようにやってくる演劇や、落語や、歌舞伎たちをたっぷりに楽しみながら日々を過ごすおじさんとおねえさんの駄弁です。

👨演劇のおじさんと
👩おねえさんです。よろしくお願いします。
👩お願いします。
👨暖かくなったり寒くなったりで大変ですよね。
👩そうですね。
👨今日は割合と暖かだったのですけどね。
👩確かに。でも気をつけないと。体調を崩しやすい時期ではありますからね。
👨そうですね。でも、今日は「重いコート脱いででかけませんか」みたいはお日和でちょっとうれしかったですけれど。というか、一度家をでて、これは暖かすぎるとコートを変えに戻ってしまいましたけれどね。
👩うふふふ。このまま暖かくなってくれればよいのですけれど、そうはいかないですよね。
👨それはないですよね、多分。
👩そういえば最近小劇場芝居を観ることができて。
👨はいはい。なんかここのところ、小劇場も含めて何本か共通して見ているものもありましたよね。
👩そうですね。私は小劇場演劇については久しぶりに観たという感じなのですが。昔からちょこちょこ観てはいるのだけれど、今回はちょっと久しぶりでしたね。
👨なるほど。じゃあその話から。日は違ったのだけれど私も同じ演目を観たので、まずはその話からしましょうか。
👩そうですね、
👨「コヒツジズ」という団体で、

コヒツジズ@オフオフシアター

👩えーと、2月11日まででしたっけ。
👨そうですね。2月7日から11日まででしたね。
👩どうでした、おじさんは。
👨私は、とても好みの舞台でしたね。 けっこうギャグも多いし。
👩元々コントと演劇のこう・・。
👨狭間を漂っていらっしゃるみたいなことを標榜されてもいらっしゃって。そういう部分というのは間違いなくあってね。だけど、要所で物語を語る人がいるじゃないですか。ト書き語りみたいなことがちゃんとされているので、あれだけとんでもないものがたくさん出てきても、ちゃんとまとまって観ることができた。
👩うんうん、確かに。
👨最初のシーンが最後には顛末の巡りとして回収もされていて。終盤が最初に結びついているじゃないですか。その時に違和感を抱かないというかむしろ納得してしまったので。あぁ、ここに繋がるんだみたいなところをちゃんともらえたのでね。
👩こうなるのかぁって。
👨そうそう。あと俳優の方々も地力のある方ばかりで。
👩そうですね。
👨その要所で顛末を語る女優の方も初見だったのですけれど、彼女は円の所属なのですってね。
👩あぁ!
👨まだお若いとはおもうのですけれど、こう、きちんとお仕事をされていたなぁという感じもあって。あと、開演前の音楽に始まって音をすべて作っていた池崎さんも凄いよね。
👩本当に素晴らしかったなぁ。見やすさというか、まとめてくれていたというか、その、テンポも良いし、次から次へのいろんなものが出てくるから…なんというかなぁ、一歩間違えばばらばらになてしまうようなところを、池崎さんが生音で舞台を凝視しながら、俳優さんたちの呼吸を感じながらまとめてくれていたのだなぁと思って。凄い良かったですね。見応えがあった。
👨それこそ歌舞伎の付けを打つじゃないけれどさ、呼吸がちゃんと合った感じで音をみるってとても贅沢で大事だよね。特にああいうお芝居では。
👩うん。
👨で、その時に最適な音を常にすいっすいっっと差し入れてくれるから。
👩うふふふ。
👨だから場転のときなどもとても綺麗にシーンが返っていくよね。
👩うんうん。
👨その気持ちよさだけでもご飯を三杯いけちゃうみたいな感じがあって。まあ、彼の仕事を拝見するのって初めてではないけれど本当に久しぶりなのでね。最初に観た時の印象って相当に強くて、その後観たいとずっと思ってはいたのだけれど、なかなか観ることができなくて。
👩私は以前からみていて…だいぶ間はあいてしまったのですけれど、こう凄く鋭かった…刃物みたいだったものが、いい感じにまろやかになっている。深みが増している。懐が深くなったなぁって、もちろん昔が浅かったとかそういうことではまったくないのですけれど、良さの違いで、懐が大きくなって、でもクレバーなところは変わっていなくて。うん、こんな風においしくなるんだなぁって。
👨今おねえさんがおっしゃったとおりで、ほんと彼は舞台に関してクレバーだよね。それはほんとすごく思った。でね、加えてこの舞台は出ている人たちが、ベクトルはそれぞれに違うのだけれど、どこかそれぞれにクレバーなのですよ。
👩なんかそれぞれの、自分が呼ばれて舞台上に立つ、その自分の仕事のそれぞれに対して特化した方々なのだなぁと思う。というかそれはもちろん演出の方がそういう風にキャスティングしたのかもしれないですけれど。なんというかそれぞれがそれぞれのプロだったというか。
👨なんというか演出家の求めているものがだらだらとしていなかったように思うんだよね。ぐっとすごく高くてなおかつ俳優たちがそれに答えていったのだろうなぁとおもうのだよね。
👩そうですねぇ。なんか私のイメージの中のコヒツジズさんって柔らかいというか、今回って珍しいとおもったのですよ。
👨あぁ、そうなのですか。
👩以前にも観たことがあるのですけれど、なんかね、もっとおもしろに特化しているというか、ただただ笑うというほど単純ではないのだけれど、考えることもあるのだけれど、今回ほど、なんというのかなぁ、こういう言い方をすると言葉が違うのかもしれないけれど、メッセージ性というか、なんかね、言いたいこととか届けたいことがあったのかなぁって思います。
👨はい。
👩おもしろかった。なんだろうな、社会派風、とても食べやすくなっている。見やすくなってる。ただそれぞれが考えることができるようになっているような作品だったから。すごく好きでしたね。
👨本当に良い社会派コメディというのは、なにかを言いたいことがあったときに、それと笑いが切り分けられるわけではなく、言いたいことが笑いの笠にかかってまわっていくんだよね。なんかそんな感じがしたんだよね。
👩うん、なんか届きやすいんですよね。もちろんね、社会派と呼ばれるところもいろいろがあるけれど、ほら真面目なところもあるじゃないですか。演出としてそういうのが必要なこともあるし、でも空気がぴりっと張りすぎて、緊張しすぎて入ってこないこともある。、でも、そうではなくて、観る側が柔らかい感じで受け取れるというかそういう感じですね。
👨なんか嵌りものも多かったしね、その上で。私は鹿の群れとか大好きで。
👩あぁ、可愛らしかったし。
👨そう、可愛いに加えてちゃんと被り物集団のフォーメーションができているのよ、あの人たちというかあの鹿たちが。それがとてもきれいで、やっぱり俳優の方々の身体が効くからああいうことが出来るのだろうなぁとかおもったりしてね。
👩それがコヒツジズ節なのかもしれないけれど、いろんな移動をするのを鹿にのってやってきたとかね。とにかく私には鹿がついているみたいな。
👨そうそう
👩なんかわかるんだよな、そのなんというか。
👨その貫きがね。
👩実際はいろんな人にとっての鹿ではないのかもしれないけれど、でもそれは勝手にこちらが重ねて考えることができるし、物語上ではそんなことは些細な問題というか些細なこと、そんなことよりもというか大事なことというか、笑いとか柔らかいところはとことん柔らかくして、大事なところだけしっかりと届けばという感じが勝手に私はしてとてもよかった。
👨うん。まあ私は知らなかった団体で今回初めて観るのですけれど、行った日にもほぼ満席で、でも満席になるところにはちゃんとそれなりの理由があるのねということが今回よくわかりましたけれど。
👩ええ、そうですね。でも満席でよかった。
👨あれだったらお隣の駅前劇場でやっても埋まるのではないかと思ったけれどね。
👩うん、そんな気がしますね。次は8月?
👨8月に番外編をやるって当パンに書いてありましたけれどね。
👩いろんな人に観て欲しいなぁ、ここは。
👨まあ、番外編でどのようなことをされるのかはわからないけれど、でもその片鱗でも是非に観ていただきたいですよね。
👩ちなみになのだけれど、コヒツジズって男の演者が3人がいるのですけれど、ほんと私がお会いしたことがあるときと、結構前なのですけれど見た目が全く変わっていないように感じて。時がとまっているのかな、この方々はって思いましたね。
👨へぇ、変化がないの?
👩いや、あると思うんですよ。あるとおもうのだけれど。池崎さんは大人になられたと思うのですけれど。
👨あぁ、池崎さんはね。さっきも言った通りずいぶんまえに観たのだけれど、その時と比べても一種の風貌や風格が出ていましたね。
👩うん。でもコヒツジズの皆さんは、年齢を重ねていらっしゃることはしっかりとわかっているのだけれど、なんか変わっているように見えないというか印象が全く変わらないの。
👨いや、だからさ、男優にしても女優にしても、いい俳優さんというのは歳を取らないのですよ、ある意味。特に風貌については。
👩うん、取らない。演技というか中身については変化がめちゃめちゃあると思うけれど、見た目が変わらなくて。時が止まっているな、この方たちはって。
👨でもそんなこと言いだしたら、前回お話した玉置玲央さんなんかまったく変わっていないからね、最初に観た時と見た感じ。
👩確かに。最近は大河に出ていらっしゃるけれど、むしろ若くなっていっていらっしゃるのではないかと。
👨なんか良き男優さんは演技をすればするほど若く化けていくのではないかと思うほど玉置さんは若くていらっしゃるよね。
👩そうですね。いや、すごいわ。
👨演劇の神様というのは才能ある人にはそうやってなにかを与えるのねっていう。
👩うんうん。
👨ただ、玉置さんにしても池崎さんにしてもそうなのだけれど、昔の尖り方とは違うんだよね、あきらかに。昔観た時のような尖り方とは違って、もっとなんか、なんだろ。全体の印象とか効果とか、一瞬の思い付きではなくて作品全体を図りながらパフォーマンスをつくっているような感じがするのね。
👩うん。
👨だけど、それとは別にアグレッシブさとか若さのようなものは萎んでいないなぁとはおもうのよ。
👩そうですね。
👨だから、あれですよ、池崎さんはどう思っているか知らないけれど、私は久しぶりに彼を拝見してすごくうれしくなりましたけれどね。
👩うふふ。
👨またなんか、今後の彼をみる楽しみもできたなぁって。まあ、俳優という方たちというのはみんなどこかそういうところがあるのかもしれないけれど。
👩うん。
👨そういえば、話は変わるけれど、このあいだ二月大歌舞伎もご一緒しまして。
👩はいはい、そうですね。いやぁ、とてもよかった。

猿若祭二月大歌舞伎@歌舞伎座

👨猿若祭二月大歌舞伎ということで。勘三郎さんの十三回忌にもあたるのでね。その追善公演ということで。
👩はい。連休の真ん中ということもあって、これまでに比べてまあ人が多い。一階席はほぼ満席でしたものね。
👨食事の帰りに覗いてみたら二階席も結構詰まっていたし、三階席もしっかりと詰まっていましたからね。コロナ明けのころとはえらい違いで。
👩演目も、どれも良くて。
👨コロナでの逡巡もなくなってしかもあの演目だったら団体客の皆様もがっつりとこられるのだろうなって思った。
👩大人の休日倶楽部の団体さんがたくさんいらっしゃいましたものね。
👨ああ、いらっしゃいましたね。
👩あの、その分日頃ご覧になられない方が多いから・・、スマートフォンがねぇ。ラインが来たり音楽がなってしまったりと、その辺はざんねんでしたが・・。本当に残念でしたが。
👨うん、まあね。まあ、それはなかなかに難しいところでねぇ。
👩いやぁ、でもねぇ。
👨うーん、あの、でも、それがあっても舞台が勝っていたからね。
👩いや、それはそうだけれど、でもそのことで削れているじゃない。ほかの観客の舞台への集中とかがね。もちろん演者さんに失礼とかというのもあるけれど、そもそも、安くないお金を出して観にきているのですよ。そうしたらみんながしっかりと楽しめるために、気をつける必要が絶対にあるのよ。それをいいか、まあいいかみたいな感じでやっているような人を私は許せない。
👨うん。
👩絶対に許せない。それで舞台が負けていないじゃなくて、それは別な話で、許せないのよ。その感覚でいいかというのは許してはダメだと思うんだよね。今劇場にいる人たちの貴重な時間を、楽しみを邪魔したんだぞというのをしっかりとわかってほしいのだけれど、結局そういうことをする人たちは自分が人から奪っているのだということをわかっていないんだよね。なんか、あんまりこういうのって言えないけれど。自分が舞台に立っていたりしたからお願いをする立場だったりもするのでね。
👨でもね、それはやっぱり心がけだと思うよ。だから、それは観客の心がけと出演者に対する矜持なのだと思うんだよ。ちょっと話がそれるけれど、この間、三鷹に神田伯山先生の独演会を聴きに行ったのね。彼は媒体でもラジオでもいろんな会でもスマホや携帯の音が上演中に鳴るのは嫌だとずっと言い続けていている先生で、前座で青乃丞さんが枕で「お願いですから先生の出番では携帯を切ってください」って頭を下げたりもして。その瞬間に会場がざわっとしてみんな自分のスマホを再確認して。
👩はい。
👨先生の会の高座で携帯鳴らすとその瞬間にネタが一つ減るという都市伝説まであるみたいで、そりゃそんな迷惑をまわりにはかけられないからね。で、実際見事に鳴らずの3時間だった。
👩それが当たり前であってくれと思う。それが凄いやじゃなくて当たり前であってほしいよね。やっぱり好きだから心がけているわけじゃない、その人たちには、ありがたいというかすばらしいなのよ。それは結局、これは偏見かもしれないけど、やっぱりそういうことをする人というのは、普段あんまり観なかったり興味のない人なのかなぁって思っちゃうのよ。
👨うん。
👩だって言っているじゃない。劇場でもスタッフさんたちがプレートを掲げてさ、音がでないように電源をお切りくださいって言ってまわっているじゃない。それでも、歌舞伎座って入らないようにしてはいても電波が通ってしまうところってあるのだと思うんだよ。
👨はいはい。
👩なんかね、悲しくなってしまったよね。作品がよかったからこそ、あーあっていうとても残念な気持ちになってしまった。だから、そういう風にさせたくないから、劇場側も演者側も。お客様にそういう気持ちにさせたくないからやってきたこともあるのになんで思うんだよね。久しぶりというか、あんまりスマートフォンがなることがなかったから、よけい悲しくなったね。あぁ、混んじゃうとこうなっちゃうんだって思った。お休みの日で日頃あまり劇場に来られない人がたくさんいるとこうなってしまうんだって。私も歌舞伎はそれなりに観に行っているけれど、これまでにスマホがなるなんてことはなかったのに。
👨私も久しぶりだね、しかも数回鳴ったよね。
👩うん、一回はすごく長くなり続けていて。
👨そう、止めもしなかったよね。
👩それで係のひとが二人ぐらいだぁってしゃがんで走って行ってとめてもらったんだよね。まったくさせるな、そんなことはだよね。正直そんなに足を運ぶことはなくて、でもたまの楽しみでとか、なにかの記念日にせっかくお休みだからとかいって来ている人たちの邪魔もしているわけだから。別に犯人捜しをするわけじゃないけれど、音をならさないといつ着信が来たのかわからないとかスマートフォンの切り方がわからないとかいうのであれば、もう観ないでくれってと思うよね。まあ、そういう人でも見て欲しいというのもあるのだけれど、だったらもう音をださないように、スマートフォンを手に持っていていいから光が出ないようにして、自分だけわかる震え方にしているとかね。
👨いや、震えるのはやっぱりだめだけれどね。
👩いやまあそうなのだけれど。というか、そういう風にスマホの対処ができないのならもう来るなって思うのね。
👨でも、そういう風に怒ってしまうくらいに、今回は3本とももれなくめっちゃよかったよね。
👩うん。すごくよかった。3本ともめっちゃよかった。正直言うと、好みとかもあってさ。寝ないよ、わたしは。舞台を観ている時に寝たことはないのだけれど。過去に、若い時、10代の時に1度しか寝たことはないのだけれど、観ていて本当のところこれは好みじゃないという舞台もあるのよ、やっぱり2本とか3本とかをやっているのを観るとね。だけど今回はどれもみんな好きすぎて。よかったねぇ。すごくよかったね。
👨私、あの最後の演目、「籠釣瓶花街酔醒」は初めて観たのだけれどね。「野崎村」はもうなんども観ているしね。あと「釣女」も一度観たことがある気がする、なんか記憶があるのだけれど。
👩そうそう、あの野崎村の最後の場面でお光がね、なんだ、ざっくりいうと三角関係というか。
👨まあ、なんだろ、相思相愛プラス勘違いの女の娘ひとりなんだけれどね
👩いや、あれは勘違いではないよ。勘違いではない。勘違いっていっちゃうと話が全然かわってきてしまう。勘違いではないです。だってもう結婚する予定だったのだもの。
👨まあ、親もそのつもりでね。今夜祝言だとかいって。
👩男性のほうもそのつもりだったけど。
👨お染さんがきちゃったから。
👩奉公している場所で会って恋に落ちて野崎村に来てしまったということだから。悪いのはお前たちだって話なのよ。
👨あはは。
👩お染さんは知っていたかというと多分知らないから、多分悪いのは男なのよ。
👨うふふ。そ、そうね。
👩なんだけれど、まあまあそれでね、お光さんが最後に髪を落として尼さんになって身を引くと。なぜなら二人が一緒になれないなら命を断とうしているのがわかったから、お光さんは髪を落とすんだけれど、想いを持ったままね。で、一番最後のシーンよ。
👨はい。
👩ほんと、ラストシーンなのだけれど。お染さんは舟で、久松さんは駕籠で別れてもとへ戻りましょうと家をでていくのだけれど、それを最後にお光さんが見送るのよ。もう、無音のなかで、その時に手から数珠を落とすのだけれど、その仕草も見えるしカサっていう音も聞こえるのよ。ただただ呆然と見送るわけ。でね、そこでLineが鳴ったのよ。もうふざけるなと思った、私。Line来たけどってなった。
👨はいはい。
👩凄く良いシーン。もう歌舞伎座全体が張り詰めるような最高の演劇体験がというか空間が作られていたの。あれだけの人がいて本当に物音ひとつしない、呼吸をするにも息をひそめているのがわかるくらいの良いシーンにライン。
👨あの、数珠を落とす時にもただ落とすんじゃないんだよね、しかも。演技のなかにそれがゆっくり手から離れていく時間があるんだよね。
👩手の力が、自分で意識しているのではなく、抜けていく手から数珠がこぼれ落ちるような。
👨そうそう。そうなのよ。
👩素晴らしく良いシーンなのに、本当に腹が立ちました。
👨うんうん、そうだね。
👩ふざけるなと思ったけれど、そのあとすぐに集中しなおしましたよ。そんなのに持っていかれたらもったいないから。
👨うん。
👩でも改めて今思うと、本当に、本当にふざけるなと思いましたよ。
👨私もその音には気が付いたのだけれど、うそって思ったけれど、そのあとすぐに舞台にもどれたというのはそれだけ舞台側の力が強かったのだともおもうけれどね。
👩いや、それはもちろんそうよ。私も今こんだけ言っているけれど、その時に怒っているわけではなくて、その時には無視、ほぼ無視していたから。
👨無視できるくらいにピンと空気が張っていたからね。
👩無視したよ。無視できたし、無視したし、ちゃんと持って行ってくれたけれど、でもそれはいらないというか、もっといいものを観ることができたはずなのよ、、もっといい、もっと上の、もっとだったはずをそこでどんと邪魔したことは自覚を持てと思うのだけど、きっと自覚していないのよ、本人は。
👨そうだね。
👩たまにいるよ。自覚している人も。人間ミスはあるから。でもね、私がそれにこんなに腹を立てているかというと、一度目ではなかったの、Lineがその場で鳴ったのが。
👨あぁ。そうだっけ。私はその時しか気が付かなかったけれど。そうなの。
👩その前に確実に一度は鳴ってる。
👨そうかぁ。
👩もうね、止めろって思った。その時は音がセリフとかぶったのだけれど、もうその時に止めろって思ったよね。・・本当に、本当にいい舞台だった。
👨あははは。
👩本当に良い舞台だったからこそ損もするわとおもった。本当に腹が立つ。
👨とはいえ、改めて今回の昼の部は序盤から最後まで抜け目なくよかったよね。良さに抜けがなくずっと。
👩うん、よかった。えーと2演目はあれね。
👨能楽舞台での「釣女」。
👩そう。私、あれをやったことがあって。その、なんだろうね、レッスンというか、いろんなものを、こう芝居の訓練をしている時に。
👨それはどういう形でやったの。その世界を身体で作ったとか。
👩お能の形式でやりました。ちゃんとお着物を着てしたのだけれど.もう懐かしくてね。ほんとに若いころ。まだ演劇を始めてちょっとしたくらいにやったから、
👨へぇ。
👩これはこんなに面白い作品だったのかって思ったね,あらためて観て。自分がわかっていなかったなぁと思ってより面白かった。していたからこそ、わからなかったこととかこんなに面白くこんなに豊かなものだったのだということを。過去の私はわかっていなかったなぁって思った。
👨私さ、この舞台を観ていて、獅童さん、なにか力強いお役が付くことが多いじゃない。それがあんなにしなやかなお芝居をされる方なのだなぁって少々驚いてそれに見惚れてしまってさ、
👩いやぁ可愛いかった。可愛らしい太郎冠者でしたね。
👨あれだけたくさんのウィットを湛えられる俳優なんだって。実はそういう獅童さんって今まで観たことがなかったんだよね。
👩あぁ、そうなんですか。私にはそういうイメージがあるよ。
👨私はどちらかというとこれまで隈取がっつりでパワーで押してくるような姿を観ることが多かったから。時に笑いをとるような場面も知ってはいるのだけれど、あそこまでしなやかに演じる姿をみるのは歌舞伎を観始めてからの初体験だったので。どんな歌舞伎俳優も一色ではなくいろんな色の引き出しをお持ちなのだろうけれど、すくなくとも今回の獅童さんの色は凄く魅力的だったね。
👩うん、
👨なんというか、舞台を観重ねていくとこうやって俳優の良いところが一つずつ刻まれていくのねみたいに思えて。隈を引いていない獅童さんも素敵だねみたいな発見ができて少なくともこれまでの荒事の強さの人というイメージから随分変わった。
👩うんうん、
👨まあ、素人の勘繰りかもしれないけれど、松竹としても去年はいろいろあったから、その分力ある俳優たちの魅力をもっと引き出していこうということになっているのかもしれないしね。
👩うんうん。それにしても滅茶滅茶よかった。
👨あと最後が『籠釣瓶花街酔醒』という四幕七場、2時間ちかくの狂言で、私は観るのが初めてだったのだけれど、あれも最後の研がれ方がすごかったね。
👩いやぁ、あれも良かった。あと、あればスマートフォンが鳴らなくてよかったなと思いました。
👨うふふふ。案外そのお客さんは眠くなって帰ってしまったのかもしれないね、いうても昼の部は休憩込みとはいえ4時間をはるかに超える上演時間だから。
👩うふふふ。そもそも吉原の花街の噺だったじゃないですか。だから絵が華やかなのよね。
👨ほんと開幕して灯りが着いた瞬間に目を見開いたものね。
👩もう、うわぁってなった。
👨客席からその美術に拍手がおこったものね。
👩花魁道中もいっぱいあるし、それだけで最高だなって。花魁道中を観ることができただけでもだいぶ満足だぞって思ったけれど。
👨あの、七之助さんの花道での一瞬の微笑みの美しいこと。
👩いやぁ美しかったね。遠くからでもちゃんとわかる妖艶さ。もうあれは天性よね。傾城だねぇって思った。
👨いやぁ、いい歳したおっさんがいうのもなんだけど、あれは騙されるっておもったよね。
👩うふふふ。
👨いやぁ、そりゃね芝居のせりふにもあったけれど、花魁さんなんてものは「騙します」って看板掛けて商売しているよなものだけれど、そうであっても、あれをやられたらそりゃ男はかなわないよね、絶対に。
👩いやぁ、そうですよ。本当に。めちゃめちゃよかった。なんかもう満足感でおなかいっぱい、ニコニコで帰りましたものね、私。最高だった、本当に最高だったって。
👨いや、もうなんか、疲れていたとは思うのですよ。時間的にもあれだけ観ているし、その間に抜くところがなくてずっと集中して観ていたから。だから観終わってからはぁっていう疲れはでたのだけれど、それがまた良い疲れなのよ。
👩コヒツジズにしても歌舞伎にしても、話をする途中で途中でスマートフォンを鳴らすなって声を荒げてしまったけれど、本当に良いものを観たなって思ったんですよね。というか良いものを観たのですよ。なんか、ちょっとだけコヒツジズに戻るけど。歌舞伎はそれを出さないけれど、コヒツジズさkには、そうそうこれが小劇場の魅力だよなぁという要素が詰まっていたような気がして、やっぱり汗をかいているなって、汗かいてしているなぁという感じがね。
👨俳優たちが身体を一杯につかってやっているんだよね。
👩うん。もちろんわからないよ。どういうスタンスというかどういう場所を目指していらっしゃるのかはわからないけれど。あのなんかさ、あの舞台は大きいところではなく小劇場で観たいなぁって思った.あるじゃない。これは大きいところで観たいなぁとか。
👨まあ確かにね、あれをシアタートラムでやられてもねぇという感じはするのだけれど。スズナリくらいまでならなんとかいけるかなぁという感じはしたけれど。
👩でも多分あれは、オフオフだったからああいう演出になったのだろうなと思うんだよ。
👨うん、またあれをオフオフで観ることができたのは贅沢だともおもったし。
👩贅沢だった。だけど、ほかならほかで多分違うものになると思うんだよ、解け方が変わるんだよ、同じものを別の場所でやらないから。出来ないから。
👨まあ、おおきな舞台の上手で池崎さんが舞台上手にへたり込んで音を作る姿というのもなかなか想像しにくいからね。大きいところであればそれなりの工夫というのが当然にあるでしょうしね。
👩でも、良かったんだ。おおきなところでどうというよりは、小劇場ってなんかね、小劇場をなかなか観ることができなくなった理由っていろいろあるのだけれど、観ることができてよかったなって。こういうところが小劇場の好きな所だったなと改めて感じることができましたね。コヒツジズを観たことで。歌舞伎はもちろん歌舞伎ですごくよかったけれど。
👨まあ、場所という点ではねぇ。あの、オーストラ・マコンドーが下北沢駅前のスターダストで『三人姉妹』をやっているんですよ、アントン チェーホフのね。

マコンドープロデュース『三人姉妹』@スターダスト

会場の窓側に、住宅展示場のモデルルームのような現代風のLDKの部屋を建て込んで『三人姉妹』を演じられると、それが今の空気と撚りあわされたような肌触りというか時間の実存感が生まれるのね。
👩ふんふん。
👨大きな箱でやる三人姉妹って、自分がいったことのないどこかの話になるし、姉妹という感覚も希薄になるし、登場人物の年齢も実感として伝わってこないし、そもそも日本の女性たちが纏う年齢の感覚と差異を感じるし。20歳といわれても、日本の女性の20歳の感覚では伝わってはこない。小劇場の力にはそういうものをアジャストして観る側に寄せての実存感のようなものが間違いなくあるよね。オフオフとか、スターダストはそれよりももっと小さいのだけれど、そういう場所に宿る力ってあるのだなぁと思って。
👩なるほど。
👨それはそうと、ご一緒にということでは少し前になりますが喬太郎師匠のみたか勉強会もご一緒しまして。久しぶりにというか。
👩あぁ、はいはい。
👨三鷹ということでCafe イチフジに寄ってプリンアラモードで腹ごしらえをして。
👩うふふ。
👨今回、喬太郎師匠のご意向なのだろうと思うけれど古典がなくて、全部新作の新作縛りでしたね。

柳家喬太郎みたか勉強会@三鷹芸術文化センター

👩はい。
👨しかも新作だと、高座に自由さがあるのか枕もたっぷりしていただいて。
👩はい。よかったですよね。
👨ご本人が長いとわかっていながらなお続けるという枕は、それだけの値打ちがあるわけで。
👩ふふ。
👨だから中入り後に高座に上がった柳家喬志郎師匠なんて、時間を気にしてかなり急いで噺をきりあげようとして、落ちを「どうなることやら」で切ったという。
👩ふふふ。
👨そのあと出てきた喬太郎師匠が「どうなることやら」というオチは初めてきいたって。
👩あはは。
👨まあでも、喬太郎師匠は古典をやっている時と新作の時では表情が違うのがたまらなく良くてね。
👩うん。
👨違うのだけれど、それぞれに、どちらも楽しそうに観る側に感じられるのがいいよね。特に今回はのっているなぁという感じもあってこちらも乗せられて観ていましたけれどね。
👩うんうん、楽しかった。
👨膝がお悪くていらっしゃるから膝隠しを置いていらっしゃるのだけれど、のってくると勢いで膝隠しからつま先が出てしまうというのもおかしかった。でも、それだけ大サービスでいろんなことももらって、その一方でなにも考えなくても噺を踏み外さず観るがわに目一杯に笑える部分があるっていうのは凄いなぁと思って。
👩はいはい。
👨その枕にしても、時に大変なこともいっているのだけれど、それをわかって納得もしたうえで、最後のところで笑えるというのも喬太郎師匠の力だなぁとも思った。
まあ、そういうことで。最近はおねえさんともいろんなことをご一緒させていただいて、良き時間を過ごさせていただいているのですけれど。
👩いろんなことを楽しみ考えることができましたね、本当に。とてもよかった。
👨まあ、私は2月から3月にかけては更に足を運ぶところが多くてね。
👩はいはい。でも、そんななかでも、お勧めを聞かせていただこうかな。
👨そうですね。ひとつはね、ひなた旅行舎という団体があって、KAKURAにいらした多田さんとFUKAIPRODUCE羽衣の日高さん、そこにこふく劇場主宰の永山智行さんが加わってユニットを組まれているのですけれど、もうすぐ閉鎖になるこまばアゴラ劇場での公演が予定されていまして。タイトルは『ひなた、日本語を歌う Vol.1』だったかな。
👩なるほど。あともう一本は。
👨もう一本は東京にこにこちゃんですよ。あげあげできた団体のこの勢いがいつまで続くか、まだまだいけると私は見ていますけれどね。というか、あそこまで掴んでしまうとこの先も面白いのだろうなという予感はもあるのですけれどね。
👩うんうん。
👨たとえば東葛スポーツだって観るたびに面白くて嵌って、で、その勢いが今でも続いて観ているじゃないですか。挙句の果てには岸田の関門も突破して。東京ニコニコちゃんにもどこか同じ雰囲気を感じるので、今回も目撃にいきたいと思います。
👩はい。まあこれからの楽しみが多いですね。
👨ええ。たっぷりに。ということで、そろそろ今回は終わりにしましょうか。
👩そうですね。
👨それでは演劇のおじさんと
👩おねえさんでした。また次回をお楽しみに。

柳家喬太郎みたか勉強会@三鷹芸術文化センター星のホール

(ご参考)
・コヒツジズ『弱者の行進』
2024年2月7日~11日@OFF OFFシアター
脚本・演出:下 亜友美
出演:亜カリ友洋、厚木拓郎、河野友保(以上、コヒツジズ)、
内海詩野(演劇集団壺会)、古賀ありさ(演劇集団円)、
魁ウェンズデー、瀬川圭介、
セキュリティ木村(劇団ビタミン大使「ABC」)、
横尾下下(ポップンマッシュルームチキン野郎)、池崎浩士(立体映画館)

・猿若祭二月大歌舞伎
2024年2月2日~26日@歌舞伎座
一、 新版歌祭文 野崎村
出演 :中村鶴松、中村七之助、中村児太郎
坂東彌十郎、中村東蔵
二、 釣女
出演 :中村獅童、中村萬太郎、坂東新悟
中村芝翫
三、 籠釣瓶花街酔醒
出演:中村勘九郎、中村七之助、中村児太郎
中村橋之助、中村芝のぶ、中村鶴松
中村歌女之丞、中村梅花、中村吉之丞
大谷桂三、片岡亀蔵、尾上松緑
中村時蔵、中村歌六、片岡仁左衛門

・マコンドプロデュース『三人姉妹』  
2024年2月10日~18日@下北沢 スターダスト
脚本:アントン・チェーホフ
演出:倉本朋幸
出演: 伊藤歌歩、朝日ななみ、三宅里沙、
坂本真、櫻井竜彦(梅棒)、加茂井彩音、
小田哲也、竹森まりあ、盛島大幹、
青木真美、中野匡人

・柳家喬太郎みたか勉強会
2024年2月3日@三鷹芸術文化センター 星のホール
出演 柳家喬太郎
柳家やなぎ 柳家喬志郎

(今後のお勧め)
・ひなた旅行舎『ひなた、日本語を歌う Vol.1』
2024年2月28日~3月3日@こまばアゴラ劇場
演出:永山智行(劇団こふく劇場)
出演:日髙啓介(FUKAIPRODUCE羽衣) 多田香織
演奏・音楽:坂元陽太

・東京にこにこちゃん『ネバーエンディング・コミックス』
2024年2月28日~3月3日@駅前劇場
脚本・演出:萩田頌豊与
出演: 海上学彦(グレアムボックス)、佐藤一馬(劇団「地蔵中毒」)、
髙畑遊(ナカゴー)、立川がじら(劇団「地蔵中毒」)、辻凪子、
土本燈子、てっぺい右利き(パ萬)、四柳智惟

よろしければサポートをお願いいたします。いただいたサポートは我々の会話をより多岐に豊かにするために使用いたします。よろしくお願いいたします。