見出し画像

薄手のグラス

「とりあえず、ビール」というのが居酒屋などでの常套句だ。そのビール、「生中」が定番だろうが、わたしは、瓶ビールを注文する。「生中」のジョッキグラスが嫌いなのだ。

よく冷やした薄手のグラスを少し傾けて、瓶からビールを注ぐ。小さいのがいい。一口で半分ほど、二口で飲み干す。これがいい。

「生」と「瓶」でビールそのものの違いはあるが、わたしは、グラスのちがいで味が決まると信じている。ジョッキよりグラスの方が旨い。

焼酎やウイスキーも同じだ。厚手の陶器やグラスに、お湯割りやハイボールが出てくると、申し訳ないけれど、薄手の小さいグラスに替えてもらう。面倒な客だとは思うのだけれど、好みなのだ。

厚くて重いコップ。薄くて軽いコップ。このふたつに市販のペットボトルのお茶を注いで味を比べるという実験をした。中央大学の有賀教授によれば、厚くて重いコップは「甘い」と感じ、薄くて軽いコップは「苦い」と、味の感じ方に違いが出た。グラスの厚みが影響を与えるのだという。

こういう研究成果を耳にすると、自分の舌や味の感じ方もまんざらじゃない、と思ってしまう。ふだんは、家人からも味覚障害じゃないのと揶揄されているが、そうじゃない。この心強い研究結果をもとに、「器論」をふっかけてみようかと思ったが、まあ、勝ち目がないのでやめておく。

休日の夕涼み。薄手のグラスを冷やしておこう。