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ロバは悲しげに鳴く

秋葉原の電気街から御茶ノ水方面に行ったところに湯島聖堂がある。朝6時過ぎ、散歩で昌平橋からお堀に沿った相生坂を上り始めたら、向こうから大きな四つ足の動物が湯島聖堂に入って行った。犬にしては大きすぎる。長い顔、長い立った耳、茶色のたてがみ、大きな尻。ロバだった。

東京のど真ん中に「ロバ?」

連れのオジサンが引っ張って行ってしまった。

中国ではよく見かけた。北の東北地方の田舎町ではロバが荷を引いて歩いている。道端に何頭もつながれているところもあった。
「ヒーホー、ヒーホー(と聞こえた)」
苦力の仕事に嘆いているのか、恋の相手を呼んでいるのか。それにしても悲しげな鳴き声だ。

トウモロコシの芯を山のように積んで畑から工場にやってくる。芯を加熱して加水分解し、フルフラールという化学物質をつくっている工場だ。あたりからロバ荷が際限なくやってきて、ピラミッドのように積まれた芯は2万トンから3万トンもあるという。

荷主が休憩している間、ロバは「芯」を食べている。実は残っていないのに。そのロバと記念写真を撮った。しばらくして、社内に「芯を運んできた農民」として広まった。

ロバの「皮」は「阿膠(あきょう)」の原料だという。「阿膠」というのは中国に古くから伝わる漢方薬で血流や睡眠の質を改善し、老化を抑制する効果があるとされる。世界にロバは5000万頭しかいないらしい。その1割が中国で「皮」として消費されるという。

荷運びのあとは薬か。「ヒーホー」は悲しいよなあ。外神田の「ヒーホー」の行く末は?と案じても、力添えはできない。