東京の街路樹
東京都の「木」はイチョウ。神宮外苑、東京駅丸の内の皇居につづく広場、東京大学構内などイチョウ並木が秋になると地面まで黄色一色になって見事な眺めになる。
ギンナン(果実)の中にあるタネ、炒ってかたい殻を破り茶色の薄皮をむけば香ばしい黄緑の胚乳。問題は果肉。どうしてこんなに臭いのか。蒸れた足のような臭い(酪酸)と腐った油のような臭い(エナント酸)と表現するらしい。
秋、イチョウ並木を歩くと、道にギンナンが落ちている。雌雄別株だから、この木は雌株。一面ギンナンに覆われる。足を踏み入れる場所を探しながら、軽やかにステップを踏んで歩かなければいけない。が、ときどき失敗する。誰かが踏んづけてぺしゃんこの果実の残渣や丸い果実までが靴底の凹部にへばりつき、臭いは家までついてくる。
冬、皇居のお堀端を通った。昨日までアスファルトの色が変わるほどギンナンの果肉がこびりついていたのが、今朝はウソのようにきれいになっていた。
見上げれば、ギンナンがまだ二つ、三つ枝にしがみついて残っている。風が吹けば揺れて落ちて、踏まれる。
ギンナンの掃除が終われば寒い中の枝と刈り込み。新緑の樹形がスマートにリフレッシュ。街路樹の楽しみは裏方仕事の賜物だ。