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高いところは落ち着かない

6階建て、自社ビルである。畳2畳分くらいの大きさの窓が南北面に6つずつあるくらいの幅、ほぼ正方形のフロアだ。築50年ほど、先の地震のあと補強工事をした。その3階に今いる。

新しく立て直した高層ビルに入っている会社が多い。皇居を下の方に眺める、戦前なら不遜なところにロビーや応接があって通される。東京湾から千葉のコンビナートを一望できる33階の社員食堂でお昼をごちそうになったこともある。食事どころじゃなかった。

怖いのだ。お尻がむずむずしてくる。とても仕事どころじゃない。

ふだんでも窓際に近づきたくない。揺れにあったら、倒れないはずと言われていても、這いつくばって壁にそって後ずさりしてしまうにちがいない。逃げることもできずに。

名古屋支店は駅前の新しいビルの17階、とんでもない。近づきたくない。九州支店も引っ越して眺めがよくなったと案内に書いてあった。大阪支店は来年引っ越してこれも高層ビルだという。今の4階のままでいいのに。

ここ本社ビルには他の会社は入っていない。だからというわけじゃないが、玄関入り口はノーチェック。フロアの入室タッチキーは、指を触れたくないと外してしまった。クーラーは効かないし、少し前にトイレが流れず逆流した。配管が細いのだ。

近所が再開発で、30階建てのビルがもうすぐ完成する。やめてくれよな、引っ越すのは。リクルート対策でそんな話がでているようだ。

2階から5階まで100人ほど。ゆったりではないが、ほどほどのスペースは確保できている。昼食に行くのにエレベータは必要ないし、先の大地震のときは大阪にいたから経験はないけれど、揺れてもすぐ飛び出せるだろう。

もう少しだから、このまま、ここでいい。引っ越すなら、わたしが辞めてからにしてくれ。