見出し画像

遠きにありて思ふもの

好きな子と手をつなげる、そんな妄想で頭がいっぱいになる大事な学校行事がフォークダンスだった。講談師の神田茜さんがエッセイ「オクラホマミキサー」(日経新聞)を描いてます。

思い出したのは、バレーボール部だった彼女の手。はじめてつないだその右手は、マシュマロソフトじゃなかった。そりゃそうだよね、毎日ボールで指先をきたえているもの。

「オクラホマミキサー」の軽快なリズムが耳によみがえった。

グラウンドいっぱいに広がった大きな輪。3クラス120人だから男女60人ずつ。ほんの短い時間で相手がつぎつぎにかわる。1回の練習で何人だったろう。最初の位置で彼女に当たるかどうかは、ほぼ予測できた。そう、1/60の確率じゃあ回ってこないこともあった。「もう一回!」という先生のかけ声を期待したことを覚えている。

YouTubeを神田さんは見たという。同窓会っぽい宴会場で、ビールや料理がならんだテーブルのまわりを、おじさん、おばさんが「オクラホマミキサー」を楽しそうに踊っている。試しに覗いてみた。

こりゃあだめだ。見るんじゃなかった。

甘酸っぱさも、恥じらいも何もない。そっと指先だけを合わせて、ほんの短い時間をその一点に集中させ、心ときめいた「オクラホマミキサー」はそこにはない。

この宴会場の「オクラホマミキサー」が頭から消えてくれることを願いつつ、次の同窓会の便りが待ち遠しい。。