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眠っている「からすみ」

「からすみ」が冷蔵庫で眠ったままになっている。日本酒を少しまぶしてしばらく置けば、薄皮をきれいにはがせる。斜め薄切りにしてそのまま、少しあぶってもよい。純米酒の常温か、ぬる燗に添える。長崎から帰ってそのつもりだった。

大腸内視鏡検査でポリープが見つかり切除した。その前に賞味しておけばよかった。術後の経過が思わしくなく、酒断ちが3週間目に入った。からすみは眠ったままだ。

コロナ禍で「飲みすぎ」が増えているという。アルコール性肝疾患による死者がコロナ前より1割多い、ストレスなどによる長期間の多量飲酒が原因らしい。

厚労省が「飲みすぎ」低減を目指して適切な飲酒量のガイドラインを策定中だ。参考値は米国の「節度ある飲酒量」、ビールにして男性は1日大瓶1本が適量、2本は多量飲酒だという。

知り合いの営業マンが退社した。単身赴任の在宅勤務がつづき、酒好きが高じて歯止めがなくなっていたらしい。運悪くコロナに感染して高熱、ひどりで動くこともできず、床に突っ伏したまま数日が過ぎた。幸い一命はとりとめたものの、後遺症が残った。

この際だから、このまま酒断ちしろとささやく声が聞こえる。

3週間も飲まない日が続くことは今までなかった。食事の時間が短くなるし、後片付けもきちんとできるから家人の機嫌がいい。不思議と「飲みたい」と切に思うこともない。思い起こせば、タバコを止めた時もこんな感じだった。吸いたいと思わない、それが今まで続いている。

「節度ある飲酒」?出来るのなら今までにやっている。飲むか飲まないか、どっちかだろう。「切に」飲みたいと思うまでこのままいってみるかなあ。眠っている「からすみ」が気になるけれど。