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開かずの金庫を開けて知った母の思い

処分するつもりの田舎の家に残ったのが「開かずの金庫」。鍵はないしダイヤル番号もわからない。記憶にあるかぎり、何も入ってなかったはずなのだが、開けずに廃棄するのも気がひける。「破壊開錠」を依頼した。

見積りをとると16000円に出張費5000円、それに現場追加実費だという。開けずにそのまま廃棄して、後をひく思いをするのはイヤだった。

ドリルでダイヤル錠のまん中に穴をあけて破壊、同じように鍵穴もドリルで穴をあける。「ちょっとてこずった」らしいが、ほんの20分で扉が開いた。

何もないどころか、小さな空間に封筒がいくつか入っていた。ひとつひとつ取り出してみた。

腕時計がふたつと真珠のネックレスやアクセサリー。あとは、保険証や年金手帳、住所録、記念切手やテレホンカードなどだった。

腕時計、父が早くに亡くなったので、母はそれを形見かわりに持っていたのだろう。仏壇にしまってあったのかもしれない。施設にお世話になる前、「あんたは誰?」とわたしの顔をみて言うほどの痴ほう症レベルだった。それでも父の形見と自分の持ち物をひとりで整理して家を出た。ひょっとして金庫の鍵は身に着けていたのかもしれません。

金庫を開けて良かった。

母の行動や思い、今になってその一部分だけでも知ることができました。