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若手研究者インタビュー 池田行徳さん

私は、日本癌学会学術総会の若手がん研究者支援プロジェクトのお手伝いをしています。今、日本では研究を志す若者が減っています。時代を担う若手研究者がいなければ、未来を切り拓くことはできません。

若手のがん研究者をささえるために、クラウドファンディングを行っていて、目標金額はを達成しました!ご協力いただきありがとうございました。
https://readyfor.jp/projects/jca83-young_researcher/announcements/329192

「実際には若手研究者ってどんな研究をしているの?」ということは、なかなかイメージしにくいですよね。そこで、今回は昨年度、若手研究者ポスター賞を受賞された池田行徳さんにお話を伺いました。

がんの予防や治療に役立つことを目指して、がん細胞クラスターと向きあう

ー受賞当時の池田さんの研究について教えていただけますか?
 
一言でいえば、試験管の中で、がん細胞の塊であるクラスターをつくっていました。これまで、血管内を移動するクラスターの発生を試験管内で同じように起こさせることはできていませんでした。
がんは、ほかの臓器に転移します。がん細胞が血管を通ってほかの臓器に移動し、そこで新たに増殖をはじめるのです。
血管の中を移動する時、1つのがん細胞と、いくつかのがん細胞がかたまってクラスターを作っている場合があります。1つのがん細胞のときよりも、クラスターをつくっている時の方が100倍近く転移しやすいという報告もあります。
 これまでは血管内を移動するがん細胞クラスターは、がん化させたマウスや実際のがん患者さんから採取するしかありませんでした。しかしながら、生体内でできたクラスターは、非常に多様で複雑です。がん細胞だけではなく、ほかの細胞ともかたまっていますし、サイズもバラバラです。そのため、「どのようなクラスターが転移しやすいのか」などの実験が困難です。
 試験管内で人工的にクラスターをつくることができれば、実験をすることができるようになります。「同じ細胞の種類でできた同じサイズのクラスター」を用いて、環境状態を変えて細胞への接着のしやすさを研究するといったことが可能になるのです。
従来の複雑なものを複雑なまま研究するのは難しいですし、時間も手間もかかります。シンプルなものを作って、実験を重ねていけば複雑なことを理解する一助になるのではないかと考えています。


ー単にがん細胞をいくつか入れれば血管内を移動するようなクラスターになるわけではないですから、新たな角度からの実験が可能になったというのは素晴らしいことですね。池田さんががん研究に進むことになったのはなぜでしょう?
 
修士課程で配属された研究室で、指導教官である松永行子先生にがん研究を提案されたのが直接的なきっかけで、金沢大学の大島正伸先生との共同研究という形でスタートしました。ただ、肉親ががんで亡くなっていたというのも大きかったです。そのこともあって、研究を社会実装したいという気持ちが強いです。がんを早く見つける、効果的に治療するといったことにも貢献していきたいと思っています。
 
ー受賞時は大学にいらして、現在は民間企業にお勤めです。今後の研究について教えてください。

 修士課程から5年間、がん細胞の形態について研究していました。バイオエンジニアリングの研究室で顕微鏡画像を見て、がん細胞の集合体の形態を解析するということをし続けていたのですが、分子のレベルからがん細胞の研究をしてみたいと思うようになりました。
クラスターを作るがん細胞は多様なのですが、一つ一つのがん細胞の個性を分子レベルで解明することにも挑戦したいと考えています。

ありがとうございました!

池田行徳さん
受賞時:東京大学生産技術研究所 日本学術振興会特別研究員
現所属:(株)東芝 研究開発センター 研究員
ポスター賞研究発表タイトル「In vitro がん血管内浸潤可視化評価系の構築」






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