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日本で使用される漢字の話 -常用漢字と当用漢字-

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左:書道家タケウチ 右上:書道家板谷栄司with鯖大寺鯖次朗 右下:ジャズギタリストタナカ


漢字の総数 ~日本で使われる漢字の数~


漢字の総数は5万とも6万とも言われます。Unicodeに登録されている略字などを含めると10万字を超えるのだとか。

そんな膨大な数の漢字が存在するわけですが、実は私たち日本人が日常的に使用しているのはその10%にも満たないほどの漢字。

膨大な漢字を使わずに切り捨ててしまっている、
少数精鋭の選り抜かれた漢字を使って合理的に暮らしている、
どちらの言い方もできます。


この話のYouTube版はこちら↓↓


2024年現在、日本で使われる一般的な漢字は2,999字

■常用漢字
小学校(1,026字)と中学校(1,110字)で習う2,136字
■人名用漢字
常用漢字のほかに命名に使える漢字(836字)

常用漢字+人名用漢字の2,999文字。
これが、何万個もある漢字のうち、現代日本の日常一般で基本としている漢字たちです。
ちなみに、現在子どもの命名に使える漢字も、この2,999字です。

しかし私たちは、日常生活の中でも見知らぬ漢字、所謂習っていない漢字に出くわすことは多々あるものです。


繁体字/簡体字/日本の漢字

所謂習っていない漢字は、常用外の漢字か、あるいは中国等の簡体字や台湾等の繁体字です。
これらの漢字を分類しようと思うと、それぞれ被っていたりするのでとてもややこしいのですが、ざっくりと分ければ下の図のようになります。

日本目線の漢字分類

■繁体字(はんたいじ)(日本では「旧字体」とも呼ばれる)
従来使われてきた漢字の字体。
主に台湾・香港・マカオで使われる。

簡体字(かんたいじ)
繁体字を簡略化した字体。
主に中国・シンガポール・マレーシアで使われる。
1950年代の文字改革より制定された比較的新しい文字。
※繁体字や日本の漢字から見ると略字・異体字。現代中国では正式な漢字。

日本の漢字(「新字体」とも呼ばれる)
1946年、当用漢字制定以後、現在まで日本で使用されている漢字の字体。
画数的には繁体字と簡体字の中間くらいのものが多い。
※繁体字から見ると略字・異体字。現代日本では正式な漢字。

※異体字とは、”正”とする漢字と同じ意味だが字体の異なる漢字。「国=國=圀」
※それぞれの地域において、同じ漢字を使っていることもあれば、独自に使われる漢字もある。

(例)

簡体字は駅名などでよく見かけます。山手線の駅名で、比べてみるとこんな感じ↓↓

色付き部分が日本の漢字と異なるもの
同じ漢字も結構多い


当用漢字の制定 ー当用漢字とはー


さて、ここからは戦後の日本の漢字の変遷。

戦前までは、漢字の使用に制限はなく、複雑な字体の漢字が使われる一方で略字や俗字もごちゃまぜに使われていました。加えて、江戸時代までは草書体(くずし字)が基本だったため、字体も書体も広く緩く、という感じでした。(加えて、平仮名は1音につき複数あり、かなり字数が多かった)

しかし、統一的でないと教育や一般生活に不都合がある…!ということで、それまでの漢字の使用に「制限」をかけるために作られたのが、1946年の「当用漢字」1850字です。

從來、わが國において用いられる漢字は、その数がはなはだ多く、その用いかたも複雜であるために、敎育上または社会生活上、多くの不便があつた。これを制限することは、國民の生活能率󠄁をあげ、文化水準を高める上に、資󠄁するところが少くない。

内閣告示第三十三号 - 文化庁

合理化により便利になった一方で、「制限」によって、従来漢字で書いていた一部の言葉に漢字が使えなくなり(「埠」頭など)、逆に不都合も生じました。そのため、その後読み方等含め何度か改定され、「制限」的な意味合いも徐々に緩和されていきました。

新字体が生まれる


当用漢字制定の際、複雑な字体を簡略化して生まれたのが「新字体」です。「國」→「国」、「學」→「学」など。

しかし「新字体」が生まれたと言っても、このとき新しく改めて作られたというわけではなく、昔からあった略字や俗字が用いられるものが多かったようです。

「当用」漢字の意味


ところで。
1946年に掲げられた「当用漢字」ですが、1981年以降は「常用漢字」と呼ばれます。どちらも、教育的・社会一般的に使用するために国が定めたものであることには変わりないのに、呼称が異なるのはなぜ・・・?

実は、戦後間もない1946年、実は漢字自体の使用をやめさせるということも検討されていました。そのため、「当用」=「当面用いる」、つまり、「当用漢字」は「さしあたって使う漢字」という意味合いの名称なのです。
(参考:ことば研究館

敗戦後、アメリカ主導で国語改革が行われた際、「日本語は漢字が多いから識字率が上がりづらく問題だ!」という意見があったのですが、実際に調査してみると日本人の漢字を含めた識字率は非常に高いという結果になったのだとか。

そのため、日本において漢字が使われなくなるということはなく、「当用漢字」は実質的には「常用」されていました。

幕末~明治維新の頃の激動の時代には、「ひらがなだけにしよう(漢字御廃止之議 1866年)」とか「ローマ字の方が良いのでは!(ローマ字国字論 1885年頃)」なんて意見があったのは知っているけれど、戦後でも漢字使用の是非がまだ問われていたとは・・・!


当用漢字から常用漢字へ


そしてその後。

1981年、「当用漢字」1850字に95字を追加した、「常用漢字」1945字を定めました。同時に、それまでの「当用漢字」は廃止。晴れて、「当面用いる当用漢字」から「常に用いる常用漢字」となりました。

常用漢字は、
・社会一般において、現代の国語を書き表す際の漢字の目安
・専門分野や個々人の表記を制限するものではない
(でも、社会一般へ提示する際は、常用漢字の使用が望ましい)
・過去の文書等の漢字の使用を否定するものではない
といった感じで、あくまで「制限」ではなく「目安」であると、前書きに明記されています。

▼文化庁の正式資料
当用漢字表
常用漢字表

▼1981年に追加された漢字(95字)
猿 凹 渦 靴 稼 拐 涯 垣 殻 潟 喝 褐 缶 頑 挟 矯 襟 隅 渓 蛍 嫌 洪 溝 昆 崎 皿 桟 傘 肢 遮 蛇 酌 汁 塾 尚 宵 縄 壌 唇 甚 据 杉 斉 逝 仙 栓 挿 曹 槽 藻 駄 濯 棚 挑 眺 釣 塚 漬 亭 偵 泥 搭 棟 洞 凸 屯 把 覇 漠 肌 鉢 披 扉 猫 頻 瓶 雰 塀 泡 俸 褒 朴 僕 堀 磨 抹 岬 妄 厄 癒 悠 羅 竜 戻 枠
「燈」は「灯」に変更

▼2010年に追加された漢字(196字)
挨 曖 宛 嵐 畏 萎 椅 彙 茨 咽 淫 唄 鬱 怨 媛 艶 旺 岡 臆 俺 苛 牙 瓦 楷 潰 諧 崖 蓋 骸 柿 顎 葛 釜 鎌 韓 玩 伎 亀 毀 畿 臼 嗅 巾 僅 錦 惧 串 窟 熊 詣 憬 稽 隙 桁 拳 鍵 舷 股 虎 錮 勾 梗 喉 乞 傲 駒 頃 痕 沙 挫 采 塞 埼 柵 刹 拶 斬 恣 摯 餌 鹿 𠮟 嫉 腫 呪 袖 羞 蹴 憧 拭 尻 芯 腎 須 裾 凄 醒 脊 戚 煎 羨 腺 詮 箋 膳 狙 遡 曽爽 痩 踪 捉 遜 汰 唾 堆 戴 誰 旦 綻 緻 酎 貼 嘲 捗 椎 爪 鶴 諦 溺 塡 妬 賭 藤 瞳 栃 頓 貪 丼 那 奈 梨 謎 鍋 匂 虹 捻 罵 剝 箸 氾 汎 阪 斑 眉 膝 肘 訃 阜 蔽 餅 璧 蔑 哺 蜂 貌 頰 睦 勃 昧 枕 蜜 冥 麺 冶 弥 闇 喩 湧 妖 瘍 沃 拉 辣 藍 璃 慄 侶 瞭 瑠 呂 賂 弄 籠 麓 脇
※勺 錘 銑 脹 匁 は削除。人名用漢字に含むので命名での使用は可能

(Wikipedia:常用漢字

ちなみに、「当用漢字」も「常用漢字」も読み方の指定や変更等の改定が何度かされていますが、この記事では割愛しています。

常用漢字は現代日本において、”正しい”漢字ですが、”正しさ”の意味は国や時代や制度によって変わっていきますね。




人名用漢字の変遷も扱いたかったのですが、長くなったので次回に続きます!!



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