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筆順って昔と変わった?”正しい”筆順は存在しない?!

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筆順、書き順。
以前、書写の二度書き」が多くの人にとってタブーであることを取り上げました。それと同様に筆順も誤ってはならない!と多くの人が思っているのではないでしょうか。

その人が正しい筆順で書いているかどうかは別として。筆者は文字の講師をしていますが、現に「ワタシ、書き順めちゃくちゃなんですよね…」と懺悔気味に告白されたことが多々あります。

早速ですが、問題!
皆さんは、次の漢字の赤い部分は第何画目に書いていますか?


問1.「書」

問2.「恵」

問3.「必」

問4.「馬」

問5.「上」

問6.「博」


答え


いかがでしたでしょうか。
小学校の頃正しく覚えたはずなのになぜと思ったものや、意外なものもあったのでは?

今回挙げたものは、筆順を間違えやすい漢字だから気を付けましょうということではありません。

ちなみに、唐突ですが、筆者は愛知県出身の30代後半、名前を「恵美子」と言います。以前筆順について気になって調べていたとき、上の6つのうち3つが違っていたことに驚愕したものです。なんと自分の名前の「恵」の筆順まで間違っていたなんて!!!!しかも曲がりなりにも文字を教える立場にあるという者が・・・・・。

間違って覚えていたのは、「書」「恵」「博」。「書」の縦画は4画目、「恵」の縦画も4画目でしょ・・・!なんなら「博」についてはこの記事を書いているときに判明しましたよ。上にある点を私は生まれてこの方最後に堂々と打っているよ、これ皆途中で打っているの・・・?

一応、過去国語は得意科目だったはず。漢字だってそれなりに好きだったはず。それに、こと自分の名前の文字くらい筆順を確と確かめたはず。

なんでなんでなんで???

ネット検索では「恵 筆順 変わった」などと調べてみると他の人も同様に気になっているようで、様々な文字で「確かに習った筆順と正しいものが違う!」という状況が起きていました。


”正しい”筆順


一体どういうことなのか。

話は、昭和32年(1957年)にさかのぼります。筆順指導の手引きなるものが文部科学省から刊行されました。”正しい”筆順というのはこの手引きを元とするもの。ネットの検索語「筆順 変わった」は、この意味では正しくなく、文部科学省から提示されている手引きは昭和32年から一度も変更されていません。”正しい”筆順は一貫してここにあるのです。

ではなぜ、「正しく覚えたはずなのに!」とか「筆順 変わった」などといったことが起こるのでしょうか。

それは、この筆順指導の手引きが強制力を持たず、全国に浸透、定着していなかった、ということです。そもそも公立小学校の教科書は必ずしも全国統一されているわけではなく、地方ごとの教科書作成会社が国が定めた学習指導要領に則って作っています。もちろん作成された教科書は国の審査を受けることになりますが、おそらく筆順についてはそこまで重視されていなかったということでしょう。

そのくらい曖昧なものなのに、なんでテストに出るんだ・・・!

元々、文字の筆順はある程度の法則性はあるものの、人によって様々違いがあるもの。下の「必」なんて、こんなに書き方があるのです。(小難しい漢字の並びは、1500年とか前の有名な中国の書家の名前です)

(出典:Wikipedia「筆順」※筆順の番号はこちらで書き加えました)

ちなみに上から2番目が”正しい”とされる筆順ですが、しかし日本でも別の年代・地域では下から2番目が”正しい”と習っています。

「必」の字は心を切るな!!
「必」の字は心にタスキをかけましょう。


言い方それぞれ。書き順それぞれ。あっちも正しい、こっちも正しい。

平成に入って少し経ってから(「筆順の手引き」刊行からなんと40年ほど)、「筆順の手引き」は徐々に浸透してきて、現在では全国的にほとんど統一されている状況のようです。


筆順の重要性はいかに


ということで、”正しい”筆順なるものがいかに曖昧であるかはお分かりいただけたのではと思います。

この筆順指導の手引きのリンク先PDF資料を読んでいただければすべて書かれていることですが、筆順には色々あって、手引きに書かれていない筆順も誤りではないと明言されています。

(前略)本書に示される筆順は、学習指導上に混乱を来たさないようにとの配慮から定められたものであって、そのことは、ここに取り上げなかった筆順についても、これを誤りするものでもなく、また否定しようとするものでもない。

筆順指導の手引き」本書のねらい より抜粋

では筆順はめちゃくちゃで体系を成す必要がないかと言ったら、そうではないと思います。元々この手引きは児童たちの学習用ではなく、彼らを教える指導者側のものです。それぞれ異なる学力の多くの人数の児童に漢字を教えるには、やはり体系のあるルールが必要と言えるでしょう。

それに、文字は第一の機能として「読みやすい」ことが重要です。書作品や広告などデザイン性が必要とされる以外の場で手書き文字は「読みやすい」ということが最大にしてたった一つの文字の目指すところと言っても過言ではないかも?
筆順を大まかに守ることで、整った読みやすい字が書けるようにと考慮され筆順が決められているのです。

「読みやすい」ことと所謂「美文字」は別のことだと思いますが、実際に筆順を直したら上手く書けるようになったという声は度々聞きます。

特に日本では漢字、ひらがな、カタカナ、アルファベット、数字など様々な文字を覚えなければならないので、筆順にルールがあることは漢字学習の効率を上げ、ひいては学習全般の効率アップにもなっているでしょう。

筆者としては、筆順は学びの段階で大切、ただし”正しい”ことを振りかざしたりすることは良くないな、と思っています。

筆者の書道教室では、子どもが「筆順の手引き」の筆順をしなかったとしたら、指摘はしますが、「この方が上手に書ける」という本人の意向がある場合には直させることはしていません。
また、手軽に筆順を確認できるアプリ(無料版で十分使えます)がありますので、気になる方は一つ入れておくと便利です。


余談。書き順の体系を知っていれば、以前話題になった超絶画数の多い漢字の筆順(や構成の仕方)も皆目見当がつかないということはなく、だいたい分かるものです。

(出典:Japaaan Magazine

ちなみに、もう一つ余談。行書体(くずし字)にしたとき、「書」の縦画は一番最後に書きます。くずしたときに筆順が変わる、ということは多くの漢字でとてもたくさんあります。


筆順然り、教育現場では統一されていた方が良いことも多いと思いますが、この世界はかなり曖昧なもので出来上がっています。そのことを子どもたちに教えるタイミングがいつなのか、難しい問題だなと思ったりしています。

なんだか問題がふやけて曖昧になったところで・・・

それでは!



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