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☆#64『9つの性格』鈴木秀子

 昔、書店でよく見た本。奥付によると、1997年。
 この頃(17歳当時)、私はよく本屋に行っていたのだろうか。色々学びたくて、本を買った覚えがある。例えば『脳内革命』『ソフィーの世界』『エヴァへの道』(←エヴァンゲリオンじゃなくて、船井幸雄の本)、『EQ』『神々の指紋』など、今にして思うと、「へー、結構、向学心があったんやね」という感じである。思春期特有の突き上げるエネルギーが17歳の私を知的行動に駆り立てていたのかもしれない。そして振り返るに、その頃には「自分とは?」「意識とは?」「生きているとは?」という問題意識が社会的にも随分活発であったように思う。
 で、この『9つの性格』も書店でよくその平積みを見た記憶がある。今回初めて読んだが、これは素晴らしい本である。エニアグラムという人間学について本なのだが、こうある。

 すべての人間の本質には9つのタイプがあり、しかも各タイプの人間の数は均等である。-34

 その発祥は2000年前のアフガニスタン。後にイスラム教のスーフィズムに取り込まれ、その中で秘密の教えとされてきた。現代において、ある非常に卓抜な知性を持った人がこれを門外漢ながら看破、万人に開かれた形でこのように広めることになったという。
 テスト問題があり、最も該当点数の多いものが自分の性格タイプとなる。迷う所もあり、私は4と5で二股をかけた。しかし読み進めていくと、4に落ち着いた。
 なぜ迷ったのかと言うと、私の場合、大きな内面的変化の過渡期にあるからだと思う。自分が捨て去った癖や、新たに獲得しつつある性質などは、自己評価に微妙な揺らぎを創り出す。そういう訳で、「そうは言ってもなかなかすっきりとは当て嵌まらないよな…」と思っていたのだが、本書の中盤過ぎた頃、「それぞれのタイプは良い状態と悪い状態において、他の2つのタイプに変化する」というのがあり、一気に筋道がついた。タイプ4の場合、悪くすると2に向かい、良い場合には1に向かう、と。
 この感想文ではそれぞれのタイプが何であるかということは割愛するけれども、これが大当たりだった。まさに私はタイプ2の欠点を強く持ち、そのために大切なものを失い、しかしそのおかげで自分の欠点を焼き尽くして浄化することが出来、今ではタイプ1にほとんど固定しつつある。
 エニアグラム的には基本タイプは終生不動なのだろうが、それは悲観的でも断定的でもなく、弱点欠点を知り、それを克服することでより良い人間性に至ることが出来る、というメッセージを打ち出している。この点に、安直な性格分類を超えた何かがある。
 エニアグラムのもう一つの強みは、占星術と違って、完全に自己評価によってタイプを決定するため、「自然分娩で生まれなかったので誕生日は当てになるのか?」「出生時刻までは分からない」などのことで迷いが生じることがない。
 読めば自分を活かすことができる、これは素晴らしい教えの本である。他人のことも知りたい人は全部読むことになるだろうが、基本的に私は自分にしか興味がないので、タイプ4の所だけ読んで、すぐに読み終わってしまった。でもいつどんな人とどんな縁で、相手のことをもっと知りたいとか、知らねばまずいと思うようになるか分からない。この本は一家に一冊、必携であろう。
 何より自己成長に役立つので、こしき選書入りです。

 ところで著者の著書・訳書に『死にゆく者からの言葉』『死者と正者の仲良し時間』『死んで私が体験したこと』『在すがごとく死者は語る』などがあり、非常に気になる。
 

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