#223『かんがえる子ども』安野光雅

 絵本画家の安野さん。この本は、エッセイ集である。
 常々その絵本を、子供の心に寄り添った素晴らしいものと感じているが、この本を読んで「やっぱり」と思った。
 絵本には割と子供をこう思考誘導したいという意図が見え透いているものがあり、僕はあんまりそういうものに感心しない。まあ、映画でも小説でも、だいたい何でもそうだと思うが。心を「操作できるもの」と考えるか「ただそこにあるもの」と考えるか、これはほとんど先天的なセンスの問題だと思う。前者にとっては心というものは多分、社会生活上不可欠のメインエンジンという役割なのだと思う。後者にとっては、心というのは「自然(nature)」である。安野さんはもちろん、後者である。
 難しい本ではない。読んでふむふむ、そうだそうだ、と思い、また同時に「そうか、そういう見方もあったな」と優しく教えられる。そんな感じの、品のある、小さな良い本である。

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