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☆#50『集中力』セロン・デュモン

 プラグマティズムは一種の精神論であり、哲学であり、生き方の作法であり、また美学であり、簡単に言えば「成功したいならこうせよ。成功した人はこうしている」という考え方や習慣を説く。スピリチュアリズムは人間界の現象の背後に働く、人間には感知できない巨大な法則やエネルギーについて語る。本書はその両方に跨り、更に一次元上に押し上げているという点で、非常な良書である。引き寄せの法則の元祖なのだろうか? 系譜的にはNew Thought(新思想)なるものに属すとのこと。1862年生まれ。

 強く集中すると、あなたは宇宙の偉大な想像力とリンクされます。次に創造的エネルギーがあなたの中に流れ込み、あなたが心の中で創造したものに命を吹き込んで形にします。深い集中状態で、あなたの心は無限の空間と呼応し、宇宙の叡智を出会ってそのメッセージを受け取ります。そして宇宙のエネルギーに満たされたあなたは神聖なパワーで溢れんばかりになります。-172

 本当にこの文章が1900年前後に書かれたのか? と疑問に思えるほど、現在の精神世界に通じている。明らかに、新しい時代がここから始まったのだ。
 プラグマティズムだけではどうしても20世紀後半の人類世界を支えることは出来なかった。プラグマティズムは基本的に保守的、家父長的世界観であり、不自由の中で我慢強く堅実に理性的に生きることが必ず道を開く(はずだ!)という高貴なる精神主義を謳っていた。しかしこれは時代が進んで物質的豊かさが増していくと共に不自由が減少し、更に道徳の縛りが緩んでいく時代にあっては「古臭い、硬派な教え」として徐々に忘れ去られていったことだろう。
 現在の成功哲学やスピリチュアル系の強みは、「なぜ思いが現実を創るのか」「どのようにして思いによって現実を創るのか」という原理や方法論を明らかにしていることだが、勿論そんな教えはこれまでの人類世界にはなかった。
 この高等な教えを垂れたのは人類の教育者たる霊的存在たちであるに違いないが、彼らが本式に人間に語り掛ける潮流を作り始めたのは1900年前後のスピリチュアリズムだった。要するに#29『シルバーバーチの霊訓』を、人間が我が身で体験し把握することが出来るように、「新思想」も創始されたのだろうと私は考えている。
 本書の要点は、
①思考の集中がどのような現実も創る。
②集中力を建設的であるように鍛えよ。
 無知なため驚いたが「引き寄せの法則」という言葉も出てきた。この本が初出なのだろうか?
 ①については次のように述べている。

 失敗する人は物事の挫折を想像する習慣を持ち、そう予測し、実際に失敗を引きつけます。-24

 自分がまるっきりそういう人間だったから、分かる分かる。いつも言っていた、「どうせ、こうなるんだよな」と。そして本当にそうなって、「な。なっただろ」と。もうやめたけど。
 でもそれが自分なんだもん、仕方ないじゃないの、こんな現実なんだし、という反論を、私も持っていた。著者はこれについて非常に興味深い考えを述べている。

無意味な空想をする時にも、価値あることを考える時と同じだけの脳の力を使います。-51

 つまり「悪い考え」を持ってしまうのは、何らかの精神力の不足によるものではなく、「量的に同じだけ精神力」を、単に、プラスの方ではなく、マイナスの方に向けているだけだという。無意味な空想はてっきり自分が無気力だからするのだと思っていたよ…
 同様にこうも言っている。

 勇気を持つために必要なエネルギーは、臆病になるためのエネルギーと変わりません。-140

 確かに、そうなのかもしれない。と経験上、分かりかけている。「勇気」と言っても連想するものは人それぞれと思うけれど、例えば「そう考えるには自分を一つ厳しく奮い立たせないといけない」ような感情があったりする。
 たとえばボヤきたい時があるが、ボヤかない、みたいなことを心に戒める。最初の内はきついのだが、ボヤかない習慣がつくと、もはやそこに自制のためのエネルギーを費やす必要は実は全然なく、むしろ前より燃費が良くなっているくらいの感じがするのだ。実際、心と体が軽い。
 精神における燃費ということを最近真面目に考えるようになった。状況がどうであろうと、マイナスのことを考えていると中毒になってくる。と言っても私はそれが燃費的にどうこうと考えて実際始めた訳ではなく、単に「そんな自分は嫌だ」と思ったから自分を改めただけなのだが、著者によれば、やはり明らかに燃費というものが確かにあるらしい。そして宇宙のエネルギーは無限だが、自前のエネルギーは有限である。

あちらこちらへ心をさまよわせる人は…エネルギーを浪費する人です―33

 心をさまよわせる、というのは状況次第で自分の感情が揺れ動き、自分の感情の揺れ動きを状況のせいにして不問にするということでしょう。そして、それは具体的行動としてもちゃんと現れているぞ、と。
 見よ、おじじが言っているのと同じこと。

 目の動かし方、腕や指の動かし方から、エネルギーが意味なく浪費されているのが分かります。-37

 読みながら何度も内省し、教えを自分自身の行いと照合し、新たな道を模索するような感覚を味わった。読んでは瞑想し、また読んだ。
 コンパクトな本ながら、読んでいるだけで自然と集中力が増し、精神が研ぎ澄まされていくような体験を得ることが出来る本。こしき選書入りです。

 以下は、こしきの民向け。
 この本に書かれていることは、今の私には分かるし、出来るし、既にやっている。しかし去年の自分には分からなかったし、出来なかったし、やる気もなかったはずのこと。
 成功哲学は全てそうだが、「それにより、ほんのわずかでも成果が出る人」には有益だが、「どんな精神的努力も得体の知れない力によって破壊されてしまう人」には通用しない。
 成功哲学の師に言わせれば、「いや、そこでもっと頑張るんだ」となるのだろうが、私は人生には確実に「地下の時代」と「地上の時代」があると思う。植物は地下と地上では、やることがまるで違う。違う規則に従い、違う目的を持ち、その在り方から自由になれない。
 地下の時代にある人が「いや、本当に無理なんだ」と言う時は、本当に無理なんだ。そこには前世や先祖や親から継承した負のエネルギーが働いている。まずこれを払拭し浄化し、その後、生まれ変わるという時が来る。少なくとも私はそう辿った。
 私は地下の人のために、地上に出るための助けを、この仕事を通してしているのだろうと感じる。地上に出た後は、私の出番はもうない。この本などを読んで、多くを学んで頂けると良いと思う。

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