☆#195『癒やす心、治る力』アンドルー・ワイル

 自然治癒についての網羅的なガイドブック。と言っても表層的になぞる程度ではなく、とても深い。深いが哲学的で難解という訳ではなく、具体例や助言も沢山取り上げてくれている、親切この上ない本である。何らかの病気や体調不良を患っている人、病院の治療に限界を感じている人、人間に秘められた未知の力を学びたい人、ライフスタイルを変えたい人にはとても有益な本である。過剰に入れ込んでおらず、押しが強い訳でもない。姿勢は充分に中立的で、医学を否定し尽くす訳でもない(要するにヒーラーとしての私の姿勢とほとんど同じである)。ただ病院の医療では解決できない様々な問題に対して、解決策は実は私たちには様々にある、ということを熱心に教えてくれる。
 著者のバランス感覚は非常に優れている。物理的なことから心理的、更には霊的なことにまで踏み込んで、私たちにとって心身共に健全な生き方とは何かを丁寧に述べる。ヒーリングや瞑想、ヨガなどの経験がある人も、この本を読めば、それらの体験によって自分が何を得ているのか、何を予防し、自分をどこに向かわせているのかということが客観的に理解できることだろう。
 病気を治すことは心の持ち方を変えること。病気が治る時には心も新たに生まれ変わっているーーこれが病気という「賜物」から得られる本当の体験内容だろう。

 後は本書の内容とは関係のない話。
 この本を初めて読んだのは24歳とか25歳くらいの時のことで、その頃にはまだヒーラーではなかった。ヒーリングについても何も知らなかった。
 大学在学中からその時点までに、私の知的好奇心は、世界の神話・民俗学・宗教→アメリカ先住民の呪医→ヒーリング・スピリチュアル→自然療法・食養生と移っていったように記憶している(確か)。更にその始まりにはビートルズやヘッセがあり、私をインドに導いてくれた。だいたいその辺りで精神世界が開けてきたのだった。思えば長い旅をしてきたものである。
 この本を初めて読んだ時の私は、自然療法の実態についてはとんと無知なただの夢見るプータローだったので、全然内容を理解していなかったに違いない。このたび読み返しても印象的なエピソードを二つほど覚えているだけだった(しかもどちらも例え話だった(笑))。しかしこういう世界があるんだ、というまるっとした印象だけは私の潜在意識に沈殿して、後に私にヒーリングの道を拓いてくれたのだろうと思う。感謝すべき本である。

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