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金持ちジュリエット|#ショートショートnote杯

 キャピュレット家のジュリエットはロミオの亡骸を抱いてひとしきり泣いた後、彼女を助けてきたロレンスに哀願した。金に糸目はつけないから生き返らせたいと。
 ロレンスが首を振ると、彼女は言った。
「ロミオは生前『僕が死んだら星になって君を見守る』と言ってくれました。その願いだけでも叶えて!」
 彼は、ある提案をした。
 ロミオの脳を取り出し、彼の記憶、思考、感情のデータをコンピュータに保存し、人工衛星で打ち上げるのだ。
「それならロミオの意識はいつまでも生きていますわね」
 彼女は喜びで目を輝かせた。


 

 三年後。ジュリエットはシン・ロミオと言う男性に一目惚れをする。二人はキャピュレット家の庭園を歩く。彼女は彼の腕に手を回している。
 高くそびえるユリノキの枝の隙間から、一筋の流れ星が見えた。それは、燃えるような強い光で、地平に向かって落ちてゆく。ジュリエットはひざまづき、手を組んだ。
「シン様と永遠に一緒にいられますように……」


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