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水深800メートルのシューベルト|第12話
「なあ、僕は暴れたりしないから、その手をどけてくれないか?」
段々鬱陶しくなってきたので、僕は後ろを向き、枕元から伸びている手の主であるセペタに微笑んだ。
「そ、そうか。手は放すけど、とにかく動くなよ。今のお前には安静が必要なんだからな」
取りなすような声。
やおら上半身を起こして側面の冷えた鋼を背にもたれかかる。視界には、見覚えのある顔の群れ。いくつかは今の一瞬に唾を飲んでいた。
その中に、迷惑そうなロバートの顔。いつも眼に失意と諦念を浮かべ、それを負のエネルギーにして誰かに何かに悪態をつく顔。
僕は、今なら彼と昔話ができそうな直観に誘われ、その緑の瞳を凝視した。
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